現状・課題

神戸空港を西日本の拠点と位置付けるスカイマーク

就航路線

開港当初はANA・JAL・SKYの3社が就航

開港当初は、日本航空(JAL)・全日本空輸(ANA)・スカイマーク(SKY)の3社で7路線27往復便が運航されていた。

しかし、地方路線の搭乗率が伸び悩んだことから、JAL・ANAは神戸発着の地方路線を縮小。長年、新千歳・羽田・那覇線などの幹線が中心の路線網となっていた。

2010年には日本航空が経営再建を理由に神戸空港から撤退。2008年から神戸ー熊本線を運航していた天草エアライン(AMX)も搭乗率の伸び悩みを受け、同じく2010年に神戸空港から撤退している。

一方で、日本航空の撤退を機にスカイマークが神戸発着の路線網を拡大し、その後はソラシドエアとエアドゥの就航も続いた。また、慢性的な飽和状態にあった発着枠も2019年に拡大されたものの、フジドリームエアラインズの新規参入やスカイマークの増便により、発着枠は逼迫した状況が続いている。

2023年ウィンターダイヤ 往復数
  ANA SNJ ADO SKY FDA
羽田 2 6
新千歳 1 2 3
那覇 3 4
下地島 1
仙台 2
茨城 3
長崎 3
鹿児島 2
松本 2
高知 1
花巻 1※
青森 1※
35~37往復便
※2023年10月29日~11月30日・12月23日~2024年1月8日・2月16日~3月30日のみの運航
開港当初 往復数
  JAL ANA SKY
羽田 2 2 7
新千歳 2 2
那覇 2 1
仙台 1 1
新潟 2
熊本 1
鹿児島 2 2
27
かつて就航していた航空会社
 JAL・JEX・JTA(日本航空グループ) 
AMX(天草エアライン)
かつて就航していた路線
新潟・成田・米子・出雲・福岡・熊本・石垣・新石垣

運用実績

神戸空港 旅客数・搭乗率の推移

開港当初から神戸市が試算した需要予測を下回っているが、2007年度には297万人の利用があり、需要予測の約93%を達成している。

2008年度はスカイマークの乗組員不足による大幅欠航の影響、2009年度は景気の落ち込みや新型インフルエンザなどの影響、2010年度は神戸空港から日本航空が撤退した影響で、旅客数は2008年度から3年連続で減少傾向にあった。

しかし、2011年度はスカイマークの新規路線の開設などで旅客数は250万人台まで回復。2012・2013年度は関空に格安航空会社が就航した影響で旅客数は一時的に落ち込んだものの、2014年度以降は旅客数は再び回復傾向となり、2017年度から2019年度までの旅客数は3年連続で過去最高を記録した。

2020年度は新型コロナウイルスの影響で開港以来最悪の落ち込みを記録したが、その後は着実な回復を見せており、2022年度後半の単月(月次利用実績はコチラ)ではコロナ禍前の実績にほぼ回復。2025年以降の国際化を控え、更なる旅客数増加が見込まれている。

航空貨物に関しては、2014年3月末で全日空が取り扱いを終了したため、2014年度から貨物取扱量がゼロとなっている。

  旅客数(万人) 航空貨物量(万トン)
年度 旅客数 需要予測 貨物量 需要予測
2005 35 319 0.24 4.13
2006 274 2.6
2007 297 1.95
2008 258 2.06
2009 234 1.68
2010 222 403 0.97 5.05
2011 257 0.85
2012 241 0.76
2013 235 0.39
2014 244 0
2015 253 434 0 5.09
2016 272 0
2017 307 0
2018 319 (313) 319 (434) 0 -(5.09)
2019 329 (323) 348 (434) 0 -(5.09)
2020 121 (119) 376 (455) 0 -(5.27)
2021 175 (172) 289 394 (455) 0 -(5.27)
2022 311 (305) 376 394 (455) 0 -(5.27)
2023 354 377
2024 376
2025 395

※数値は四捨五入
※2005年度は2月16日~3月31日
※2018年度以降の実績・需要予測は、関西エアポート神戸(株)の発表値を記載。カッコ内は神戸市発表の実績値と従来からの需要予測。(実績値に相違があるのは、実績の集計方法が神戸市と関西エアポートで異なるため。)

 

航空各社の動き

フジドリームエアラインズ新規就航

神戸空港を関西の拠点に選んだFDA
神戸空港のFDAカウンター

2019年7月、富士山静岡空港・名古屋小牧空港を拠点に運航するフジドリームエアラインズが、神戸空港への新規就航を発表。2019年10月から松本・出雲線、同年12月から高知線、2020年3月から青森線を次々に就航させた。いずれの路線もJALとコードシェアを実施するため、間接的にではあるがJAL便名の神戸発着路線が復活することとなった。

また、スカイマーク同様に神戸を「西日本の拠点(ハブ)として育てたい」としており、今後の路線展開として札幌丘珠空港や東北地方への新規就航を示唆している。

同社は、2015年7月~8月にかけて神戸と丘珠空港(5往復)・稚内空港(5往復)・中標津空港(1往復)・青森空港(1往復)とを結ぶ団体向けチャーター便(計7往復)を運航するなど、関西圏への定期便就航の布石を打っていた。しかしながら、関西圏において伊丹・神戸は発着枠が満杯であったために、定期便は長らく実現せず、神戸空港の規制緩和を機に関西圏への進出が実現することとなった。

フジドリームエアラインズは関西空港にも参入余地があったものの、敢えて神戸空港の規制緩和を待って、スカイマーク同様に神戸を関西圏の拠点に選んだ。この事実は、神戸の利便性・将来性を高く評価した結果であり、今後の規制緩和の議論にも大きな影響を与えると言えるだろう。

スカイマーク経営破綻

神戸空港を西日本の拠点と位置付けるスカイマーク
神戸空港のスカイマーク格納庫

2015年1月28日、航空3位のスカイマークは民事再生法の適用を申請し、経営破綻した。

経営再建に伴うスポンサー争いは米デルタとANAの一騎打ちとなり、最終的にANAに決定することとなった。経営立て直しの一環として、神戸発着路線を中心にANAとの共同運航が行われる見込みであったが、経営独立性維持の観点や搭乗率が比較的高水準で推移していることから交渉は難航。結果的に共同運航には至らず、2016年3月をもってスカイマークの民事再生手続きは終了した。

エアドゥ・ソラシドエア新規就航

新千歳線を運航するエアドゥ
那覇線を運航するソラシドエア

2013年6月1日からソラシドエアの神戸-那覇線、同月21日からエアドゥの神戸-新千歳線が就航した。

ソラシドエアは神戸-那覇線の需要動向を見極めた上で、九州各地との路線開設を目指すことを表明しており、今後はソラシドエアによる九州路線、エアドゥによる北海道・東北路線の新規開設が期待される。

両社の新規就航で、ANAの新千歳線は減便、那覇線は休止となり、両社との共同運航が開始された。

日本航空撤退

かつて神戸空港にあったJALカウンター
JAL最終便の見送り

2010年5月31日をもって経営再建中の日本航空が神戸空港から姿を消した。

日本航空の神戸発着路線は、全国的に見ると搭乗率も高く、年間旅客数も約90万人にのぼる比較的大きな拠点であった。そのため、神戸発着路線が実際に採算割れとなっていたかは疑問であるが、経営効率化という建前のもと、神戸空港から同社は完全撤退することとなった。

その後、神戸市はたびたび日本航空に再就航を働きかけているが、発着枠に空きが無いことから難色を示されている。運用規制の緩和は、日本航空再就航への最低限の条件だと言えるだろう。

また、一方で日本航空の撤退で空いた発着枠を利用し、スカイマークは神戸発着路線を大幅に拡大。西日本の拠点空港としての地位を確立する契機にもなった。

土地利用計画

神戸市航空機動隊・兵庫県航空防災隊 格納庫
エアバスヘリコプターズジャパン 神戸空港事業所

空港島の造成は当初予定の2007年から約6年遅れて、2013年12月に竣工。空港島の空港施設用地以外は民間への分譲地として整備されたものの、計画通りには売却が進んでいない。

しかし、未売却の土地は、神戸空港の国際化に伴う空港機能の拡張用地として利用されるなど、国際化を機に土地利用の方針は変わりつつある。今後、神戸空港が国際化を迎えるにあたって、神戸市は空港島のビジョンを見直すとしており、商業施設・宿泊施設などの誘致も視野に入れる方針である。

現時点で売却済の用地(一部賃貸も含む)は以下の通り。

企業名用地名面積備考
ワールドブライダル緑地約0.5ha結婚式場「ラヴィマーナ神戸」
2014年、隣接地約0.15haを取得。同年10月、拡張部開業。
上組物流関連用地約1.6ha保税倉庫「上組神戸空港島ロジスティックセンター」
上組物流関連用地約2.7ha保税・定温倉庫「上組神戸空港島第2ロジスティックセンター」
2014年11月竣工。
トヨタレンタリース兵庫
トヨタレンタリース神戸
Fレンタカー兵庫
業務施設用地約0.4haレンタカー店舗として開港当初から3社が進出。
2012年、Fレンタカー兵庫が隣接地約0.05haを取得・拡張。
学校法人ヒラタ学園空港島関連用地約2ha操縦士や整備士の育成などを行う「神戸エアセンター」
2009年7月完成、2018年4月運用開始。
神戸市航空機動隊
兵庫県航空防災隊
空港島関連用地約1.7haポートアイランドから神戸ヘリポートを移転し、格納庫を整備。
2017年度着工、2018年4月運用開始。
エアバスヘリコプターズジャパン空港島関連用地約2ha伊丹空港から移転し「神戸空港事業所」として開業。
ヘリコプターなどの機体整備やパイロットのSIM訓練を行う。2018年、隣接地約0.05haを取得。2020年1月竣工。
スカイマーク空港施設用地約0.5ha整備士の居室も備えた格納庫を新設。
制限区域内に新設されたため、土地は分譲ではなく賃借の形をとる。2011年11月竣工、2012年1月供用開始。
カツヤマキカイ物流関連用地約2.5ha西側区画(約0.4ha)に本社棟、東側区画(約1.35ha)に産業棟を新設。
2020年、本社棟隣接地約1.1haを取得し工場を新設。2021年1月竣工。
川崎重工物流関連用地約1.0ha水素サプライチェーンの実証実験のため、液化水素を積み下ろす装置や貯蔵タンクを建設。
神戸市が隣接する岸壁を整備、用地は賃貸の形をとる。2020年6月運転開始。
神戸空港島進出企業一覧
神戸空港島区画図(出典:神戸市)

管理収支

神戸空港は「市税を一切投入しない」という公約を掲げ開港を迎えたため、「空港運営によって生まれた黒字額を空港建設費の償還に充てる」という全国でも異例となる収支計画が立てられている。実際に基本的収支は開港以来黒字が続いており、この黒字額によって空港建設費の返済(市債の償還)が行われてきた。

しかし、この収支計画は「各航空会社が機材を段階的に大型化していく」との前提で立てられていたため、全国的・世界的に主流となりつつあった「小型機・多頻度運航」の流れを受け、当初の計画通りには市債償還は進んでいない。そのため、開港4年以降は黒字の積立金を切り崩し、2011年度から2017年度かけては約27億8千万円の資金を新都市整備事業会計から借り入れている。

2018年度には神戸空港は民営化を迎え、関西エアポート神戸による運営が開始された。同社は42年間にわたり空港施設・旅客ターミナル等を一体的に運営。その対価として191億円4千万円(アップフロントフィー4億5000万円、アニュアルフィー4億4500万円×42年)と収益連動負担金(毎年度営業収益のうち20億円を超えた部分の3%)を神戸市に支払う契約となっており、神戸市はこの運営権収入を柱に市債の償還を続けている。

管理収支 見通し (単位:百万円)
  2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度
着陸料  779   1,220   1,305   1,592   1,667   1,667   1,701   1,721   1,735   1,754 
停留料  8   11   12   26   26   26   26   26   26   26 
土地使用料  37   37   37   37   41   41   41   41   41   44 
地方交付税  120   196   240   328   410   484   546   598   625   623 
県補助金  158   209   227   251   299   199   266   332   386   417 
航空機燃料譲渡税  84   187   199   213   222   222   226   228   230   232 
雑入等  1   1   1   1   1   1   1   1   1   1 
収入合計  1,187   1,861   2,021   2,448   2,666   2,640   2,807   2,947   3,044   3,097 
 
管理経費等  739   739   739   739   739   739   739   739   739   739 
消費税  –   24   48   52   67   72   70   72   73   74 
市債償還金  323   547   795   1,148   1,411   1,654   1,847   1,989   2,054   1,977 
予備費  10   10   10   10   10   10   10   10   10   10 
支出合計  1,072   1,320   1,592   1,949   2,227   2   2,666   2,810   2,876   2,800 
 
管理収支  115   541   429   499   439   165   141   137   168   297 
管理収支 決算値 (2017年度は予算値、単位:百万円)
  2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度
着陸料 (a)  899   899   738   675   606   732   736   698   647   928   738   755 
停留料 (b)  10   12   9   10   8   8   9   8   8   11   8   8 
土地使用料  45   45   45   44   44   75   84   84   83   83   84   83 
地方交付税  110   193   22   316   414   480   546   583   583   581   565   509 
県補助金  158   195   244   262   266   229   301   376   410   411   407   388 
航空機燃料譲渡税  197   195   182   187   184   164   178   171   337   454   475   350 
雑入等  74   15   149   233   442   495   529   579   454   304   415   515 
収入合計  1,493   1,554   1,599   1,727   1,964   2,183   2,383   2,499   2,522   2,772   2,692   2,608 
 
管理経費等 (c)   727   754   650   630   573   595   600   606   651   728   897   1,066 
消費税  –   –   44   25   22   21   24   32   27   27   63   50 
市債償還金  288   501   732   1,072   1,369   1,567   1,759   1,861   1,844   1,811   1,732   1,482 
予備費  –   –   –   –   –   –   –   –   –   –   –   10 
支出合計  1,015   1,255   1,426   1,727   1,964   2,183   2,383   2,499   2,522   2,581   2,692   2,608 
 
基本収支(a)+(b)-(c)  182   157   97   55   41   145   145   100   4   211   -151   -303 
管理収支  478   299   173   –   –   –   –   –   –   191   –   – 
新都市会計借入金  –   –   –   –   –   186   526   577   452   302   221   513 
関西エアポート神戸(株)による収支計画 (単位:百万円)
  2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
  実績 計画 実績 計画 実績 計画 実績 計画 見込み 計画 実績 計画
営業収益 2,663  2,588  2,796  2,803  1,764 2,981  2,056 2,725 2,843 2,969 2,946
営業費用 2,158  2,380  2,423  2,318  1,901 2,528  1,765 2,347 2,363 2,430 2,493
営業利益 504  208  373  485  △137 453  291 378 479 539 454
経常利益 372  71  250  354  △258 321  237 247 354 495 327
当期純利益 322  49  172  245  △186 223  159 171 171 344 227
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