
関空4路線運休の衝撃
円安や人件費・燃料費の高騰が続き、国内線の収益悪化が航空業界全体で大きな問題となっている。そのような中、先日ANAはいち早く減便・運休という大ナタを振るった。
その柱となったのは「静岡空港からの撤退」と「関西空港発着路線の大幅縮小」である。特に後者は寝耳に水の発表で、2026年サマーダイヤから関西空港発着の新千歳・那覇・宮古・石垣線の計4路線を運休(団体客向けに一部日程で運航予定)し、羽田線のみを残すという驚きの内容であった。
関西において、国内線の基幹空港は伊丹空港であり、関西空港や神戸空港の国内線は同空港の補完的な意味合いが強い。だが、関西空港は関西・西日本における拠点空港として位置付けられている一大国際空港である。そのような一大国際空港で、就航する大手航空会社の路線構成が地方空港のような姿となることは非常に大きな衝撃である。
ちなみに、ANAが大幅な減便を発表した一方、ANA系のLCCであるPeachは関西空港発着の新千歳線と那覇線を大幅に増便することを発表。ANAグループとして関西空港路線をLCCに特化させようとする意図が垣間見える再編となった。
| 羽田線 | 5往復/日 |
|---|---|
| 新千歳線 | 2往復/日 |
| 那覇線 | 3往復/日 |
| 宮古線 | 1往復/日 |
| 石垣線 | 1往復/日 |
| 計 | 12往復/日 |
2025年ウィンターダイヤ
| 羽田線 | 5往復/日 |
|---|---|
| 新千歳線 | – |
| 那覇線 | – |
| 宮古線 | – |
| 石垣線 | – |
| 計 | 5往復/日 |
2026年サマーダイヤ
※上記に加え、スターフライヤーが羽田空港の関西空港路線専用の発着枠(際内乗継改善枠)を使用して運航している羽田線(4往復/日)もANAとコードシェアを実施しているため、ANA便名が付く関西ー羽田便は1日9往復存在する。
機材小型化が進む神戸空港

今回、ANAは関西空港発着便で大幅な減便に踏み切った一方、神戸発着便に関しては運航規模の縮小は免れた。この背景には、神戸ー新千歳・那覇線の大半がエアドゥ・ソラシドエアによるコードシェア便となっており、ANA本体としては既に運航規模を絞っているという事情がある。ある意味で、エアドゥ・ソラシドエアの存在によって減便を免れたといっても過言ではないだろう。
このようにANAの減便を免れた神戸空港であるが、心配しなければならないもう一つの「傾向」がある。それは機材の小型化である。コロナ禍以降、神戸ー羽田線では機材の小型化が進んでいるのである。
コロナ禍前まで、朝の神戸発羽田行、夜の羽田発神戸行の便ではB777が投入されるなど、大型機による運航が主流となっていた。だが、コロナ禍を経て大型機材の退役が進み、これにビジネス需要の縮小等も相まって、最近では神戸ー羽田線は小型機・中型機による運航が定着しているのだ。(2025年のウィンタースケジュールではB767(中型機)中心の運航となっていたが、2026年のサマースケジュールではA321・A320(小型機)中心の運航が予定されている。)
機材の小型化は搭乗率を高め、採算性の向上に資する面はある。だが、それと引き換えに団体客の受け入れが困難となるなど満席による機会損失は大きく、空港利用者の減少にも直結することとなる。
また、機材の小型化は航空貨物の取り扱いに与える影響も大きい。神戸空港では、エアドゥ・ソラシドエアの参入で大型機の運航頻度が減ったことから、航空貨物の取り扱い自体が終了しているのだ。このように機材の小型化は多方面に悪影響を及ぼすことになる。
国際化に悪影響も

神戸空港ではB777やB767など大型・中型機材の運航実績はあるものの、これまでB787の運航実績は無い。この理由をご存知だろうか?
機材小型化が主流の昨今、「B787をわざわざ飛ばすだけの需要がない」というのは本質的な理由なのだが、付随して「B787の整備基地として認定を受けていない」ということも理由として挙げられるのだ。パイロットのライセンスが機種毎に限定されていることは有名な話である。だが、実は各空港の整備体制も機種毎に認定が必要で、航空各社は各空港で整備できる機種を規程に定め、認定を取得しているのだ。(正確には「認定がない=当該機種を飛ばすことが出来ない」訳では無いが、定期便を運航するにあたっては通常整備体制も認定を受けることとなる。)
神戸空港では、新千歳・那覇線でエアドゥ・ソラシドエアとのコードシェアが始まった2013年以降、大型機で運航される便が減っていることから、ANAはB787の整備体制の認定を神戸空港では新たに取得していない。そのため、神戸発着路線では機材を一時的に大型化する場合、神戸空港の整備士が整備・点検可能なB767やB777が充当されているのである。
今後、国際化が進む神戸空港では、外資系航空会社の新規参入により、運航機材も多種多様となってくることが想定される。その際、外資系航空会社は日本の航空会社に整備を委託することが殆どであるため、運航機材の整備体制が構築されていない場合、就航に際して一つのハードルとなり得るのだ。
ANAが神戸空港で大型機材の整備体制の認定を維持していることは、今後の空港の国際化を進める上でも非常に大きな意義を持つということがお分かり頂けただろうか?先程述べた「羽田線の機材小型化」は空港国際化にとっても望ましくない傾向なのである。(現状、神戸空港ではB787の整備体制の認定が取られていないため、外資系航空会社がB787を神戸空港路線に投入するにはハードルがある状況である。)
「ゲタ」を履かせる努力を
神戸空港開港当初、神戸市や兵庫県は職員の出張に神戸空港発着の航空便を利用するよう推奨していた時期がある。今となっては、このような取り扱いはされていないと推察するが、全国的にビジネス需要が先細る今、自治体や地元企業が積極的に航空便の利用を推奨する「テコ入れ」の必要な状況が再来していると言っても過言ではない。
新幹線との競合がある中、一方に肩入れすることには賛否の議論があるが、空港には県の補助金等を投入している以上、航空便への肩入れは有って然るべきだろう。線路が敷かれた新幹線とは異なり、航空路線は一度廃止になると復活させることは並大抵の努力では叶わないのだ。
国際チャーター便の就航、ジーライオンアリーナの開業等、神戸空港の国内線にはコンスタントに利用者が集まる環境が整いつつある。国内線の路線網維持のためにも、経済界・自治体には利用促進に向けた一層の取り組みが求められている。
