「深夜便はニーズがある。都市部に近い神戸空港が24時間化すれば、関西の窓口になる」スカイマークの佐山会長は、2018年の毎日新聞のインタビューでこのように強調した。神戸空港に就航する他社からも運用時間の規制に対する不満が多くあがっている。
何のための海上空港か?
神戸空港は騒音問題が発生しにくい海上空港であるにも関わらず、運用時間が24時間でないことに疑問を持つ方は多いだろう。この運用時間制限によって、神戸空港は本来の実力を十分に発揮できずにいるのは言うまでもない。
この運用時間の制限は、一昔前まで利用が低迷していた関西空港への配慮によって生まれた規制の一つである。
運用時間等の制約を受けにくい海上空港は、日本において5空港(長崎・関西国際・中部国際・神戸・北九州)しか存在しない。しかも、その2空港は関西に存在しているのである。運用上の自由度が高い海上空港が2つも存在しているにもかかわらず、そのメリットを敢えて生かさないという現状は、愚策と言うほかにあるだろうか。
スターフライヤーが拠点を神戸から北九州に移すことになったのも、神戸空港の24時間運用が認められなかった為だと言われている。詳細は以下の記事を参照されたい。
運用時間の延長に管制官の増員は必要か?
これまで、国交省は「管制官の増員が必要になる」などと理由を付けて、神戸空港の運用時間の延長に関して難色を示してきた。この「管制官の増員」には予算措置が必要になるなど、一定のハードルが存在するという事情は間違ってはいない。しかしながら、空港の運用時間延長というのは、実は管制官の増員が必須というわけではないのだ。
上の画像を見て頂きたい。これは神戸空港と同じ海上空港である北九州空港のアプローチチャートの一部を切り取ったものである。右上の赤枠で囲った無線のコールサインが、時間帯で分けられていることがお分かり頂けるだろう。
実は、深夜・早朝に管制官を配置しないリモート空港として運用すれば、管制官の増員は不要なのだ。北九州空港は、日中時間帯は管制官が空港で管制を行っているが、深夜・早朝は福岡にある飛行援助センターによって遠隔管制を受けており、管制官は不在となっている。そのため、日中と深夜・早朝時間帯で管制機関を呼び出すコールサインが異なるのである。
ただし、リモート運用は空港周辺に入域できる航空機が1機に制限されるなど、管制官による飛行場管制を受ける場合に比べて、運用上の制約が多いことも確かである。多くの便を捌くためには、やはり管制官の配置が必要であり、今後一層の活用が見込まれる神戸空港のリモート運用は一部時間帯であっても不適であるとも言える。
神戸市は、運用時間延長に係る経費を市が負担するとまで国交省に再三打診してきたが、国交省は神戸空港の運用時間延長には及び腰の姿勢を貫いている。この事からも分かるように「管制官の増員が必要になる」というのは建前であり、実は「関西空港への配慮」という本音が存在しているのである。
国際化を視野に24時間運用の実現を
2019年に開催された関西3空港懇談会では、神戸空港の運用時間について1時間のみ延長することが合意された。
この合意を受け、国交省は2020年度の予算編成要求に神戸空港の管制官増員等に係る費用約3,000万円を計上。これによって、神戸空港で管制官・航空管制技術官など6名が増員となり、2020年3月29日から神戸空港の運用時間は1時間延長(7:00~22:00→7:00~23:00)されている。
国内空港の大半は24時間運用ではなく、国内線の運航において24時間運用の必要性は高くない。そのため、神戸空港が国内線のみの運用に留まっている間は、航空会社からの要望が多い6時~24時頃の運用で十分とも言える。しかしながら、国際線の運航となると深夜・早朝時間帯のニーズが高い事から、24時間運用への議論は避けて通れないのだ。
今後、神戸空港は国際化に向けて準備が始まることになる。地域対立・感情論を脱して、神戸空港の運用規制を撤廃していくことができるのか、関西全体の協調性が問われている。