【2024年最新】国際化への準備状況まとめ
真の開港へ!神戸空港国際化

2025年 神戸から海外への扉が開く!

国際化が決まった神戸空港

2022年9月に開催された第12回関西3空港懇談会で、神戸空港の国際化が正式に合意されました。現在、国際化に向けた準備が進められており、2025年の国際チャーター便解禁を皮切りに神戸空港から海外への扉が開かれることになります。

国際化によって「真の開港」を迎える神戸空港。その動きには、利用者だけでなく航空会社・経済界からも多くの期待が寄せられています。

神戸空港国際化に寄せられる期待の声

【UPDATE関西特別編】WESTが日本経済を牽引するために必要なことは?

佐山展生(SKY元会長) 例えば、神戸空港はすごく便利です。もし神戸空港と新神戸駅を直結できたら、新幹線沿線の人も神戸空港に来ます。飛行機で神戸空港に来た人もすぐに新幹線乗れます。神戸は海外の窓口になれるポテンシャルを持っているんです。
しかし規制で今は神戸空港から海外には飛べない。これは関西の皆さんが声を上げないと変わらないと思います。

【UPDATE関西特別編】WESTが日本経済を牽引するために必要なことは?(NEWS PICKS)

神戸空港国際化「カード多い方がいい」 関経連・松本会長

松本正義(関経連会長) 「関西3空港懇談会」が神戸空港の国際化を認めたことについて、「(訪日客の受け皿として)カードはたくさんあった方がいい」と述べた。3空港をめぐる地元自治体間の対立を乗り越えて、関西の発展に向けた連携が進むことに期待をかけた。

神戸空港国際化「カード多い方がいい」 関経連・松本会長(産経新聞)

ロンドンお手本 関西3空港の国際線ネットワーク

野村宗訓(関西学院大教授) 「パイの奪い合い」という旧態依然たる発想で、伊丹と神戸が海外に向かって閉じているのは残念だ。
神戸空港は神戸市が「国際都市」を掲げてきたのに国際線がない。税関や検疫など国際線に必要な施設すら備えていない。世界的にみて、これはあり得ない。伊丹や神戸にも国際線を入れることで、利用者の選択肢も増えるはずだ。

ロンドンお手本 関西3空港の国際線ネットワーク(産経新聞)

神戸空港に国際線就航へ リスク分散の役割を期待

竹林幹雄(神戸大学教授) 首都圏は羽田、成田の2空港体制、関西もリスク分散の考えから、2つ以上の国際空港を持つことが望ましいと思います。
運賃の高いフルサービスの航空会社を利用するビジネス客は、神戸市だけでなく、JRを利用して大阪、京都にも近い神戸空港を評価するでしょう。

神戸空港に国際線就航へ リスク分散の役割を期待(神戸大学)

国際線が関空に限定されていた理由

関西における国際線の受け入れは、これまで関西空港に限定されてきました。この背景には、一時期の「関西空港の経営不振」があります。

関西空港は、都心から離れた立地と高額な着陸料が仇となり、開港以来長きにわたって旅客数が低迷。赤字を垂れ流す状態が続いてきました。そのため、国交省は関西空港の旅客数上積み・収益改善を図ることを目的に、ライバルとなり得る伊丹空港と神戸空港での国際線就航を規制したのです。

ちなみに、名古屋空港や丘珠空港など都心近接空港をコミューター機の運用に限定しているケースを除いて、同一都市圏の空港で国際線を1空港に集約する政策が取られているのは関西だけです。当時、如何に関西空港を手厚く保護する必要があったかということがお分かり頂けると思います。

誤解の多い関西空港誕生の歴史

これまで神戸空港への国際線就航が認められなかった背景には、関西空港の経営不振という事情に加え、関西空港が誕生するまでの複雑な歴史も存在します。その歴史として「関西空港の神戸沖案は神戸市の反対で実現しなかった」といった話を聞いた事がある方は多いのではないでしょうか?実はこの話には裏があります。

関西空港の構想が持ち上がった当初、空港に対する世論は厳しく、神戸市が空港反対の姿勢を示していたのは事実です。しかし、空港反対の姿勢を示していたのは神戸市だけではありません。当時、大阪湾に位置する全ての自治体が空港反対の姿勢を示しており、泉州地域の自治体も実は例外では無かったのです。

では、なぜ関西空港の建設地として泉州沖が選ばれたのか?その大きな理由は「地域振興」の為と言われています。大都市としてのインフラが既に整備された神戸地域よりも、インフラ整備の遅れていた泉州地域で空港を整備する方が経済効果が大きいと判断されたのです。その証拠に、当時の資料には「地域社会が新空港を受け入れる情勢にあるかどうかということは条件から除いた」という文言が残されており、実は神戸市が当時受け入れ姿勢を示していたとしても関西空港の神戸沖案は実現しなかった可能性すらあるのです。

しかし、「神戸市は一度空港に反対した」という断片的な事実は一人歩きし、「関西空港の神戸沖案は神戸市の反対によって頓挫した」「一度空港を蹴った神戸市が後から空港を造るとは何事だ」といった世論を形成することになります。国交省もこのような世論を盾に、神戸空港への国際線就航を制限するなど運用規制を掛け続けてきたのです。

関西空港誘致を巡る歴史的経緯について、多くの政治・経済界トップやマスコミは勘違いしており、正確な報道は殆ど出回っていません。それほど関西3空港の歴史は非常に複雑なのです。(関西3空港の歴史については関西3空港を巡る本当の歴史のページで詳しく解説しています。)

神戸空港に課せられた運用規制

発着枠…1日40往復(開港当初は1日30往復)
運用時間…7~23時(開港当初は7~22時)
国際線…定期便・チャーター共に就航不可(オウンユースチャーターのみ就航可)

転機を迎えた国際線集約政策

関西空港では、国内線需要・際内乗継需要が当初の想定を下回っている。
そのため、国内線エリアを縮小することで、国際線エリアの拡充が行われている。
(出典:関西エアポートプレスリリース)

長年続けられてきた関西空港への国際線集約政策ですが、転機を迎えることになります。その契機となったのが「関西3空港の経営統合」です。

関西空港の負債圧縮のため、国は関西空港と伊丹空港の運営権を民間(現・関西エアポート)に売却。神戸市が管理していた神戸空港も、民営化を経て関西エアポートの傘下に入り、関西3空港の利害関係が解消することになったのです。このため、関西空港に国際線を集約させる必要性は薄れ、関西3空港トータルで利益を最大化することが求められるようになりました。

また、関西空港への国際線集約政策には、路線間の乗り継ぎ需要を取り込む「ハブ化」を推進するという意味でも期待が寄せられていました。しかし、残念ながら国際線を集約したことによって「ハブ」機能が構築されたとは言えない現状があります。

近年、関西空港発着の国内線は乗継需要の少ないLCC路線、国際線は近距離アジア路線が大半です。加えて、全国各地の地方空港は国際線拡大が続く羽田空港と結ばれているほか、仁川・香港・台北などアジアの巨大ハブ空港とも結ばれています。そのため、現在関西空港を経由する乗り継ぎ需要は非常に限定的な状況なのです。

事実、現在進められている関西空港のリニューアル工事では、ハブ機能の構築に重点を置くのではなく、関西エリアを目的地とするインバウンド需要の取り込みに主眼が置かれています。

なぜ国際化する?4つの大きな役割

神戸空港の国際化が決定した背景には、前述の通り関西空港への国際線集約の意義が薄れていることに加え、関西空港の「補完」が必要となっている現状が挙げられます。

ここでは、関西空港の「補完」が必要となっている理由と、神戸空港の国際化によるメリット・期待されている大きな役割を以下4つご紹介します。

①都心近接の立地を生かした需要創出

ベイエリアにおける主要施設と関西3空港の位置関係

神戸空港は全国でも有数の都心型空港です。そのため、都心近接という立地を生かし、新たな需要の創出が期待されています。上の地図で関西3空港とベイエリアにおける主要施設の位置関係をご覧ください。

神戸空港は鉄道・バス路線網が集中する神戸都心に近接しているのは勿論のこと、物流の大動脈である神戸港や新幹線駅・高速道路にも近接し、陸海空の結接点を構成しています。加えて、国際展示場・国際会議場・アリーナ等の大規模集客施設や、2025年に開催される大阪・関西万博の会場やIR(統合型リゾート)の予定地にも近接しており、空の玄関口としてのポテンシャルは非常に高いのです。

国際化にあたっては、これらの大規模集客施設への送客に加え、神戸港と連携した「フライ&クルーズ」の旅行需要の創出航空貨物・陸上貨物・海上貨物の物流中継機能等が期待されています。

また、神戸空港は国内でも5箇所しかない海上空港の一つです。本来は24時間運用が可能であり、都心近接というメリットを生かした深夜早朝便の需要創出も期待されています。

②溢れるインバウンド需要の取り込み

2019年時点で関西空港の発着回数は一部時間帯で上限に達していた
(出典:関西エアポート資料)

「関西空港を補完する役割」として特に期待されているのは、溢れるインバウンド需要の取り込みです。

コロナ禍前、関西空港は旺盛なインバウンド需要が追い風となり、過去最高の旅客数を記録。発着能力やターミナルビルの処理能力も限界に近い状態となっていました。このため、関西空港で受け入れきれない発着便が中部空港や岡山空港など周辺空港を発着し、実質的にインバウンド需要を「取り溢した」状況となっていたのです。

現在、関西空港では国際線の受け入れ容量を拡大すべくリニューアル工事が進められていますが、急増するインバウンド需要はリニューアル後の関西空港でも受け入れきれないとの予測が出されています。神戸空港が国際化することで、このような今まで取り溢していたインバウンド需要を確実に関西圏へ取り込むことが可能となるのです。

③アウトバウンド需要の取り込み

岡山駅から国際線発着空港(岡山空港を除く)までの所要時間
広島駅から国際線発着空港(広島空港を除く)までの所要時間

神戸空港に期待された「関西空港を補完する役割」は、インバウンド需要の取り込みに留まりません。都心近接・広域アクセスに優れた立地を生かし、インバウンド(海外から日本に入国する旅客)の逆となるアウトバウンド(日本から海外に出国する旅客)の需要取り込みも期待されています。

都心部から離れた関西空港では、周辺の航空需要を完全に取り込めていないという事は長年指摘されてきました。特に、中国・四国地方から関西空港へのアクセスは容易ではなく、また関西圏でもビジネス客を中心に伊丹・神戸空港から羽田空港を経由して出国するケースは多いと言われています。

神戸空港の国際化は、この流れを変える可能性があり、阪神間・中国・四国地方をターゲットとした国際線の航空需要(アウトバウンド需要)の取り込みが期待されているのです。

④国際空港機能のバックアップ

2018年の台風21号で浸水した関西空港(出典:近畿地方整備局)

神戸空港の国際化に期待される役割で、意外と見過ごされているのが、国際空港機能のバックアップとしての役割です。

2018年に発生した台風21号が関西地方で猛威を振るったことは記憶に新しいと思います。この時、関西空港では1期島が高潮によって冠水、更に空港連絡橋にはタンカーが衝突し、関西で唯一の国際空港が機能不全に陥る非常事態となりました。この際、伊丹空港・神戸空港で関西空港の国際線を受け入れることが検討されましたが、両空港には国際線の受け入れに必要な施設・人的リソースが存在しない事から、バックアップを果たすことが出来ませんでした。

国内線と異なり、国際線はCIQ(税関・出入国・検疫など国際線の運用に必要な施設)が必要で、飛行機が離着陸出来れば国際線を受け入れられるという訳ではありません。伊丹空港や神戸空港では国際線の運用が規制されていることから、CIQが常設されておらず、また航空会社にも国際線をハンドリングできる人員・機材が用意されていません。これが関西空港のバックアップの支障となったのです。

神戸空港の国際化は、このような非常時における国際空港機能のバックアップという点でも期待されています。

国際化へのスケジュール

国際化に向けたスケジュール

神戸空港の国際化は、関西空港への影響を見極めながら進められます。そのため、2段階に分けた規制緩和が予定されています。

①2025年 国際チャーター便の解禁

2025年4月に大阪・関西万博が開催され、インバウンド需要の大幅な増加が見込まれます。この際、関西空港だけでは増加する需要を受け入れきれない可能性があるため、神戸空港で国際チャーター便の受け入れが解禁されます。

この時点では、神戸空港での国際線受け入れ施設の整備が不十分であることに加え、関西空港への影響を見極める必要があることから、国際定期便については受け入れが出来ません。しかしながら、国際チャーター便は「定期チャーター便」という定期便に準じた運用も可能であり、国際チャーター便の解禁は事実上の国際化を意味します。

国際チャーター便の種類

オウンユースチャーター…法人・団体・個人が自己利用のために用機するチャーター
アフィニティチャーター…旅行以外に主たる目的を有する法人又は団体(アフィニティ・グループ)が、当該アフィニティ・グループの構成員及び構成員の同伴者の使用のみのために行うチャーター
包括旅行チャーター…地上部分におけるツアー等(宿泊施設、運輸機関等の手配等)とチャーター便による航空運送を組み合わせたチャーター
フォワーダーチャーター…航空貨物利用運送事業者(フォワーダー)が用機するチャーター

②2030年前後 国際定期便の解禁

国際チャーター便が解禁された約5年後の2030年前後には、国際定期便の受け入れが解禁されます。本格的な国際化を迎えるのはこの時期と言えるでしょう。(就航時期に2030年前後と幅を持たせているのは、関西空港における航空需要の回復状況を見極める為です。需要動向によって神戸空港における国際定期便の就航時期は2030年以前となる可能性もあれば、2030年以降となる可能性もあるとされています。)

ここまでご紹介したように、神戸空港は国際化への非常に高いポテンシャルを有しています。そのため、関西空港への影響を最小限とすることを目的に、神戸空港における国際定期便の最大発着回数は1日40便(20往復)に制限されます。

国際チャーター便を解禁した後、国際定期便を解禁するという流れは、羽田空港の再国際化においても見られたプロセスで、神戸空港も同様のプロセスを踏むことになります。

【参考】国際化に向けた詳細スケジュール

2022年9月第12回関西3空港懇談会で神戸空港の国際化が正式決定
2022年10月空港等の変更許可申請(神戸市)
2023年1月空港基本施設(エプロン西側拡張部分) 整備事業者の公募開始
2023年2月サブターミナル 整備事業者の公募開始
2023年3月空港等の変更許可申請の許可(航空局)
2023年4月サブターミナル 整備事業者の入札・開札
2023年5月サブターミナル 整備事業者の契約・工事着手
2023年度
 ~2024年度
サブターミナル 周辺道路・駐車場・構内道路整備
空港基本施設(エプロン西側拡張部分) 供用開始
2025年3月サブターミナル供用開始
国内線発着枠の拡大(1日40往復→60往復)
2025年4月国際チャーター便の就航解禁
大阪・関西万博開催(2025年4月~10月)
2025年
 ~2030年前後
メインターミナル 整備
空港基本施設(エプロン東側の拡張部分) 整備
2030年前後メインターミナル供用開始
国際定期便の就航解禁(1日最大20往復)
大阪夢洲でIR開業
神戸空港の国際化に向けたスケジュール

国際化に向けた新たな施設整備

サブターミナルの外観イメージ(出典:神戸市資料)

神戸空港は国内線1日30往復という便数制限を課されて開港を迎えました。そのため、ターミナルビルなどのキャパシティはこれを前提に設計されており、開港当初より発着便数が増加した現在では、既に処理能力が限界を迎えています。

このことから、今後予定されている「国際線の就航」ならびに「国内線の増便」にあたっては、以下のように新たな施設整備・インフラ整備が予定・検討されています。

施設・事業規模・概要想定事業費
空港基本施設駐機場のスポット数を10→21に増設
(空港用地は約11ha拡張)
航空灯火等の整備
約100億円
(約1/2は国庫補助)
付帯工事駐車場・構内道路等の整備約33億円
サブターミナル約18,700㎡(延床面積)約150億円
メインターミナル詳細未定未定
空港連絡橋拡幅片側1車線→片側2車線へ約25億円
生田川右岸線拡幅
新神戸トンネル南伸
片側2車線→片側3車線へ
新神戸トンネルと港島トンネルの直結
鉄道アクセス新線
(需要調査)
新神戸・三宮・神戸空港を結ぶ新たな交通機関の検討
駐機場とサブターミナルの配置図(出典:神戸市資料)

このうち、サブターミナルは2025年までの整備を目指しており、完成後は国内線と国際チャーター便の受け入れに利用されます。また、サブターミナルの整備後、現ターミナルビルの位置に新たなメインターミナルを整備し、国内線と2030年前後に就航予定の国際定期便を受け入れる計画となっています。

諸施設の整備に係る事業費は、市債・一般財源による調達のほか、駐車場使用料・空港施設利用料・民間事業者からの賃料によって賄う予定です。

また、これらのハード面の整備に加え、ソフト面の取り組みとして空港の発着容量を拡張するための飛行経路の見直しも国土交通省において進められています。

需要予測・想定される就航路線

①需要予測

各主要空港と神戸空港における国際線運航便数の比較

神戸市は国際化・発着枠の拡大にあたり、新たな需要予想を公表しています。これによると、国際定期便が就航する2030年前後における需要予測は、国内線・国際線あわせて約700万人とされており、特に国際線は東アジア・東南アジアを中心として約190万人の需要が見込まれています。

この国際線の需要予想は、今般の関西3空港懇談会で合意された「神戸空港における国際線の最大発着回数は40便(20往復便)」という数字に基づきます。しかし、この発着回数は関西空港発着の国際線発着回数の約1割に過ぎず、また関西エリアを目的地とする旺盛なインバウンド需要を勘案すると、神戸空港発着の国際線需要は1日40便を超える事は明白です。そのため、将来的に神戸空港における国際線発着枠が引き上げられれば、更なる利用者の増加が見込まれます。

②想定される就航路線

具体的な就航路線は、航空会社の経営判断に左右されるため、あくまでも推測にすぎませんが、中国・韓国・台湾などインバウンド需要が旺盛なアジア路線に加え、後背地人口が多いという神戸空港の強みを生かしたハワイ・グアムなど日本からのアウトバウンド需要が想定される路線の就航が見込まれます。加えて、同様の理由から、旅行客をメインターゲットとするローコストキャリア(LCC)だけでなく、ビジネス客をターゲットとしたフルサービスキャリア(FSC)の就航も期待されています。

また、神戸空港はスカイマーク・ソラシドエア・エアドゥなど中堅航空会社(MCC)の拠点としても機能しています。これらMCC各社は、将来的な国際線進出に意欲を見せていますが、羽田空港の国際線発着枠は参入の余地がありません。そのため、MCC各社は首都圏に次ぐ航空需要を有する関西圏を手始めに国際線に参入することも十分考えられ、その場合は神戸空港がMCC各社の国際線発着拠点として機能する可能性もあります。

神戸空港を西日本の拠点としているスカイマークは、神戸空港発着の国際線としてサイパン便・パラオ便を候補に挙げているほか、関西エアポートの山谷社長は、神戸周辺にインド出身の居住者が多い事を念頭に「インド便の就航を期待」していると過去のマスコミの取材に答えています。そのため、神戸空港の国際線は、他の地方空港とは異なった路線展開となる可能性が高いと言えるでしょう。

※現在、スカイマークは新型コロナウイルスの影響で国際線を全便運休しています。また、再開にあたっては、国際線の展開を大幅に見直すとしており、現時点ではサイパン・パラオへの就航が実現するかどうかは不透明です。

国際化への課題・求められる絵姿

前述のように、神戸空港は様々な制約の下で運用されてきたため、国際化にあたってはハード面での施設増強が必要になるほか、関西空港を「補完」するためにこれまでと違った取り組みが求められます。

冒頭で紹介した「神戸空港の国際化に期待される役割」を念頭に、具体的な課題・求められる絵姿を整理してみましょう。

①多様な国際路線の誘致

神戸空港の国際化は「関西空港を補完」することが求められています。これは即ち、パイの奪い合いではない路線展開が求められているということを意味します。

関西空港で既に就航している路線のうち、アジア路線(韓国・台湾・中国など)の需要は非常に大きく、神戸空港と関西空港で同一路線が併存することは十分可能と考えられます。しかし、需要が細い路線では、関西空港から神戸空港へ単に路線が移転するといった可能性も考えられ、神戸空港の国際化にあたっては、関西空港に就航していない路線・航空会社の積極的な誘致が求められています。

また、神戸空港の滑走路長は2500mと、一般的な国際空港(滑走路長3000~4000m)と比べて短いことから、就航路線は近距離国際線に限られると報道されることがあります。しかし、航空機の離着陸性能は年々向上しており、最新の軽量機材(B787やA350など)を用いれば、実は神戸空港においても中距離以上の国際線の運航も可能となっています。

そのため、路線の誘致にあたっては、近距離国際線に限定することなく、各航空会社が保有する機材を念頭に置きながら、幅広い可能性を探っていくことが肝心です。

②際内ハブ機能の発揮

神戸空港は主要空港に次ぐ規模の国内路線網を有しています。そのため、国内線と国際線の乗り継ぎ(際内ハブ)需要の取り込みも期待されます。

特に、東北・甲信越の多くの空港は、日本を代表する際内ハブ空港である羽田空港・成田空港への路線が就航していません。そのため、東北・甲信越方面の空港と結ばれている神戸空港が国際線の乗り継ぎ空港として機能する可能性も十分考えられるのです。

当面、神戸空港における国際線発着枠は1日20往復、国内線発着枠は1日60往復に制限されるため、際内乗り継ぎ需要は限定的です。しかしながら、将来的には運用拡大を経て、際内ハブ空港としての役割を発揮する可能性を秘めています。関西・中四国地方の航空需要のみに焦点を当てるのではなく、国内線の就航先と連携し、際内乗り継ぎ需要も積極的に取り込んでいく必要があると言えるでしょう。

③航空貨物の取り扱い再開

神戸空港の貨物ターミナルビル。駐機場の拡張に伴って撤去される予定である。

現在、神戸空港において航空貨物は取り扱われていません。この背景には、多くの国内路線網を持つ伊丹空港の存在と、就航機材の小型化で航空貨物の搭載が困難になっているという事情がありますが、国際化によってこの状況は大きく変わる可能性があります。

国際線では、旅客便であっても航空貨物の利益率が比較的大きく、貨物輸送の重要性が高いということに加え、近隣の伊丹空港では国際線が取り扱われていないことから、神戸空港を利用した航空貨物の取り扱いが再開する可能性が高いのです。

関西空港では、貨物便を運航するFedexが運航拠点を開設するなど、国際航空貨物の一大拠点が既に形成されています。しかし、神戸空港は神戸港・高速道路網に近接し、航空貨物・海上貨物・陸上貨物の積み替えも容易であるなど、関西空港には無い強みを有しています。また、神戸空港島には港湾運送大手の上組が保税蔵置場(輸入貨物の保管等に必要な場所)として指定された物流倉庫を既に有するなど、神戸空港での航空貨物の取り扱いには従来から大きな期待が寄せられています。

国際化に伴う駐機場の拡張用地を確保するため、現在の貨物ターミナルは撤去される予定ですが、神戸市は旅客便を利用した国際航空貨物については取り扱いを目指すとしています。今後、航空会社の意向・荷主のニーズ等を把握した上で、航空貨物を取り扱う新たな上屋の整備についても検討が必要です。

④アクセスの充実・改善

神戸空港と三宮を結んでいるポートライナー

近年、神戸空港と都心三宮を結ぶポートライナーの混雑が深刻化しており、この混雑解消が喫緊の課題となっています。神戸市は当面の対策として、三宮からポートアイランド・神戸空港方面にシャトルバスを運行するなど、混雑解消策を打ち出していますが、抜本的な解決には至っていないのが現状です。

現在、ポートライナーは既にラッシュ時間帯を中心に2分間隔で運行されており、これ以上の増発の余地が残されていません。そのため、1編成あたりの輸送力を増やすべく、8両編成化も検討されていますが、これには各駅のホーム延伸・橋脚の補強に多額の費用が掛かり、費用対効果に欠けるとされています。

今後、神戸空港の運用拡大によって、ポートライナーの混雑に拍車が掛かることは想像に難くありません。また、国際化にあたっては、広域からの集客・広域への送客がこれまで以上に重要となるため、空港と新神戸駅の直結・空港から神戸市外への直通アクセス(リムジンバスの路線網拡充・鉄道新線の検討等)の確保も求められています。

2023年度には、神戸空港と三宮・新神戸を結ぶ新たな鉄道路線の需要調査が実施されます。空港アクセスの改善は、費用面で非常に高いハードルが存在することは確かですが、将来を見据えた投資が求められています。

⑤楽しめる・足を運びたくなる空港に

中部国際空港では、B787の実機を展示した商業施設”FLIGHT OF DREAMS”が整備されている。神戸空港島にはエアバスヘリコプターズが進出していることから、エアバス社とタッグを組んだ商業施設を整備する事も一つの手である。

2022年9月、神戸空港にミニチュア作品を展示したミュージアム”MINIATURE LIFE × KOBE AIRPORT”がオープン。同ミュージアムは、世界的に有名なミニチュア写真作家・田中達也氏が手掛け、空港の展望デッキには写真映えを狙った巨大なブロッコリー像が設置されています。

神戸空港には、従来からこのような「楽しめる仕掛け・施設」が欠けており、「コンパクトさ」「都心近接の立地」以外に利用者を惹き付ける魅力が無い状態が続いていました。

今後のターミナルビルの再編にあたっては、例えば有馬温泉のPRも兼ねた温泉施設の整備、神戸ビーフや夜景を楽しめるレストランの整備など、「神戸を感じられる」「空港を楽しめる」「敢えて空港に足を運びたくなる」「関西3空港でここにしかない」といった施設作りが求められます。

関西3空港の中で、神戸空港を敢えて選択する動機を作り出すということは、関西空港との差別化に繋がり、インバウンドの誘客という点でも大きな力を発揮することになります。

⑥使い勝手・拡張性を考慮した設計に

サブターミナルと既存ターミナル間は連絡バスの運行等が想定されている。
(出典:神戸市資料)

近年、主要空港を中心にLCCターミナルが整備されています。しかし、メインターミナルから離れた不便さから利用客の評判は芳しくなく、LCCがLCCターミナルを利用せずに、敢えてメインターミナルを利用しているケースが増えているのです。

現在、神戸空港で計画されているサブターミナルビルは、既存のターミナルビルから離れた位置に整備されることになっています。そのため、各地で整備されたLCCターミナルと同様の事態が再現される可能性も否定できません。ターミナルビルの利便性は、空港自体の集客力にも大きな影響を与えます。サブターミナルの整備にあたってはポートライナーの延伸・各地直行のリムジンバスの運行・歩く歩道が整備された連絡通路の整備など、利用者の使い勝手に十分配慮した設計とすることが求められます。

また、今後のターミナルビルをはじめとする施設整備には、拡張性・キャパシティに余裕を持った設計も必要です。

神戸空港は「小さく生んで大きく育てる」というコンセプトで設計されたため、旅客数が開港当初より大幅に増加した今では、ターミナルビルのキャパシティ不足が問題となっています。今後、国際化と国内線発着枠の拡大により、旅客数は現在の倍以上となる約700万人に膨らむとされていますが、国際線の運航便数は将来的には更に増える可能性が高く、700万人を前提に設計すると将来的にキャパシティ不足に陥る可能性が高いのです。そのため、今後の施設整備にあたっては、キャパシティに余裕を持たせると共に、将来的な拡張性を考慮した設計が求められます。

⑦滑走路延伸の可能性検討

神戸空港に飛来した大型輸送機ベルーガ。貨物機であっても重量によっては2500m滑走路で運航可能である。

「①多様な国際路線の誘致」でも紹介したように、神戸空港の滑走路長は2500mと一般的な国際空港と比較して短い部類に入りますが、就航機材によっては中距離以上の国際線の運航も可能です。しかし、長距離国際線では貨客の搭載に重量制限が生じる可能性が高く、運用上の幅を広げるという意味でも将来的な滑走路の延伸については検討が必要です。

現在、神戸空港の滑走路は、RESA(滑走路端安全区域)と呼ばれる安全区域が基準の大きさを満たしていません。そのため、将来的には滑走路の改修が必要になることから、この改修に合わせて空港島を拡張し、安全区域の拡大と滑走路の延伸を同時に実現することも可能な状況にあります。

神戸空港は海上空港であるため、滑走路の延伸には新たな埋め立てが必要となるなど、他空港に比べて滑走路延伸のハードルは高いと言えます。しかし、将来的な国際化の幅を広げるという意味でも、滑走路の延伸については可能性を探っていく必要があると言えるでしょう。

⑧ビジネスジェットの拠点整備

現在、神戸空港においてビジネスジェットの受け入れ窓口となっているヒラタ学園神戸エアセンター

今回、神戸空港の国際化が合意されるにあたり、国際的な需要増加が見込まれるプライベートジェット(ビジネスジェット)の受け入れについても「今後一層の取り組みが必要」とされました。

都心に近接する立地と本来は24時間運用が可能という強みを持つ神戸空港は、ビジネスジェットの受け入れ拠点となるポテンシャルが非常に高いと言われています。しかし、国際定期便が無い現状では、CIQ(税関・出入国・検疫等の施設)は臨時的対応とならざるを得ず、その時間的制約(フライトプランの提出期限等)の多さから国際ビジネスジェットの受け入れは伸び悩んでいるのです。

今後、神戸空港において国際定期便の運用が開始されると、CIQは常設されることになるため、時間的な制約が解消する可能性が高く、ビジネスジェットの更なる受け入れが期待されます。神戸市も、ビジネスジェットの受け入れ拠点の整備に向け、サウンディング調査を実施しており、航空事業者・商社等からは拠点整備について前向きな意見が多数寄せられました。

首都圏の羽田空港・成田空港においては、ビジネスジェットの運航に制約が多いのが現状です。今後、神戸空港でビジネスジェットの受け入れ拠点が整備されれば、日本におけるビジネス・VIPの窓口となる可能性も十分考えられます。

⑨空港島内のインフラ整備

神戸空港旅客ターミナルビルと海上アクセスターミナルビルを結ぶ連絡通路のほか、空港島への宿泊施設の誘致等が検討されている。
(出典:神戸市資料)

神戸市は空港の機能強化に伴い、空港島の土地利用計画の見直しを予定しています。この見直しにあたっては、空港機能に関連する以下3点について具体的な検討が求められます。

まず1点目は、駐車場の改良です。近年、空港利用者向けの駐車場は、繁忙期を中心に満車となる事が多く、その際にはターミナルビルから離れた場所に臨時駐車場を開設するなど、利用者に大きな負担を強いています。駐車場の平面的な拡張は限界を迎えているため、今後の需要増加に備えるためには、立体駐車場の整備が不可欠です。

2点目は、ベイシャトル乗り場への動線改良です。現在、空港の旅客ターミナルビルからベイシャトル乗り場までは連絡通路が整備されておらず、旅客ターミナルビルから連絡バスでの移動が必要となっています。(島内道路を経由して徒歩で移動することも可能ですが、天候によっては徒歩での移動が困難となります。)今後、神戸空港が国際化するにあたっては、補完関係にある関西空港との連携強化に加え、ベイエリアの観光地・集客施設への船舶による送客が不可欠であり、ベイシャトル乗り場と旅客ターミナルビルを結ぶ動線への連絡通路の整備が望まれます。

3点目は、空港に直結した宿泊施設の整備です。空港の国際化により、客層の多様化・集客エリアの拡大が見込まれることから、空港利用者の宿泊需要の増加が予想されます。そのため、空港利用者をメインターゲットとした空港直結型の宿泊施設の誘致・整備が求められます。空港島という都心に近接した立地と眺望の良さを生かすことで、空港利用者以外の宿泊需要を創出することも可能と言えるでしょう。

神戸空港島では世界初となる水素の海上輸送基地が建設されるなど、サプライチェーンとしてのインフラ整備が進んでいます。今後、神戸港や神戸空港での水素利用に向けた基盤整備が進むと見られ、神戸空港島は次世代エネルギーの発信基地としても更なる発展が期待されています。

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