再び議論を生む伊丹空港の”門限”!異例となる欠航多発の原因は風!?

関西における国内線基幹空港である伊丹空港

8月6日の夜、伊丹空港発着便が多数欠航する事態が発生した。欠航となった便以外にも、駐機場へ引き返した便や目的地が変更となった便もあり、計1,000人以上が影響を受けたとみられる。

背景にあるのは伊丹空港の”門限”と、運悪く重なった悪条件の「風」である。

目次

例外もあるが…

伊丹空港は住宅地に近接することから、深夜早朝の騒音を抑えることを目的に、運用時間が厳しく制限されている。現在、同空港の運用時間は午前7時~午後9時(15時間)とされており、この時間外の離着陸は基本的に許可されていないのだ。

だが、運用時間外で離着陸が認められているケースがある。それは以下のようなケースである。

運用時間外の離着陸が許可される例外ケース

・警察・報道関係や臓器搬送のための小型機やヘリコプターで緊急時における運航
・悪天候やその他理由

このうち、「悪天候」によって遅延が発生しているような場合には、航空会社からの申請等によって運用時間が延長され、午後9時以降の着陸が受け入れられることもある。

しかし、この「悪天候による遅延」によって運用時間の延長が許可されるには、細かい要件が存在。機材繰りなど航空会社都合による遅延等は運用時間延長の要件としては認められない。(ちなみに、運用時間の延長が認められる詳細要件に関しては、公には公開されていない。)

また、門限設定の背景から、際限無く運用時間が延長されることもないため、伊丹発着便の遅延は航空会社にとって非常にシビアな問題なのだ。

具体策に乏しい門限見直し議論

最近では、福岡空港でも門限を理由とする引き返しが発生し、大きなニュースとなった。このような空港の”門限”について、航空機の騒音が年々減少していることを理由に、柔軟な取り扱いを求める声が全国的に上がっている。

伊丹空港の「門限」に関しても、その見直しについて全く議論されていないという訳ではない。運用時間自体を拡大する事は比較的ハードルが高いため、遅延便等の受け入れについては柔軟に対応する方向で議論が続けられているのだ。

以下は第9回の関西3空港懇談会の取りまとめ文章のうち伊丹空港について触れられた部分の抜粋である。(具体的な方針は示されていないものの、長年にわたり課題として取り上げられている。)

(前略)近年、悪天候等により、運用時間外の発着便やダイバート(代替着陸)便及び欠航便が発生している。今後は、関係者と連携して定時運航率の向上などに取り組み、周辺環境の改善への努力利用者利便の向上を図る。

関西3空港懇談会 取りまとめ(伊丹空港について)

先程挙げた「運用時間外で離着陸が認められているケース」も、これまで水面下で調整されてきた運用時間の弾力化の一環であるが、内容は十分とは言い難い。

遅延便の受け入れをはじめとした運用時間の弾力化運用は、伊丹空港と同様内陸にある成田空港でも行われているが、こちらは運用時間自体が伊丹空港より長く、発着便数についても伊丹空港を大きく引き離している。現時点では、伊丹空港の運用規制は日本一厳しいと言わざるを得ない状況が続いているのだ。

6日に発生した門限抵触の原因は『風』

伊丹空港北側には北摂山系・六甲山系が迫っており、北側には出発・到着経路が設定されていない

伊丹空港では、毎日午後7~8時頃に到着便のラッシュを迎えるため、この時間帯に到着する便は上空待機による遅延が恒常的に発生している。しかし、門限までには殆どの便が伊丹空港に着陸しており、欠航や目的地変更が日常的に発生している訳ではない。

では、6日はなぜ多数の欠航便・ダイバートが発生したのか。その原因は『風』にある。

関西3空港の飛行経路を解説!伊丹空港の雑学のページでも解説しているが、伊丹空港は計器進入経路がRWY32L/R側(北西方面への着陸)にしか設定されておらず、また北西方面への出発経路が設定されていない。

そのため、RWY14L/Rが運用(南東方向への離着陸)されると、離陸経路・着陸経路・着陸復行後の経路が対面・輻輳することになり、通常よりも管制間隔を広く取る必要が生じる。つまり、管制上の効率が著しく低下するのである。

このような事情から、伊丹空港では運航に支障とならない範囲でRWY32L/R(北西方向への離着陸)が優先的に運用されている。しかし、欠航便が多発した6日は、接近する台風の影響で東風が比較的強く吹いており、RWY32L/Rを使用すると飛行機の背風制限をオーバーする可能性があった。そのため、管制上非効率となるRWY14L/Rでの運用を余儀なくされたのである。

結果的に、夜間における到着便のラッシュを捌ききれなくなり、多数の欠航便・ダイバート(目的地変更)が発生することとなったのだ。(6日は新千歳空港周辺の悪天候により、全国的に運航ダイヤが乱れていたため、玉突き的な遅延の影響も少なからずあったとみられる。)

神戸でも求められる受け入れ体制

関西3空港から大阪駅への最終電車の比較

関西3空港から終電で大阪駅まで向かった場合、最も遅い終電を利用出来るのは実は神戸空港である。神戸空港は阪神間はもちろん大阪北部方面へのアクセスに優れた立地にあり、伊丹空港を補完する役割が従来から謳われている。

また、神戸空港は新幹線駅へのアクセスも優れているため、過去には広島空港行きのダイバート(視界不良による目的地変更)等も受け入れている。しかし、伊丹空港の門限超過によるダイバート先としては、ほぼ選定されていないのが現状である。

これは、神戸での航空会社の地上ハンドリング体制に余裕が無いことが大きな要因である。しかし、もう一つの要因としては、ハード面での逼迫が挙げられる。

朝晩の時間帯は夜間駐機機材でスポットはほぼ満杯となる

現在、神戸空港では朝晩時間帯にスポットがほぼ満杯となっており、夜間のダイバート便の受け入れは困難な状況なのだ。もちろん、ハード面で余裕があったとしても、ダイバート先として選定するかは航空会社の判断であるが、今後神戸空港の機能強化を行うにあたっては、いつでも伊丹空港を補完できるように余裕を持ったハード整備を進めなければならない。

また、関西空港への利用者誘導を図るため、神戸空港における運用時間の見直し議論は停滞したままである。国際化にあたっては、深夜早朝運用は非常に有効であり、神戸空港の運用時間の見直し議論も今後更に進めていかなければならない。

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