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将来像

ポートライナー延伸?地下鉄中央線?神戸都心部を貫く南北交通の将来像

市中心部と空港を結ぶポートライナー

ラッシュ時には乗車率150%を超える車両も

神戸空港の開業を機に神戸都心部から空港へのアクセスを担うこととなったポートライナー。同線は空港利用者の増加に加え、ポートアイランドへの企業・大学の進出増加により、近年ラッシュ時間帯を中心に混雑が深刻さを増している。

ポートライナーを運行する神戸新交通も手をこまねいているわけではない。各編成の乗車定員を引き上げるべく、一部車両でドア付近の座席を跳ね上げ式に改造。車両増備も進め、朝のラッシュ時間帯には運行間隔を2分10秒まで縮めるなど輸送力を増強している。

しかし、依然として混雑時間帯の平均乗車率は120%~140%で推移。ポートライナーは、普通鉄道に比べて車両サイズが小さく、また天井高も低いため、体感的な混雑度は数字以上に深刻となっているのだ。

小手先の対策を進めるが…

ポートライナー三宮駅の拡張工事(出典:神戸市 新交通三宮駅改良工事 参考資料16)

ここまで列挙したポートライナーの輸送力増強策に加え、2019年頃からは神戸駅・三宮駅・新神戸駅とポートアイランド・神戸空港方面を結ぶアクセスバスの運行が始まっている。

神戸市は、バスへの利用者分散を図ることで、ポートライナーの混雑緩和を目論んでいるが、バスの本数・所要時間・停留所までの利便性等から集客には苦戦。ポートライナーとアクセスバスの分散利用はイマイチ進んでいない。

また、同市はポートライナー三宮駅のホーム拡張工事の設計にも着手している。しかし、これはホームにおける混雑解消を狙ったもので、ポートライナーの輸送力を引き上げるものではない。

小手先の対策は進んでいるが、根本的な問題解決の糸口は見つかっていないのが現状なのだ。

8両化・延伸の議論

ポートライナーの延伸構想

ポートライナーを巡っては、神戸空港の開港を機に以下3点が構想として掲げられたものの、いずれも具体化していない。

  • 新神戸駅への延伸(広域アクセスの強化)
  • 8両編成化(各編成の乗車定員引き上げ)
  • 空港島西側への延伸・新駅設置・車両基地新設(車両増備による運行本数増強)

ポートライナーが新神戸駅まで延伸されれば、新幹線による広域からの集客も可能となるため、就航する航空会社からも新神戸駅への延伸を求める声は上がっている。しかし、久元神戸市長は「採算性の面で困難」と繰り返し発言しており、現時点では事実上断念していると見られる。

また、8両編成化については2018年度に神戸市が本格検討に入ると報道されたが、依然として実現の目途は立っていない。これは三宮駅の大幅改良・各駅ホームの延長・橋脚の強度補強などに大掛かりな工事が必要となるほか、今後も増える利用客に対応できるかなど費用対効果も疑問視されているためである。

ポートライナーの8両編成化・新神戸への延伸構想は、現時点では混雑解消・利便性向上のための解決策と言えるだろう。しかしながら、いずれの構想も多額の投資が必要となるため、神戸市は二の足を踏んでいるのが現状なのだ。

快速運転の復活を

2016年までポートライナーでは快速列車が運行されており、三宮ー神戸空港を最短16分台で結んでいた。しかし、同線には待避線が存在しないことから、停車駅を減らした快速運転には限界があり、総合的な利便性を考慮して廃止されている。この快速列車についても今後復活を検討するべきではないだろうか?

現在、ポートライナーは三宮ー神戸空港間を18分で結んでいる。都心部から空港への所要時間という点で考えると、全国トップクラスの利便性であるのは言うまでもない。しかし、距離(直線距離 約7km・路線距離 8.2km)を所要時間で割った平均速度を計算すると、その速度は時速27kmという驚きの数字となる。これはロードバイク並みの速度であり、実は距離に対して所要時間は非常に長いのだ。

早朝・夜間の時間帯は、比較的ポートライナーの運転本数は少ないため、待避線の使用を前提とせずにも快速運転を行うことは十分可能である。広域アクセスを強化するためにも、ポートライナーは更なる速達化を進めていかなければならない。

地下鉄中央線の再検討

2019年9月、神戸商工会議所が神戸市長に「市中心部と空港を結ぶ鉄道整備の検討」を要望した。当サイトでは長年、南北交通(新神戸ー三宮ー神戸空港)の抜本的見直しを提唱しているが、経済界から具体的な声が上がったのはこれが初めてである。

実は、神戸市は神戸空港へのアクセスとして地下鉄中央線(仮称)を検討していた時期がある。最終的には、地下鉄よりも建設費を抑えることができるポートライナーの延伸で開港を迎えているが、輸送力に課題が見え始めた今、改めて普通鉄道を前提とした交通機関の整備を検討していくべきだろう。

図は、新神戸から神戸空港に至る南北交通の1日あたりの輸送人員を表したものである。ポートライナーの利用者のうち、神戸空港利用者の占める割合はそれほど多くはない。しかしながら、三宮ーポートアイランド間の1日あたりの輸送人員は約8万人と普通鉄道による輸送力が必要とされてもおかしくないレベルに達しているのだ。

神戸市中心部を貫くこの南北交通を普通鉄道で整備することは、現在問題となっている輸送力不足を解決するだけでなく、速達化や将来的な私鉄の乗り入れなど、多くのメリットを同時に享受することが出来る。また、事業費の面では、新神戸ー三宮間は市営地下鉄山手線をそのまま転用し、ポートアイランド内の軌道は高架とすることで工費を大きく圧縮することも可能である。

現状ではポートライナーと普通鉄道を併存させるほどの需要はないと考えられるため、「地下鉄中央線」を整備するとなれば、ポートライナーを廃止するという大きな決断も避けては通れない。しかしながら、神戸中心部を貫く南北交通は将来的に極めて重要であり、これも一つの選択肢として可能性を排除せず検討していくべきである。

ポートライナーの1日輸送人員
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