特集・官から民へ 神戸空港第二の離陸

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▶露呈した関空の脆弱性 - 台風21号災害から何を学ぶか(2018年) は こちら


神戸空港新ロゴ

 2018年4月1日、神戸空港の運営は神戸市から関西エアポート神戸へと受け継がれた。2017年度の旅客数・搭乗率は共に過去最高を記録する中、ベストタイミングでのバトンタッチだったと言えるだろう。これをもって長年の懸案となっていた関西3空港の一元管理が実現し、今年度再開される関西3空港懇談会では神戸空港の規制緩和が主な議題となる事が想定される。

民営化という第二の離陸を果たした神戸空港の今後の行方と空港アクセスの課題に迫った。

空港の利用拡大―悲願の規制緩和はどこまで進むか

 いま全国では、活性化を目的として空港の民営化が進められているが、それとは根本的に目的が違うのが神戸空港の民営化だ。

 当サイト内で指摘しているが、神戸空港自体の運営収支は計画を下回っているものの、全国的に見ると優等生である。神戸市としても民営化自体に抵抗があっただろうが、なぜ民営化という道を選ばなければならなかったのか?そこには運用規制の問題がある。

 路線誘致に苦しむ全国の地方空港とは対照的に、神戸空港は飛ばしたくても飛ばせない運用規制が課せられており、ある意味“混雑”空港となっているのだ。運用規制は、関西空港の経営に配慮して設けられており、この規制を緩和するには神戸空港の運営主体が関西空港と同じになる必要性があったのである。

 長年の悩みとなっていた運用規制は、以下の3つである。1つは発着枠(1日30往復便)、2つは運用時間(7時~22時の15時間)、3つは国際線の就航規制(オウンユースチャーター以外の国際線就航不可)である。

 現状で神戸空港の発着枠は上限に達しており、また運用時間の延長についても多くの関係者から要望が出ているため、この2つについては今年度の関西3空港懇談会にて緩和の方向に動くであろう。以下に関西・中国地方各都市への公共交通機関の終電をまとめたが、鉄道利用を前提とすると関西空港よりも神戸空港の方が、各地へ夜遅くまでアクセス可能だということがお分かりいただけるであろう。内陸空港である伊丹を除くと、関西圏において深夜・早朝運用によるポテンシャルが最も高いのは、神戸空港なのである。

各地からの深夜アクセス

 また、これも当サイトで長年指摘しているように、1日30便という発着枠の取り決めには航空管制上の根拠はなく、単に神戸空港の利用を制限するためだけに設けられたものであるため、今後は航空管制上の根拠に基づいた発着枠が設定されることを願うばかりだ。また、当サイトでは以前から指摘しているが、規制緩和の議論を契機に3空港の飛行ルートの再検討・再構築を進め、空域の最大活用を図るべきである。

 最後の国際線の就航規制についてだが、利用者・航空会社・地元自治体からの声はもとより、神戸は近距離国際線・関空は中長距離国際線と棲み分けを図った上で神戸への国際線の就航を提言する専門家は多い。しかし、現在活況を呈している関空の国際線の大半は近距離国際線である。今だに3500mと4000mという長大滑走路を持て余しており、神戸空港の2500m滑走路でも発着できる近距離国際線が神戸に移転してしまうと、関空のメンツが保たれないのではないかという不安は常に水面下で漂っている。国際線の規制についてはそもそも緩和がなされるのか、予断を許さない状況であり、特に議論の行方を見守りたい。

空港アクセス―新神戸-空港シャトルバスはアクセス改善に一役買うか?

 民営化を迎えた4月1日から新神戸駅・三宮駅・神戸駅と神戸空港を結ぶシャトルバスの運行が始まった。肝心の出だしはというと、やはり芳しくないようだ。これまでもOCAT・西宮・姫路方面などからリムジンバスが運行された時期があったが、短命で廃止に追い込まれている。バス路線が極限まで減少した中で、多くの利用者が選択しているのは、やはりポートライナーである。

 平日朝のポートライナー三宮駅。2分10秒間隔で空港行きと循環系統が発車するが、最も混雑する車両の乗車率は150%を超えることも。深刻化する混雑解消を目的として、数年前から神戸駅・三宮駅とポートアイランドを結ぶシャトルバスが運行されているが、こちらも利用率は高くない。なぜポートライナー利用者はバスにシフトしないのか、答えは運行頻度とバス停の利便性にあると言えるだろう。

 今回運行が開始された新神戸・三宮-空港線と神戸駅-空港線も運行本数は共に1日5本程度でしかなく、空港→三宮線に至っては運行ルートの都合で所要時間が33-38分も掛かるダイヤとなっており、利用者にとっては大変利便性が悪い。また、三宮での乗車場所は地下鉄三宮駅前となっており、利用者は三宮エリアに多数存在するバス停から同バス停を探し出さなければならない。そうなると、駅の場所も分かりやすく、昼間でも10分に1本が発車しているポートライナーを利用者が選択するのは当然と言える。

 年間300万人が利用する空港でここまでバス路線が貧弱なのは、全国探しても神戸空港くらいである。旅客数が神戸空港と同程度の広島空港では、市内中心部とのアクセスとして、広島バスセンター-空港線が1日約30本、広島駅新幹線口-空港線が1日約50本程度存在することと比較しても一目瞭然である。1日5本程度の運行では話にならないのだ。本気でシャトルバスへのシフトを進めるのであれば、三宮バスターミナルを発着する他の高速バスの始発・終点を神戸空港にし、空港-三宮間での乗車を可能とするなど、最低でもバスの運行本数自体を増やして、多頻度運行を実現しなければならない。

 また、ポートライナーの8両編成化、広域圏からの集客を見据えたポートライナーの新神戸への延伸、三宮-空港間の所要時間短縮のための快速運転も、並行して本格的に検討すべきである。

将来を見据えた投資を

 神戸空港の規制緩和はまだ決まったわけではないが、昨年スカイマークは神戸空港路線に投入することを目的として機材2機を追加発注した。投資判断に慎重な民間企業の決断としては異例なことである。規制緩和が決まってから機材を準備するのでは遅いという先見性の表れであろう。

 また、3月には兵庫県が今後の高速道路整備方針である「ひょうご基幹道路のあり方」を発表。その中には神戸空港-関空の連絡道路構想も盛り込まれた。遡れば、前兵庫県知事の貝原氏が理事長を務める財団法人が「神戸-関空リニア構想」を提言、現職の井戸知事は度々「神戸空港に2本目の滑走路を」と発言するなど、兵庫県側から巨大プロジェクト構想が持ち上がることがある。これらのプロジェクトは採算性等を考慮すると、実現可能性は相当低いかもしれない。だが、将来を見据えた先見性という点では評価すべきであり、同時に神戸市には欠落している視点である。

 神戸市は、市営地下鉄海岸線や神戸空港という大きなプロジェクトを推進した後、阪神大震災による緊縮財政で、大きなプロジェクトを何も持たないままであった。その影響もあり、神戸市中心部・三宮への投資は遅れに遅れ、他都市に周回どころではない遅れを取ることになった。最近になって、神戸市は三宮再整備構想のもと、街のリニューアルに取り組み始めたが、構想の青写真は30年後であり、到底遅れを取り戻せるペースではない。自治体には将来を見据えた投資が常に求められているのだ。

 空港も整備して終わりではない。神戸空港へのアクセス手段であるポートライナーの混雑解消に向け、今年度からようやく8両編成化の検討が始まったが、今更感が拭えない。ポートライナーの8両編成化には車両増備・駅舎改良などで費用が掛かるのは勿論、設計・工事に長期間を要することは容易に想像できる。ポートライナーの混雑が深刻となったのは、つい最近の事ではない。空港島にポートライナーの車両基地用地を確保しているにも関わらず、なぜここまで8両編成化の検討を先送りしてきたのか、神戸市の先見性の無さには呆れるばかりである。

 以前から当サイトではポートライナーの廃止、市営地下鉄山手線新神戸-三宮区間の空港までの南伸を提言している。事業費を考えると容易に取り組めることではないが、今後の神戸空港の需要動向、更にはポートアイランドの発展次第では十分検討に値するはずだ。ポートライナー車両と地下鉄車両の輸送力比較のため、以下に編成定員を記載しておく。

編成定員の比較

 今後実現するであろう運用規制の緩和により、更なる飛躍が見込まれる神戸空港。空港の運営は神戸市の手元を離れたが、空港アクセスに関連するインフラ整備はこれからも引き続き神戸市に求められている。(2018.4.12)