どこを飛んでいる?関西3空港の飛行経路を解説!

関西3空港の出発・到着経路
(風向等によって使用滑走路が変わるため、線で示した全ての経路を同時に使用する訳ではない。)

関西では狭い地域に3空港が密集していることから、各空港の飛行経路も複雑に入り組んでいます。そのため、複数空港の発着便を一元的に管制できる環境も全国に先駆けて整備されました。

ここでは、伊丹・関西・神戸発着便の出発・到着経路を個別にご紹介します。

伊丹空港発着便の飛行経路

伊丹空港の出発・到着経路

伊丹空港は、関西3空港で唯一の内陸空港であり、陸域を含め関西の空全体に出発経路・到着経路が設定されています。

空港北側には北摂山系・六甲山系が迫っているため、北方向への出発経路・北方向からの到着経路は設定されていません。そのため、南~東寄りの強風が吹いている場合には周回進入が実施され、滑走路を回り込むような経路を取って着陸します。

出発経路

  • 北海道・東北方面へ:離陸後は東へ向かい、滋賀県南部付近で北東へ向かう。
  • 北部九州方面へ:離陸後は南へ向かい、大阪湾方面で高度を上げた後、神戸市方面へ変針。その後再び変針し、瀬戸内海上空を飛行して西へ向かう。
  • 山陰方面へ:離陸後は南へ向かい、大阪湾方面で高度を上げた後、神戸市方面へ変針。そのまま兵庫県上空を飛行して北西へ向かう。
  • 南部九州・四国・南西諸島方面へ:離陸後は南へ向かい、大阪湾方面で高度を上げた後、神戸市方面へ変針。その後再び変針し、淡路島上空を飛行して南西へ向かう。
  • 成田・羽田方面へ:離陸後は東へ向かう。
伊丹空港RWY32L/Rの出発経路詳細図(出典:航空路誌)

また、空港周辺地域への騒音低減のため、空港周辺の離陸経路に関しては以下のような制限が定められています。

騒音軽減運航方式
  • RWY32L/R使用時(北方向への離陸):離陸後の左旋回中、中国自動車道・武庫川・瑞ケ池・昆陽池で囲まれるエリアを逸脱しない事。
  • RWY14L/R使用時(南方向への離陸):離陸後、阪神高速道路を超えるまで旋回を開始しない事。

到着経路

  • 新千歳・函館・北西方面から:空港の北側から奈良市方向へ向かい、その後八尾市付近を経由して空港へ向かう。
  • 北海道(新千歳・函館を除く)・東北・東方面から:空港の南東から八尾市付近を経由して空港へ向かう。
  • 西・南西方面から:和歌山市付近から北東に向かい、八尾市付近を経由して空港へ向かう。

関西空港発着便の飛行経路

関西空港は、開港までの歴史的経緯から周辺地域への騒音に配慮し、出発経路・到着経路ともに大部分が海上に設定されています。

これらの経路は一部陸域にも及びますが、関西空港発着便は一定高度以下で陸域を飛行することが出来ません。そのため、出発機・到着機ともに陸域を飛行する際の高度制限が定められているほか、滑走路の使用方向によって到着機は大阪湾を一周するような経路を使用するのが特徴です。

沖縄・南部九州方面への出発経路。淡路島手前で8,000ft以上の高度制限が付加されている。
(出典:航空路誌)

出発経路

  • アジア・中東・ヨーロッパ・北部九州方面へ:離陸後は明石海峡へ向かい、瀬戸内海上空を飛行して西へ向かう。
  • ヨーロッパ・北アメリカ東部・新千歳方面へ:離陸後は大阪湾で旋回した後、大阪市・南港付近から北東へ向かう。
  • 沖縄・南部九州方面へ:離陸後は淡路島北部付近へ向かい、瀬戸内海上空を飛行して南西へ向かう。
  • アジア・北アメリカ・ハワイ・南太平洋・オーストラリア・成田方面へ:離陸後は紀淡海峡方面へ向かう。
  • 北海道(新千歳を除く)・東北・羽田方面へ:離陸後は大阪湾で旋回した後、関西空港上空を飛行して北東へ向かう。

到着経路

  • 太平洋・南・東方面から:紀伊水道から北上し、南あわじ市付近または紀淡海峡を経由して空港へ向かう。
  • 北西・北東方面(新潟・新千歳など)から:岡山県付近から南下し、瀬戸内海上空を飛行して、南あわじ市付近または紀淡海峡を経由して空港へ向かう。
  • 西方面(福岡・長崎など)から:鳴門市付近から南あわじ市付近または紀淡海峡を経由して空港へ向かう。
  • 南西方面(鹿児島・那覇・石垣など)から:徳島県南部付近から南あわじ市付近または紀淡海峡を経由して空港へ向かう。
  • 羽田・成田・仙台方面から:和歌山市付近から南あわじ市付近または紀淡海峡を経由して空港へ向かう。
使用滑走路毎の進入経路
  • RWY06L/R使用時(北東方向への着陸):紀淡海峡を経由し、空港へ向かう。
  • RWY24L/R使用時(南西方向への着陸):南あわじ市付近・神戸空港沖・南港沖を経由し、空港へ向かう。

神戸空港発着便の飛行経路

神戸空港の出発・到着経路

神戸空港発着便は伊丹空港・関西空港の飛行経路との競合を避けるため、明石海峡上空を通過するように出発経路・到着経路が設定されています。また、関西空港と同様に神戸空港発着便も陸域を一定高度以下で飛行することが出来ません。

伊丹空港と同様に、滑走路への進入経路は片側にしか設定されていないため、西寄りの強風が吹いている場合には周回進入が実施されます。

出発経路

  • 東京方面、東北・北海道方面へ:離陸後は西へ向かい、加古川市付近から北西または北東へ向かう。
  • 北部九州方面へ:離陸後は西へ向かい、瀬戸内海上空を飛行して西へ向かう。
  • 南部九州、四国・南西諸島方面へ:離陸後は西へ向かい、明石海峡通過後に南西へ向かう。

到着経路

  • 東京、東北・北海道方面から:兵庫県中部付近から南下し、明石海峡を通過して空港へ向かう。
  • 九州・南西諸島方面から:鳴門市付近から北上し、明石海峡を通過して空港へ向かう。

待った無しの飛行経路の見直し議論!

今後は関西においても新しい飛行経路の検討が求められる

現在、関西空港ではA滑走路(陸側)を離陸用として、B滑走路(海側)を着陸用として運用しており、現時点ではこの運用方法が最も効率が良いとされています。

しかし、関西空港が有するオープンパラレル滑走路は、本来それぞれの滑走路で離着陸を同時に行う能力を有しており、実は宝の持ち腐れとも言うべき状態なのです。この背景には、関西新空港の建設に際し定められた取り決めの存在があります。

その取り決めは「関西新空港の飛行経路は海上に限定する」という内容で、現在も関西空港はこの合意文に縛られています。そのため、関西空港では各滑走路に対応した飛行経路の設計に制約があり、結果的に発着能力に限界を生じさせているのです。

羽田空港の新しい都心上空ルートが大きな議論を呼んだ事は記憶に新しいと思います。その後、この都心上空ルートは暫定運用を経て、正式運用が開始されました。一方、関西では既に伊丹空港発着便が陸上を飛行しているにも関わらず、「環境面への配慮」「地元との取り決め」等の理由から関西空港・神戸空港の飛行経路見直し議論を避け続けているのが現状です。

昨今では、航空機自体の性能が向上した事に加え、航空管制上も3空港は一元的に運用されています。関西・神戸発着便の陸上ルート解禁も含め、飛行経路を柔軟に見直す時期は既に迎えていると言えるでしょう。

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