
今年4月から国際線の運用が始まった神戸空港で、6月12日よりCIQ体制が一部変更される事が分かった。変更となるのは、出入国管理と植物検疫に関する機関の体制で、これまで出張体制であったものが常駐体制に変更される。これは、全国的に見ても異例の運航便数となっている国際チャーター便の運用実態を踏まえた対応で、国際チャーター便の増便や将来的な国際定期便の就航へ向け、神戸空港では今後もCIQ体制の強化が続くとみられる。
実態と乖離した「チャーター」運航
神戸空港 | |
---|---|
空港 運用時間 | 7時~23時 |
税関 | 出張体制 |
出入国管理 | 出張体制 →8時30分~19時30分(6/12~) |
検疫 | (人間)出張体制 (動物)出張体制 (植物)出張体制 →9時~19時(6/12~) |
岡山空港 | |
---|---|
空港 運用時間 | 7時~22時 |
税関 | 7時30分~21時30分 |
出入国管理 | 国際定期便運航時間のみ |
検疫 | (人間)8時30分~21時30分 (動物)8時30分~17時 (植物)国際定期便運航時間のみ |
広島空港 | |
---|---|
空港 運用時間 | 7時30分~22時30分 |
税関 | 7時30分~21時30分 |
出入国管理 | 7時30分~22時30分 |
検疫 | (人間)8時30分~21時15分 (動物)8時30分~21時30分 (植物)8時30分~21時30分 |
神戸空港では、4月の国際化を機にCIQ(税関・出入国管理・検疫)の事務所が開設されているが、各機関はこれまで出張体制としてきた。その理由は、国際線の運航形態が「国際チャーター便」である為だ。基本的に「国際チャーター便」は不定期運航であることから、「国際チャーター便」のみが運航されている空港では、CIQ各機関が臨時的に対応する出張体制が一般的となっている。神戸空港でも、CIQ各機関はこの原則に則って神戸空港の事務所を出張体制として設置・運営してきたのである。
だが、現在神戸空港で運航されている国際線は、大半が「定期」チャーター便であり、運航便数も週40便に上っている。これは過去の記事でも紹介しているように、国際定期便が運航されている殆どの地方空港を大きく上回る規模である。事実上、定期便と変わらない運用となっており、CIQ各機関も毎日「出張体制」を敷くという実態とかけ離れた運用となっていたのだ。
現在、神戸空港で運用可能な国際線は「国際チャーター便」に限定されている。これは、関西3空港懇談会で合意された運用規制に縛られている為であり、航空各社としては神戸から「国際定期便」を飛ばしたいというのが本音である。当サイトで再三指摘しているように、運用規制が利用者や航空会社の声・需要から乖離している事は明白であり、その歪みが「定期チャーター便」という運航形態に現れているのだ。CIQ各機関もこの実情を捉え、今後は実態に則した運営体制を構築していかなければならない。
求められるCIQ体制の更なる拡充

国際チャーター便の影に隠れて報道されることは少ないが、神戸空港では国際ビジネスジェットの受け入れも伸び悩みが続いている。その一因となっているのが、「CIQの受け入れ体制」である。CIQ各機関が臨時対応(出張対応)となっているため、利用申請の締め切りが早く、国際ビジネスジェットを柔軟に運航できる環境が整っていないのだ。神戸空港は都心近接空港であり、本来はビジネスジェットとの相性は良いはずである。CIQ機関の受け入れ体制の拡充は、国際ビジネスジェットの運航環境を整えるという意味でも不可欠なのだ。
ちなみに、これから常駐化が始まる出入国管理・植物検疫の体制であるが、受け入れ時間に関しては出入国管理が8時30分~19時30分、植物検疫が9時~19時となっており、神戸空港の運用時間(7~23時)を加味すると決して十分な体制とは言えない。また、今回体制変更とならなかった税関や動物検疫・人間検疫については、このまま形式上の「出張体制」を続けるのかは現時点では定かではない。だが、今後の国際チャーター便の増便や将来的な国際定期便の受け入れを考慮すると、遅かれ早かれ常駐体制への移行が求められているのは確かである。
神戸空港では、国際化に際して20社ほどの就航オファーが寄せられ、その殆どを断っていたことが明らかとなっている。その背景には、空港施設などのハード面のほか、CIQ各機関の受け入れ体制などソフト面の不足があったとみられ、これらの拡充は急務である。今回のCIQ体制の変更は、あくまで「形式上」の変更であり、今後は国際線の受け入れ時間・便数の拡大に向け、各CIQ機関の人員拡充など抜本的な体制強化を期待したい。

