持論・討論

マスコミ

 2010年、経営再建中の日本航空が神戸空港から完全撤退し、大きく揺れた神戸空港。2009年の神戸市長選挙では共産党の立候補者が「神戸空港の廃港を視野に」と発言、関西経済同友会の山中幹事(南海電鉄会長)は神戸空港の廃港論を展開するなど、神戸空港不要論が出ることがある。

 しかし、神戸空港をめぐる様々な報道を検証していくと、そこにはマスコミの世論誘導も垣間見える。ここでは神戸空港を取り巻く発言・報道を検証し、私の持論を書き綴る。

(写真は、日本航空の撤退日に取材に集まるマスコミ。)

神戸空港は何ももたらさなかったのか?

 神戸空港に対する批判の多くは、神戸市の財政を圧迫するだけで経済効果は限定的だというものであったが本当にそうであっただろうか。

 蓋を開けてみると、神戸空港が開港した2006年度は様々な開港効果があった。

 まず、新幹線新神戸駅へののぞみ停車の実現である。これにより東京方面は勿論、西日本へもアクセスが飛躍的に向上し、普段飛行機を利用しない市民も開港による大きな恩恵を享受出来たのである。

 次に、観光客の増加による経済効果である。開港効果による観光客の増加で市内のホテルの稼働率が上昇、その後ホテルの建設ラッシュも起きている。

 また、開港後も経済効果が大きく出ているのはポートアイランドへの企業進出である。医療産業都市構想が進むポートアイランド2期では医療関連企業の進出が280社を超え(2015年1月末時点)、さらには次世代スーパーコンピューターの誘致にも成功した。これらは神戸空港開港と関係なしには考えられなかったことだ。

 以上の事からだけでもお分かりの通り、神戸空港が生み出す経済効果は多岐分野にわたり、開港効果は未知数なのである。神戸空港はこれからも多くの経済効果をもたらし、神戸・関西経済の発展に資する存在といっても過言ではないのだ。

神戸空港は赤字空港か?

 開港前から採算性について批判が多かったため、あまり知られていないが、神戸空港の運営収支は全国的に見ると優等生と言っても良い。神戸空港は市の収支計画の下で開港5年間黒字を維持、着陸料収入・停留料から管理経費を差し引いた基本収支が赤字となったのは2年だけである。ほとんどの地方管理空港は基本収支ですら毎年赤字に苦しんでいる事を考えれば、神戸空港はかなり健闘していることがお分かりいただけるだろう。

 空港機能用地以外の土地造成費を計上していないから、トータルで見れば神戸空港は黒字とは言えないとの批判もある。しかし、土地造成費は用地が売却できなければ負債として残るが、売却によって返済可能であるため空港運営とは別に考えるべきである。また、用地が余っていることを逆手に取ると、空港機能の拡張用地として利用することが出来るため、それだけ将来性があるということにもなる。

 空港の収支について他に目を向けると、例えば全国有数の旅客数を誇る福岡空港は毎年多額の借地料が発生しており、収支は赤字とされている。また、関西においては伊丹空港に環境対策費として数千億円が投じられてきており、これは空港収支とは別勘定となっている。空港の規模・旅客数と収支の赤・黒は必ずしも一致していないことがお分かりいただけるであろう。

 以上のことからお分かりの通り、空港の黒字・赤字を判断するのはとても難しいことなのである。そして、前述の通り神戸空港は大きな経済効果を生み出しているのだ。当然、空港の収支だけを見て、赤字・黒字を判断するのではなく、交通インフラとしての周辺への経済効果も考慮する必要がある。

これからも需要予測には届かないのか?

 神戸市は神戸空港の需要予測を開港初年度は319万人・開港5年目には403万人と見込んでいた。しかし、未だに初年度の需要予測は達成できていない。背景には、「将来的に就航機材が大型・中型機中心になる」という目論見がある。近年、航空会社は全国的に機材の小型化を進めているため、発着枠が規制された現状の運用では需要予測達成は厳しいと言わざるを得ない。

 だからといって神戸空港は今後も利用者増加が見込めないのかというとそうではない。これまで就航便数は1日30便の発着枠上限で推移していることを考えれば、潜在的に大きな需要を抱えているのは確かである。今後、発着枠をはじめとした運用規制を緩和・撤廃し、ユーザー目線に立って神戸空港の潜在能力を引き出す環境が整うことを切に願うばかりである。

神戸空港は欠陥空港か?

 神戸空港は欠陥空港だとされる事があるが、本当にそうだろうか?ここでは欠陥とされた主な4点について考える。

●神戸空港が海の航路を制限し神戸港の発展を阻害している
 神戸空港では標準進入灯が西側に設置されており、神戸港の旧第2航路は完全に塞がれてしまっている。しかし、現在はポートアイランド西側のコンテナバースは廃止・再開発され同時に旧第2航路は廃止、貨物はポートアイランドの東側(神戸中央航路経由)に集約されており、現在空港の西側を通る大型船は神戸西航路(旧第1航路)を利用する旅客船に限られている。神戸中央航路(旧第3航路)を通る貨物船の航行が危険になるとの指摘もあるが、神戸中央航路には制限表面は設定されていない上、航空機の進入表面も余裕を持って設定されており、安全は十分に確保されている。ちなみに、神戸空港島と神戸中央航路の距離は約2700mであるが、羽田空港においては新滑走路と東京第1航路の距離が約1700mで、神戸よりさらに厳しい条件に設計されている。 神戸港入港ルート
※入港マニュアル(神戸市)より

●騒音問題が発生する
 都市型でアクセスが良い空港になればなるほど騒音というものは付き物である。伊丹空港を例に取れば明らかである。大阪都心から最も近い伊丹空港は、住宅地のど真ん中にあるがゆえ騒音被害が深刻で、裁判にまで発展している。現在までに7000億円以上が投じられ、現在も毎年何十億円もの騒音への対策費用が投じられている。それに比べて神戸空港はどうであろうか。都心から約15分という大変便利な立地であるが、海上空港がゆえ深刻な騒音地帯はすべて海上に存在している。また、騒音が発生する場所として、神戸便の飛行ルートが近くを通る淡路島が挙がることがある。しかし、淡路島上空に飛行ルートを持つ関空便とは対照的に、神戸便の飛行ルートは淡路島上空を通らない上、現状は深夜早朝運用もされていない。これらを考えれば、騒音問題が発生するという批判は無理があるという事がお分かりいただけるだろう。

●ILS(計器着陸装置)が西側にしか設置されていない
 ILSとは航空機の着陸において接地までの誘導を自動的に行う設備を構成する装置の一つであり、神戸空港にはILSが西側にしか設置されていない。しかし、現在に至るまで神戸空港にILSが片側にしか設置されていないために着陸できず大量に欠航便が発生したことはない。立地が海上であるために、内陸部の空港に比べて霧や雲が発生しにくく、厳しい気象条件となる事が少ないからである。また、関西でILSが両側に設置されている空港は関空だけで、伊丹もILSはB滑走路の片側にしか設置されていない。これらから分かるように、ILSが滑走路片側にしか設置されていないのは小規模な地方空港では当たり前であり、ILSが両側に設置されていなければ航空機の運航に大きな支障をきたすという事はないのである。

●六甲おろしが吹くため、横風に弱い
 北側に位置する六甲山から吹き降ろす風「六甲おろし」が強い横風となり、航空機の運航に支障をきたすとの議論もあったが、横風による欠航は年間数件しか発生しておらず、大きな問題とはなっていない。データとして、2008年度の就航率は99.0%を超えている。

 以上のことから分かるように「神戸空港は欠陥空港だ」というのは一概には言えず、これからも着実な発展が期待できる大都市都心型空港であることがお分かりいただけるであろう。

疑惑の関西新空港計画

●関空が泉州沖に出来たのは、神戸の反対決議のせいか?
 関西国際空港が都市部から離れた泉州沖に建設されたのは、神戸市の反対決議があったからとされているが本当にそうだろうか。確かに神戸市は1972年に関西国際空港の神戸沖への建設計画に対し反対決議を行っているが、1982年には反対決議を撤回し、再誘致へと乗り出している。1982年というのは、泉州地域も反対運動真っ盛りで建設の目処が立っていない時期であり、この時点で神戸沖建設への決断は十分可能だったのだ。すなわち、神戸沖・泉州沖と選択肢がある中で、最終的に泉州沖という判断を下したのは当時の運輸省であり、いつの間にか「神戸市が関空を蹴ったから現在の位置に関空が出来た」という誤った認識が独り歩きしているのだ。
 その後、泉州沖で関空が開港するものの、都市部から離れた立地で利用が低迷。泉州沖へのGOサインを出した当時の運輸省のメンツは丸つぶれとなったのである。メンツが丸つぶれとなった運輸省は、いつの間にか関空低迷の原因を神戸に押し付け、神戸空港は謂れのない運用規制を被ることになったのである。

ポートアイランド沖空港試案
位置  ポートアイランド沖約6kmの海上(空港とポートアイランドとは海底トンネルで結ぶ)
用地  1100ha(将来計画 2100ha)
滑走路 主滑走路4000m×2本、横風用滑走路3200m×1本(将来計画 主滑走路4本、横風用滑走路2本)
工期  47年度から60年度以降
工費  3800億円(将来計画+3700億円、全体で7500億円)

1982年 神戸沖新空港計画試案
位置   ポートアイランド沖約4kmの海上(空港とポートアイランドとは沈埋トンネル約3kmで結ぶ)
用地   510ha(将来計画 650ha)
滑走路  3000m×1本(将来計画 3000m×2本 横風用不要)
需要予測 発着回数 当初:年間10.4万回(将来 22万回)
発着能力 年間16万回(将来 22万回)
建設工法 埋立工法。埋立土量 1億8000万m³(全体 1億9500万m³)
建設期間 7年
工費   護岸、埋立 5250億円(全体5520億円)
     着陸帯、滑走路、誘導路、道路等 830億円(全体1390億円)
     旅客・貨物ターミナル駐車場等 420億円(全体590億円)
     合計 6500億円(全体7500億円)
     ※管制、税関等の施設約350億円は別途国負担

現 神戸空港
位置   ポートアイランド沖(三宮から南へ約10km)
用地   272ha
滑走路  2500m×1本
需要予測 利用客 当初:年間319万人 2010年度:年間403万人
開港日  2006年2月16日
工費   埋立・護岸・道路等 2420億円
     滑走路・消防施設等 594億円
     岸壁・物揚場等 126億円
     合計 3140億円

●強引に進められた2期事業
 神戸空港の建設が進む中で、対岸の関西国際空港では新たなプロジェクトが進行していた。「関空2期計画」である。本来、空港の拡張は利用客の増加・就航便数の増加に伴って行われるべきだが、関空の2期計画は発着枠にもかなりの余裕があり今後も発着便数の減少が予想されている中、土地の造成費だけで神戸空港の建設費の約3倍に当たる9000億円という莫大な建設費を投入して進められた。この膨大な建設費が後々関西国際空港の経営を圧迫することになるのは言うまでもない。神戸空港事業が表立って批判される一方で、関空2期事業は水面下で着々と進められた。関空2期事業は神戸空港の開港に対する危機感から、関空の存在感を誇示するために進められた事業だといっても過言ではない。
 自ら首を絞める事業を進めておきながら、首が回らなくなり神戸・伊丹を低迷の原因に挙げるというのは、お門違いというものである。

●関空に振り回される関西の空
 現在、神戸空港・伊丹空港は国際線の就航を始め、発着枠などにも規制を掛けられており、航空会社・利用者視点を無視した運用となっている。関空の低迷が招いた結果がこれである。
 挙句の果てには神戸空港・伊丹空港の廃港を持ち出す感情論を招くことになり、関西の空は今も関空に振り回され続けていることがお分かりいただけるだろう。これからは、国も「関空救済の視点」ではなく「航空会社・利用者の視点」に立って、関西3空港の運用を考えるべきである。

評価されない実績

 神戸空港ほど市民運動が活発になった空港計画はないのではないだろうか。裁判、住民投票へ向けての署名運動、デモパレード、さらには神戸空港を批判する書籍も数多く出版され、開港までの道のりは平坦ではなかった。それゆえ、「神戸は一度空港を蹴っている」「神戸空港は市民の意向を無視して作られた」というような反感が一人歩きしてしまい、神戸空港の立派な実績はほとんど知られていないのが現状である。

●優れた利便性
 関西国際空港の最有力候補地として選ばれていただけに、神戸空港の利便性はかなり優れており、1時間利用圏人口は約1000万人(ちなみに伊丹が約1500万人、関空が約400万人)とされている。具体的には、神戸の都心である三宮駅から神戸空港が約18分、大阪駅からでもJRとポートライナーを乗り継いで神戸空港まで約45分という立地である。ちなみに、関空は大阪駅から約65分・伊丹空港は梅田駅(大阪駅)から約20分、首都圏の羽田空港は新宿駅から45分・横浜駅から約30分であり、神戸空港の立地は全国的に見ても大変優れていることがお分かりいただけるだろう。それゆえ、神戸空港は神戸の玄関口だけではなく伊丹・関空と並んで関西の玄関口も担っていけるのだ。

●反対派の予想を超えた需要
 空港反対派が出版した書籍に次のような記述があった。「神戸空港は50万人しか利用しない」。筆者は様々な計算式を立てて導き出した需要予測だとしていたが、実際はどうだっただろうか。初年度は50万人どころか約270万人もの人が神戸空港を利用したのである。この270万人という数字は、神戸市の需要予測には届いていないものの、地方管理空港の中ではダントツ1位の実績であり、神戸空港のニーズの高さを証明した。また、開港2年目には約297万人が利用し、国内線の旅客数では全国第10位を記録している。 旅客数ランキング

●「自前の空港」
 神戸空港を国の新規事業に格上げさせるために神戸市が取った姿勢、それは「神戸市が自前で建設する」といったものだった。日本にある空港の中で、市がここまで巨額な建設費を負担したというのは例がない。市が自前で建設するということで、空港反対派の市民が大きな反対運動を起こすことにもなったが、結果的に神戸空港は新規事業に認められることになった。本来、市外から「税金の無駄遣い」等と批判される筋合いは無いのである。

●赤字報道のカラクリ
 神戸空港は開港5年間は市の収支計画のもとで黒字を維持してきた。残念ながら、6年目になって管理収支が赤字に転落したことでマスコミが騒ぎ立て、神戸市長選でも一部の立候補者から廃港論が噴出するなどの事態を招いている。ここで勘違いされているのは「空港運営が赤字を生むから、廃港にすれば事は丸く収まる」ということだ。
 赤字転落の原因は、「課題・現状」の管理収支の項を見ていただければ一目瞭然である。赤字に転落した原因は、着陸料収入など収入の減少によるものではなく、「市債償還金」つまり建設費の借金返済額の増加によるものである。市債償還金は右肩上がりの成長を前提に、年々増加するよう計画が組まれていたため、収入が右肩上がりで増加しなければ見かけ上は「赤字」となり、空港運営が傾いたように見えてしまうのだ。
 また、着陸料・停留料などから管理経費を差し引いた基本収支は毎年黒字であることから、空港運営により借金返済の原資を稼ぎ出せているということもお分かりいただけるだろう。つまりランニング収支は「黒字」なのである。市債の償還は、空港が無くなっても行われるわけであり、廃港となればこの収入がゼロとなって更に赤字が膨らむ上、空港島内に進出する航空関連企業への補償問題が発生することも考えられる。それらを考えると、廃港のメリットなど何一つとして見当たらない。
 もちろん、右肩上がりの急激な成長を前提に採算が取れるとしていた当初の見通しは甘かったと言える。しかし、前述の通り神戸空港のランニング収支は黒字である上、専門家も採算性が高い空港と認めていることを考えると、市債の償還が終われば神戸空港は大きな黒字を生み出す空港になると言えるのだ。

 むやみやたらに市民の不安を煽り、世論をミスリードする無責任な発言・報道には呆れるばかりである。

誇大報道される土地売却計画

 神戸空港建設に際して、神戸市は「市民に財政負担はかけない」との公約を発表し、開港以来ずっと守られている。その土台となっているのは、空港島の用地を民間企業に売却して建設費を賄うという手法で、ポートアイランド・六甲アイランドの造成などにも用いられ「神戸方式」と呼ばれていた。しかし、長引く景気の低迷などから用地の売却は不調で、空港島の約1割しか売却が進んでいない。

 土地売却が進んでいない原因として、神戸市も予測できなかった昨今の景気の落ち込みも一因となっていると言えよう。しかし、景気落ち込みによる売却不振を考慮しても、数年のうちに土地を売却して借金を完済するという当初の計画は少し無理があったと言わざるを得ない。というのも、空港というものは安定的に運用され、空の玄関口として定着することで発展していくものだからである。空港島というのは他の埋立地とは違い、空の玄関口に隣接した立地を確保できるという魅力的な場所であり、長年運用していくにつれて進出企業が増えてくるはずである。実際、開港6年目になって、ヘリ大手のユーロコプター(現 エアバス・ヘリコプターズ・ジャパン)が大阪国際空港にあった整備場を廃止して神戸空港に新たな拠点を新設、スカイマークは航空機の整備・点検を行うための格納庫を新設するなど、企業集積が進みつつある。

 また、将来的な空港機能の増強を考えると、ある程度の空き地を確保しておく事はやむを得ないだろう。現在、神戸空港は国内線のみの運用であるが、夜間駐機機でスポットをほぼ全て使い切っている状況である。今後、発着枠の更なる増加と国際化を考えれば、駐機場の拡張も避けては通れない。

 神戸空港は開港からまだ数年しか経っていないのである。売却が進んでいないことを大きく取り上げるというのは、いささか早計である。土地売却計画は長い目で見ていく必要があると言えよう。ただ、現在のように借換え債を起債していると、その分利息は膨らむことになる。用途が航空・物流関連の業種のみに限定されている現在の計画を幅広い業界が空港島に進出できるような土地利用計画に変更し、土地の売却を促進させるなど新たな取り組みは常に模索していくべきだ。

需要予測は誘致合戦の宣伝文句に過ぎない

 日本航空の破綻を機に、国土交通省が全国の空港の需要予測と実績を公開し、需要予測を達成した空港は全体の約1割にしか満たないということが明らかとなった。各自治体が誇大な需要予測を出し誘致合戦を行う中、過大な需要予測を立てなければ後回しにされ、さらには計画自体が頓挫してしまう可能性があったことがこのような実態の背景にあると言えよう。

 しかし、需要予測を達成していない全体の約9割の空港は全て「不要」「失敗」なのか、いやそうではないだろう。この「甘い需要予測」を発表するということは、単に過去の誘致合戦の宣伝文句を公表したに過ぎず、これまでの国・地方の航空行政の反省に過ぎないのだ。開港後に重要となるのは、「採算が取れるか、否か」である。もちろん「採算」というものは単純に判断できるものではないため、どういう意味を持って採算が取れるとするかは別問題である。しかし、実問題として、採算割れが続くと予想される空港は常に「廃港」「存続」の岐路に立たされ、存廃を議論されていくことになる。

 神戸空港も例外ではなく需要予測の達成はできていないが、開港2年目には需要予測の実に93%を達成しており、大きく取り上げる必要性は感じられない。しかも、空港反対派の需要予測では「神戸空港の旅客数は約50万人」とされており、ある意味では需要予測を大幅に上回っているとも言える。「神戸空港は赤字空港か?」でも述べた通り、収支において建設費の償還は追いついていないものの、空港自体のランニングコストは賄えており、採算面で存廃論が出ること自体がナンセンスなのだ。

 神戸空港の経済効果・全国的な地位を考慮せず、管理収支・需要予測未達成という小さな視点のみで取り上げ、「不要論」「廃港論」などを引き立てるマスコミの報道は中立性を欠いていると言わざるを得ない。

神戸空港は失敗か

 前述のように神戸空港は様々な批判を受けて開港した上、「神戸空港は絶対に失策」と前大阪府知事も発言するなど、神戸空港が失敗であったように語られることが多々ある。

 2000年代になって多くの地方空港が開港しているが、旅客数で神戸空港ほどの実績を残している空港はない。初年度には神戸市の需要予測には届いていないものの、地方管理空港の中ではダントツ1位の約270万人が利用しているのだ。

 様々な運用規制が敷かれている中でもこのような実績を残している事を考えると、神戸空港は失敗だったとは言えないのではないだろうか。しかも、神戸港に近接した立地がゆえに貨物の拠点にもなり得ること、航空政策に詳しい専門家も採算性が高いと認める空港だということを考えると、まだまだ潜在能力を秘めた大いに発展の余地がある空港であるのは間違いない。繰り返しになるが、国・関西政財界は、神戸空港への運用規制が関西経済へマイナスの影響を与えているという事実に向き合い、この現状を早急に見直していかなければならない。

最後に ~神戸市民は今後どう向き合うべきか~

 神戸空港計画の策定時に空港の必要性を議論する事は大切である。しかし、空港が完成した後に開港前の議論を引きずって、メリットが皆無に等しい廃港論を掲げ、反対し続けるというのは、むやみに市民の不安を煽るだけである。現在も、度あるごとに神戸空港に対する反対運動を起こしている市民団体には、神戸市民のどれだけの人が廃港を望んでいるのか、廃港にするメリットはあるのか、などもう一度原点に立ち返り冷静に考えてほしいと思う。神戸を良い街にするという本来の目的を忘れ、空港を廃港に追い込むことが単なる目標になってはいないだろうか。

 神戸空港は反対運動が巻き起こる中、やや強引に開港にこぎつけたことは否めないかもしれない。しかし、前向きに捉えると空港が開港したことで神戸には様々な可能性が開けたのである。本当に神戸の未来を考えるのなら、空港の誕生を悲観的に捉えるのではなく、未来への投資・新たな可能性と捉えて積極的に利用を図るのはもちろん、市民一丸となって規制緩和に向けて声を上げていかなければならない。

 神戸空港という新たな空の港の開港を一つのきっかけとして、これから神戸が更なる発展を遂げていくことを切に願ってやまない。

抗議集会
↑開港記念日に行われる抗議集会(神戸市役所前にて)※肖像権保護のため一部モザイクを掛けています。