特集・関西3空港の行方

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▶露呈した関空の脆弱性 - 台風21号災害から何を学ぶか(2018年) は こちら

第1部 自立できる空港へ - 関西国際空港、長い道のり

 仁川、釜山、上海、香港、北京…。今、関西国際空港の国際線時刻表の行き先はアジアで発展するLCCが追い風となり、ほとんどがアジア便だ。

 1994年、西日本のハブ空港を目指してオープンした関西国際空港(以下、関空)。当初は、国際線がアジア・北米・欧州など世界各地に、国内線が32都市約70往復就航していたが、今では国際線は北米・欧州などの便は廃止が相次ぎ、国内線に至っては7都市約30往復と見る影もない。路線減少の一つの原因と言われるのが、関空が抱える巨額な負債から来る高額な着陸料だ。B747-400(満席、2008年)の着陸料を例にとってみると、羽田空港が95万円、成田空港が77万円、中部空港が66万円、そして関空は83万円だ。航空需要が首都圏空港よりも少ない関空が、首都圏空港と着陸料で差をつけられないのは大きな痛手だ。では、なぜ関空は高額な着陸料の原因となっている巨額な負債に悩まされているのか。一つは空港島の埋め立て造成で多額の資金を必要としたにもかかわらず、成田空港のような公団方式ではなく株式会社方式で関空を設立した経緯が挙げられるが、それに拍車を掛けたのは「2期事業」への投資である。

●身の丈を超えていた「2期事業」
 関空の「2期事業」は「持論と討論」の章でも紹介しているように、関空の完全24時間化・発着枠の拡大を目的に土地の造成だけで9000億円もの巨費を投じて行われた。しかし、2009年度の発着回数は約10万6000回と1期のみで対応できる発着回数(約16万回)にも満たない。結果、発着枠に余裕がありながら進めた「2期事業」は関空の負債を膨れ上がらせることとなり、年200億円の利子負担は関空の経営を圧迫、それを反映し着陸料は高額なものとなった。高額な着陸料は路線の減少を招き、毎年政府から90億円の利子補給金を受け取ることで首の皮一枚繋がった経営をしている。
 さらに最近になって、完成を遅らせることで固定資産税の支払いを免れていた2期島の一部に対して地元自治体の泉佐野市が「みなし課税」の検討に入った。完成を遅らせていた2期島の一部に対して「みなし課税」が掛かると毎年約6億円もの固定資産税が発生することになる。
 これを受けてか、その後国交省は伊丹・関空との統合後に土地を有効活用できるように2011年度中に2期島の237ha分を完成させると発表した。完成すれば金利や固定資産税など、泉佐野市の課税を含めて年約60億円という現在の伊丹の黒字額(年40億円)を相殺する規模の費用負担が発生する見込みだ。
 身の丈を超えていた「2期事業」を後先見ずに進めた代償はあまりにも大きい。

●今後の課題と伊丹との経営統合・運営権売却
---アクセス改善
 「2期事業」を進めることで得たものを考えると、9000億円もの巨費は投資するものが明らかにズレていた、そう言わざるを得ないだろう。今、大阪府知事や政財界がこぞって口を揃える「アクセス改善」になぜ投資しなかったのか。1時間利用圏の人口を見ると、関空は400万人で、伊丹の1500万人・神戸の1000万人と比較すると都市部からのアクセスに劣っていることが分かる。これは関空において早急に克服されるべき課題であり、一刻も早く取り組まなければならない。
---神戸空港・伊丹空港の規制緩和
 「将来像」の章でも紹介したように、神戸空港・伊丹空港は関空低迷が原因で、数々の規制の下での運用が強いられている。神戸空港については、海上空港であるにもかかわらず深夜・早朝の運用が制限され、明確な根拠が無いにもかかわらず1日30往復便という発着枠が定められている。また、全国の地方空港では認められている国際線の就航も、神戸空港においては原則許可されていない。首都圏空港では成田空港と羽田空港の「内際分離の原則」は撤廃に向かっていることを考えても、関西でも規制緩和の流れは避けて通ることはできない。伊丹空港は関空と経営統合後の将来像が見えないため、なんとも言いがたい点はあるが、少なくとも経営統合に加わる見通しが立っていない神戸空港への規制は早急に見直されるべきであり、同時に関空は規制撤廃・緩和後に路線流出が起きないよう自立できる体質へ生まれ変わる必要がある。
---経営統合・運営権売却
 最近になって関空・伊丹を経営統合し運営権を売却することで関空の負債を返済するという案を国が提示し具体的な検討に入っている。国交章は関空・伊丹の運営権を1兆3000億円と試算し、一括・分割払いを想定。関空の利用が年1%ずつ伸び、伊丹の利用は伸びないことを前提にしているが、試算通りに進む可能性は高いとはいえない。現状の関空・伊丹の売り上げでは投資利回りを確保することは難しく、またリニア中央新幹線が開通した際の旅客の落ち込みなども考えられるからだ。その上、関空に出資している自治体や経済界の意向を反映されるかどうかは不明であるため、運営権を取得した企業が伊丹に資源集約するということも考えられ、この場合は関空のハブ化という本来の目的からは程遠いものとなるだろう。また、当然このような巨額な運営権を売却するということになれば外資の参入も視野に入れる必要があるが、国はその点についても具体的には触れていない。法案可決を急ぐあまり内容が乏しいものとならないよう今後も議論を重ねる必要があるだろう。また、売却先が現れず運営権の売却が失敗した場合も想定しておくべきである。

 ここ最近、関空は新規就航便に限って行った着陸料の減免などが功を奏しL.C.C.を中心にアジア方面の路線を増やしつつある。地元マスコミもこぞって盛況振りを報道するが、決してこのまま楽観視していてはいけない。関空は世界各地へ飛び立つことができるハブ空港を目指して設立されたのだ。現在のアジア方面への便の増加は関空が単にアジアの他のハブ空港のスポークスの単なる一空港になっていることをも意味する。今後は関西で唯一4000m滑走路を持つ強みを生かして、アジア方面だけ無く欧州方面などの長距離線の誘致も強化するべきだ。また、現在飽和状態にある首都圏空港の発着枠が今後増加することを考えると、首都圏空港への路線の鞍替えも考えられ、関空への路線定着は首都圏空港とどれだけ差別化できるかにも掛かってくる。

 関空を拠点とする格安航空会社ピーチの話題、中華航空が就航を表明した関空初の米国東海岸路線となるNY線の話題など、明るいニュースが聞こえてくる一方で、既存航空会社との住み分けやそもそもピーチが軌道に乗るかどうかも不明であり手放しには喜べない。この勢いを維持したまま関空が発展できるかどうか、全ては地元・国がどこまで本気になって関空と向き合うことができるかに掛かっている。

―自立へ向けて関西国際空港は長い道のりを歩み始めた。(2012.12.1)

第2部 食い違う思惑 - 大阪国際空港、活性化?

 2012年7月、存続か廃止か議論されてきた大阪国際空港(以下、伊丹)は国の管理から離れ、新関空会社に引き継がれた。関空開港以来、長距離便の運航規制などを受けて路線・旅客は減り続け、2011年度の旅客数は約1291万人まで落ち込んだ。今後、新関空会社が伊丹・関空を一体的に運営することで、両空港の活性化が図られることに地元からは喜びの声が上がっている。

●廃港検討から一転、利用拡大へ
 伊丹を巡っては前大阪府知事が「廃止を検討する」と発言し世間を騒がせたが、反対の声が根強く、廃港について具体的な検討に入ることはなかった。代わりに、地元関西の総意として「3空港の一元管理」という結論に至り、国は運営者が違う神戸こそ統合に加えなかったものの、関空と伊丹を経営統合させた。今後、2014年をめどに伊丹・関空の運営権を売却するべく、収益力の強化を図る。
 伊丹では長距離便運航規制の緩和・プロペラ機枠のジェット機枠への転換が大きな柱だ。長距離便運用規制の緩和は今後大手2社に伊丹回帰の動きを加速させると言ってほぼ間違いない。それに加えてプロペラ枠のジェット機枠への転換で旅客数はかなり回復するだろう。伊丹を最大限活用することが新関空会社の収益基盤の強化に繋がり、また運営権の売却に弾みをつけることができる。

●見えない将来像
 経営統合の効果で伊丹は利用拡大に向けて動き出した。しかし、その舞台裏では様々な議論が繰り広げられていた。新関空会社と大阪国際空港周辺都市対策協議会との協議である。以前から、伊丹では増便に関して慎重な意見が多く、地元住民と政財界との意見が食い違うといったことがあった。今回のプロペラ機枠のジェット機枠への転換も例外ではなく、慎重意見がある中で転換が決まった。地元との調整の必要性、これは新関空会社の運営権売却にも暗雲を漂わせかねない懸念事項として付きまとう。
 経営統合後の基本方針素案には「廃港を検討する」との文言が盛り込まれた。今後も環境対策が重荷となり、新関空会社・自治体・政財界との意見が一致しないようでは、このままの姿で存続していくことは難しいと言わざるを得ない。伊丹の将来は今後新関空会社の運営権を握る者に託されようとしている。

―将来像の見えぬまま、運営権売却に向けカウントダウンは始まった。(2013.01.03)

第3部 恐れることはない - 神戸空港、独立への道

 -将来、A380が神戸の空を飛ぶ可能性は?「国際化されればあるだろう。2500㍍滑走路でも離着陸できる」- 神戸新聞の開港5年インタビューにスカイマーク有森正和常務(当時)はこう述べた。神戸空港の利便性を高く評価し、スカイマークは神戸空港を西日本の拠点として位置づけてきた。国内線LCCの先駆けとして徐々に事業を拡大し、昨年日本の航空会社としては初めてエアバスの超大型旅客機A380の導入を決定、2014年度から長距離国際線に打って出る。また、神戸空港発着枠が限界を迎えていることから、新規参入の国内線LCCへの対抗も兼ねて2012年度には関西第2の拠点として関空路線も復活させる(2013年3月撤退)。

●開港5年を振り返る
 開港から5年で目まぐるしい変化があった。まず、第一に景気低迷である。全国的に航空需要は落ち込むことになり、神戸空港の旅客数も2007年度を境に減少を始めた。そこに追い討ちを掛けたのが日本航空の破綻、神戸からの全面撤退だ。神戸空港で年間約100万人もの旅客数を占めていた日本航空が全面撤退したことは、まさに寝耳に水であった。そして、最後に明るい兆しとしてはスカイマークによる神戸空港のハブ空港化である。日本航空が全面撤退した後、スカイマークは九州路線を相次いで開設し、今や神戸空港から18往復便を運航するまでに路線網が拡大した。また、スカイマークは神戸空港内に格納庫新設し、2012年1月から格納庫の運用を始めた。スカイマークのハブ化、また全日本空輸の機材大型化が奏功し、2010年度に約222万人まで落ち込んだ旅客数は2011年度は250万人程度まで回復する見込みとなっている。
 このように誰もが予測しなかったであろう日本航空全面撤退などがあった激動の5年間であったにもかかわらず、2011年度から再び旅客数の増加が見込まれているというのは、神戸空港の潜在的な能力の現れであり、着実に関西の玄関口として定着しつつあることを反映していると言って良いだろう。
 一方で土地売却は計画通りに進んでおらず、借換え債を発行して景気回復を待っている状況である。今年度になってユーロコプター・スカイマークの格納庫建設が決定したものの、スカイマークの格納庫は制限区域内に建設中のため土地は分譲ではなく、使用許可という形をとっている。土地売却計画については今後も引き続き企業誘致が急がれる。

●需要予測の再検証
 開港から5年が経過した今、当初の需要予測との乖離が目立つようになってきた。当初の需要予測と現状を比較し、これからの先行きについて検証する。
---東京路線
 2010年度から需要予測と実績に乖離が生じ始めており、2011年度では約80万人もの乖離が生じている。これは当初の「機材が段階的に大型化する」という予測が裏目に出ていると言えるだろう。国内線は機材が年々小型化し他頻度運航が主流になってきており、神戸空発着の羽田線の多くを運航しているスカイマークも、かつて中型機のB767を用いて8往復便まで増便したものの、現在は事業拡大に伴う羽田枠の不足から小型機のB737を用いて5往復まで減便している。全日本空輸も6月から羽田便を3往復に増便しているが、羽田空港国際線の発着枠の兼ね合いで今後も3往復が維持されるかは不透明だ。今後も羽田発着枠が不足している間は羽田便の増便・利用者増加は望めないだろう。
---那覇・札幌路線
 札幌・那覇の両路線では開港以来需要予測を上回り続けている。最盛期には那覇線は約60万人・札幌線は約70万人を記録しており、関西一円から旅客を取り込めている可能性が高い。スカイマークの沖縄・札幌線は年間を通して高搭乗率を維持しており、格安運賃もまた旅客にとっての魅力になっていると言えよう。
---地方路線
 開港当初から需要予測と実績に約110万人もの乖離が生じている。2011年度から90万人程度まで乖離は縮まったが、未だに開設すらされていない路線も存在するのが現状だ。また、福岡線は約40万人もの需要予測を立てていたにもかかわらず、実際にスカイマークが路線を開設した結果、搭乗率は約20%と低迷し路線廃止となった。福岡線に関しては日本航空が関空発着の福岡線を廃止、伊丹発着の福岡線も殆どがプロペラ機であることを考えると、新幹線の台頭で航空路線としては成り立たなくなっていると言えるだろう。需要予測には存在しない熊本線にも同じことが言え、九州新幹線の開通や熊本空港の立地条件などで航空機の優位性は薄れ、神戸発着だけでなく伊丹発着の熊本線でも苦戦を強いられており、今後熊本線には更なるテコ入れ・PRが求められる。
 そして、需要予測に存在する仙台線をスカイマークが2011年7月から開設予定、松山線は検討対象となっていることから今後も地方路線の旅客数増加は見込まれるが、約90万人の乖離は大幅に縮めることは困難であろう。
 また、宮崎・函館線に関してはスカイマーク・全日本空輸ともに開設する予定は無いが、両空港とも比較的旅客数は多い空港のため、新たに参入するソラシドエア・エアドゥが開設する可能性はある。但馬に関しては地元が神戸線開設に及び腰である点、また就航している航空会社が日本航空のみであるということから開設の見込みは皆無に近い。
需要予測と実績

主要3路線 東京路線 那覇線 札幌線

●経済効果の再検証と積極的な情報開示、収支見通しの見直しを
 「神戸空港は失敗か」の章でも説明したように、神戸空港の収支については様々な誤解が飛び交っている。神戸空港は基本収支が黒字であり、これだけでも十分立派なことではあるが、市債償還などを合わせた管理収支の赤字報道が先行してしまい、空港運営が財政を圧迫していると誤解されがちである。専門家からは企業会計方式での収支計算を求める声も上がっており、市民広報紙などで市民に様々な視点から見た収支状況を分かりやすく開示する必要が出てきていると言える。また、開港5年という新たな段階を迎えた今、神戸空港がもたらした経済効果を算出・公表し、神戸空港が神戸の発展に必要不可欠である都市装置である理由を数値も用いて説明するべきだろう。
 また、今年度から黒字を積み立てていた財政調整基金が底を尽きる見込みのため、新都市整備事業会計からの資金の借り入れを決めているが、空港施設の建設のために発行した市債の償還が今後も膨らむので、現状では黒字転換は難しい。市債償還が終わるまで今後も新都市整備会計から借り入れるのか、それとも新都市整備事業会計から資金を借り入れることなく、毎年度償還可能な額まで引き下げた長期返済計画を立て直すのか、早期に結論を出した上で収支見通しを立てるべきだ。
 土地売却計画にも同じことが言えるが、土地売却計画については航空関係の業種以外が空港島に拠点を構えることが出来るように土地の用途変更などを国と引き続き協議していくことも加えて求められる。

●今後の一元管理と規制緩和の更なる訴えを
 今後の課題であるが、やはり「規制緩和」これ一点に尽きる。関西3空港懇談会で3空港を一元管理するという案でまとまったにもかかわらず、伊丹・関空の統合が進められ、神戸空港は蚊帳の外に置かれた状況である。関空の1兆円を超える多額の負債を解消する手段として3空港の一元管理、各空港の有効活用が望まれるが、国交省は売却見通しも立たぬまま伊丹・関空の運営権売却という青写真を描いている。
 国交省が将来的に神戸を含めた一元管理に動くかどうか不透明である以上、神戸空港が目指すべき方向は伊丹・関空強いては関西3空港という枠組みからの独立だ。そのためにはやはり規制緩和は欠かせない。
 開港以来、幾度と無く要望してきた運用規制の緩和は実現することは無かった。今後は関西3空港懇談会で神戸空港の規制緩和を議題に挙げ、同懇談会を通して国交省に要望をぶつけて行くなど従来とは違った形で要望していく必要があると言える。
 神戸市・兵庫県・地元経済団体のこれからの取り組み次第で神戸空港の未来はさらに開けたものとなる事は間違いない。今後の取り組み姿勢に注目したい。(2013.05.18 追記)

第4部 今後目指すべきは - 一元管理、その後の独立採算

 2012年12月、ソラシドエア・エアドゥが相次いで神戸空港への就航を表明した。天草エアラインの撤退以来、2社運航が続いてきた神戸空港にとって大きなニュースとなった。一方で、関空を拠点とするピーチなどのLCCが好調と報道される中、格安運賃を武器に成長を続けてきたスカイマークは同月、再就航した関空路線から2013年3月をもって再撤退することを発表した。

●進む棲み分け、路線再編
 ソラシドエア・エアドゥが神戸空港への就航を表明した背景には、2013年6月に行われる伊丹空港の長距離便運航の規制緩和がある。ソラシドエア・エアドゥは共に全日空との提携関係にあり、全路線で全日空との共同運航が行われている。今回の神戸空港への就航表明の裏には、全日空が神戸路線の運航から手を引き、提携関係である両社に運航を委ね、その一方で長距離便の運航規制が緩和される伊丹空港では新千歳・那覇便を増便するという全日空の戦略が存在する。神戸空港としては2社の新規就航を手放しでは喜べない状況であると言えよう。もちろんデメリットだけではなく、九州路線が強いソラシドエア、北海道・東北路線が強いエアドゥが就航するということで両社による新規路線の開設も期待できる。実際、ソラシドエアは鹿児島線の開設も検討するとしており今後の動きが注目される。
 LCCの就航ラッシュで活気に沸く関空も例外ではない。LCCの参入によって供給過剰になった新千歳・福岡・那覇線では既に全日空・日本航空が減便・機材小型化を進めており、前述の伊丹空港の長距離便の運航規制緩和で更にこの動きが加速するものと予想される。加えてスカイマークが再撤退を決めており関空はLCC色を強め、3空港の棲み分けは着実に進んでいるといえる。
 そんな2空港を尻目に伊丹は規制緩和が進み、大手2社が長距離路線を中心に増便を進める。伊丹は大手2社、神戸は新興3社(スカイマーク・ソラシドエア・エアドゥ)、関空はLCC中心の運用となっていく様相を呈しており、今後各空港の行方に目が離せない。

●関空浮上のカギ、LCCは好調か?赤字運賃の実情
 多くのマスコミに好調と報道されるLCCであるが、エアアジアジャパンは目標搭乗率を達成できなかったとして、就航わずか4ヶ月で社長が交代する事態となっている。一方で唯一関空を拠点としているLCCピーチは好調と報道されている。LCCの実情、将来性はどうなのだろうか。
 ピーチを例に取ると、ユニットコスト(座席キロ当たりのコスト)はスカイマークの7.69円(2012年9月時点)を下回る6円を目標にしているが、現時点では8~9円程度と予想されている。スカイマークのユニットコストを元に計算しても、関空-新千歳線(約1100km)の採算ラインとなる平均客単価は満席状態で約8800円、就航半年の搭乗率が79%であることを考慮して計算すると約11000円である。高値運賃が売れ残り、セール価格を乱発している現時点では飛ばせば飛ばすほど赤字が膨らんでいる状況だと言える。もちろん、ピーチは就航後3年後をめどに黒字化を目指しているため、初年度の赤字は想定内とも言えるが、今後平均客単価の引き上げが成功しなければ、ピーチに限らずLCCの行く末は言うまでもない。
 ■参考■ ピーチ2013年1月 関空-新千歳線 運賃
【ハッピーピーチ】4790円~19990円
【ハッピーピーチ プラス】6490円~24990円
【2012年12月6日~2013年1月31日 セール運賃】3370円(金~月曜:4770円)
【2013年1月16日~3月30日 セール運賃】2970円(月・金・土・日曜:4370円)
【2013年1月8日~1月10日 セール運賃】1000円
採算グラフ

●今後目指すべき姿
 LCCターミナルを有し長距離国際線にも対応できる関空、都市部に近くビジネス需要が旺盛な伊丹、都市部に近く24時間運用が可能な神戸。3空港のそれぞれの強みを生かして効率的な運用をすることで3空港の収入を最大化することができる。そのためには、神戸も伊丹・関空の経営統合に合流する必要がある。国は現在、神戸を脇に置いたまま伊丹・関空の経営統合を進めているが、神戸と伊丹・関空で利害関係が有ってはならず、3空港の経営統合は避けては通れない。3空港の棲み分けが進んだ今こそ、3空港の一元管理が望まれる絶好の機会だと言える。もちろん、各空港が切磋琢磨して競争力を伸ばしていくために、関空の負債を解消した後は統合を解消し、伊丹・神戸の運用規制を撤廃、独立採算で運営していくことも考えるべきだ。それがまた市場原理の本来の姿である。(2013.01.03)