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神戸空港、アクセス新線の調査に着手!消えた阪急・地下鉄乗り入れ構想再浮上なるか!?

現在、神戸空港の鉄道アクセスを担っているポートライナー

神戸市は、神戸空港と都心を結ぶ新たな地下鉄新線について、2023年にも需要調査を実施する見込みであると神戸新聞が報じた

神戸空港は2025年から段階的な国際化が予定されており、今後の旅客数増加に備えるため空港アクセスの抜本的な強化が課題となっている。神戸市は、バス運行の増強・ポートライナーの改修も選択肢に入れ、新線建設の可能性を見極める方針だ。

深刻さを増すポートライナーの大混雑

近年、神戸空港への鉄道アクセスを担っているポートライナーの混雑が大きな問題となっている。これは、神戸空港の旅客数が増加していることに加え、ポートアイランドに進出する企業・大学が増加していることが根底にある。

混雑が目立つのは朝夕ラッシュ時間帯が中心で、この時間帯の運行間隔は2分間隔である。しかし、それでも混雑率は相当なものであり、今後の利用者増加には対応できない状況が続いているのだ。

ちなみに、昼間の輸送力は比較的余裕があるため、神戸市は「現時点でトータルの輸送力は不足しているわけではない」としているが、人の混雑状況だけでは過不足を計ることは出来ない。空港利用者は、大きなスーツケースと共に移動しているためである。(特に国際線の利用者は顕著である。)

当然、人がただ単に「乗れる」だけでは不十分で、大型荷物を置けるスペースもなく、ラッシュ時には肩が触れあう程の混雑を呈しているようでは、空港アクセスとしては既にパンクしていると言わざるを得ない。

費用対効果に乏しいポートライナーの改修

ポートライナーの混雑解消策として一時期検討されていたのが「8両化」である。現在、ポートライナーは6両編成で運行されているが、これに2両を増結し8両編成にすることで約3割の輸送力を増強しようとするものであった。

最良の選択肢かのように思われる「8両化」案であったが、実は各駅のホーム延伸・改修や橋脚の補強などに数百億円単位の投資が必要となる。今後更に乗客数が増加した場合に輸送力が不足する可能性もあり、費用対効果の面で最良の選択肢とは言えず、8両化の検討は停滞したままとなっているのだ。

また、後述する広域アクセスの向上策として、ポートライナーの新神戸駅への延伸も多方面から提案が上がっている。しかし、これには軌道の新設・三宮駅の軌道構造の大改修を伴うほか、新神戸ー三宮を結ぶ地下鉄との競合による採算性から久元神戸市長は否定的な見方を示してきた。

進まないバスへの利用者誘導

新神戸・三宮・神戸空港を結んでいる神姫バス。着席できるのがメリットである。

神戸市はポートライナーの混雑解消を目的に、ポートアイランド・神戸空港と都心を結ぶバスも運行(運行は神姫バスが担当)している。しかし、バスへの利用者誘導は進んでいないのが現状である。これには、本数も多く所要時間の短いポートライナーの利便性にバスが太刀打ちできていないという事が背景にあると考えられる。

現状、ポートライナーが三宮と神戸空港を18分で結んでいるのに対し、シャトルバスの所要時間は18~24分。運行便数に着目しても、シャトルバスは最多となる8時台で6本に対し、ポートライナーは14本(循環系統等の便数を合わせると28本)も運行されており、利便性の差は歴然である。更にシャトルバスは運行時間帯が朝のラッシュ時に限られ、またバス乗り場も駅から離れていることから、利用者の選択肢に入りにくいのが現状なのだ。

今後、バスによってポートライナーの混雑解消を狙うのであれば、「シャトルバスの所要時間短縮」「運行便数・時間帯の拡充」「三宮のバス乗り場へのアクセス向上」「運賃引き下げによる差別化」等の施策が必要である。バスによる空港への輸送力補完は、簡単なようで意外と課題は多いのである。

新線建設の意義とは

今回、需要調査が行われる新線建設には数千億円単位の事業費が想定され、バスによる補完・ポートライナーの改修に比べて巨額の経費が課題となる。しかし、新線建設のメリットは非常に大きく、神戸商工会議所も新神戸・三宮・空港を結ぶ新たなアクセス機関の整備検討を要望していた。

具体的には、以下のような整備効果が想定されている。

広域アクセスの向上①…私鉄・JRの乗り入れを前提に設計することで京都・大阪からの更なる利用者増加が期待される
広域アクセスの向上②…新神戸駅と直結することで新幹線を経由した中国・四国方面からの需要取り込みが期待される
輸送力の大幅増強…普通鉄道の車両サイズはポートライナーよりも大きく、輸送力は数倍に拡大される
速達性の向上…現状18分掛かっている三宮ー神戸空港間の所要時間を、10分以内に短縮することも可能となる

先ほど触れたように、ポートライナーを改修することによって得られる輸送力の引き上げ幅は限定的である一方、新線建設はこのように費用対効果の面で非常にメリットが大きいのだ。

ただ、新線建設には巨額の事業費が掛かるとみられ、採算面でポートライナーと新線が共存しうるのか、究極の選択肢としてポートライナーを廃止して新線に一本化した場合の採算はどうなるのか等、様々なケースでの試算が求められる。

現状だけでは語れない旅客需要

神戸空港の国際化による利用拡大は大々的に報道されているが、当面その波及効果は限定的である。その原因が「1日40便(20往復)」という制約だ。

第12回関西3空港懇談会で合意された神戸空港の国際化は、関西空港への影響を見極める為、最大発着回数を「1日40回(20往復)」と定めている。関西エリアでの国際線の航空需要(アウトバウンド・インバウンドともに)を考慮すると、神戸空港での国際線発着回数は1日40便では到底足りないのは容易に想像が付く。しかし、関西空港への影響を見極める為、当面はこれ以上の国際線発着は許容されていないのだ。

神戸市はこの「1日40便(20往復)」という根拠を元に需要予測を算出。この発着回数を前提に試算した国際線需要を約190万人としており、2030年頃の神戸空港の需要予測は国内・国際合わせて約700万人と予測している。

そのため、今後国際線の発着が「1日40便(20往復)」から引き上げられた場合には、神戸空港の需要予測は大きく上振れする可能性が高く、現時点での約700万人という数字を基に空港アクセスを整備すると、将来的な輸送力不足に陥る可能性も否定できないのだ。

ポートアイランドでは2028年前後に大阪湾岸道路西伸部(阪神高速5号湾岸線延伸部)の開業が控えているほか、新港地区ではウォーターフロントの再開発が進んでいる。新線の検討にあたっては、将来的な国際線需要の見極めと、ポートアイランド・ウォーターフロントの再開発を見越した総合的な需要調査が必要である。

阪急・地下鉄乗り入れ構想再浮上の可能性も

新線ルート案

新線建設の意義として挙げたが、新線建設にあたりJR・私鉄の乗り入れを可能とすることで、神戸都心部以外からも乗り換え無しでアクセスが可能となる。今後、神戸空港が関西の玄関口として機能するためには、広域アクセスの利便性向上が非常に重要な課題であり、新線は単独の市営地下鉄路線としてではなく、阪急・阪神等の私鉄の乗り入れも考慮した路線として検討を進めるべきである。

以前、三宮エリアでは阪急電鉄の神戸市営地下鉄への乗り入れ構想が存在した。しかし、線路の地下化・地下駅舎の改修に掛かる巨額の事業費に対して、直通運転による投資効果が見込めないとの結論に達し、2020年に同構想は白紙に戻されている。今回の新線構想には三宮駅の大改造が必要であり、阪急の空港方面への乗り入れと一度消えた西神・山手線方面への乗り入れを同時に実現できる可能性もある。

今回の新線検討は単に「空港アクセスの増強」に留まらず、市全体の交通網の大幅再編の足掛かりとなる可能性も秘めていると言えるだろう。

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