国際化を見据えたインフラ強化
国際化の検討が進む神戸空港。この国際化における1つのネックとして挙げられているのが、空港までのアクセス交通である。
現在、神戸空港ではポートライナーと自家用車によるアクセスが大半を占めている。中でも、ポートライナーは朝夕ラッシュ時間帯の混雑が深刻化しており、今後の運用拡大によってラッシュ時の輸送力をオーバーする可能性が指摘されてきた。そのため、神戸市は2019年頃から神戸空港と三宮・新神戸を結ぶシャトルバスの本格運行を開始。ポートライナーからシャトルバスへの利用者誘導を進めている。
このシャトルバスへの分散利用を進めるにあたって重要なキーポイントとなるのが、道路インフラの強化である。特に片側1車線の空港連絡橋は、空港への道路アクセスでボトルネックとなる可能性があった。
連絡橋拡幅でボトルネック解消へ!
現在、神戸空港連絡橋は片側1車線のみで運用されているが、渋滞はほとんど発生しておらず、現時点では一日の交通量に対して交通容量が大きく不足しているわけではない。
しかし、一部時間帯ではトレーラーやトラック等の通行による混雑が見られるほか、交通事故等の発生時には交通規制によって全面通行止めとなる可能性が危惧されてきた。これらの課題に加え、前述の空港シャトルバスを運行する上でも連絡橋の交通容量が今後ネックとなる可能性があるため、神戸市は連絡橋の拡幅に向けて動き出したのだ。
既に工事にかかる設計・入札は終了し、令和4年度に着工を迎えている。
神戸空港島では日本で初めて液化水素の荷役施設が建設され、新エネルギーの受け入れ拠点としても機能しようとしている。そのため、空港自体の運用拡大の如何に関わらず、交通量増加に備えた連絡橋の改良は遅かれ早かれ必要であったと言えるだろう。
拡幅工事概要
工事名 | 神戸空港連絡橋上部工(拡幅部)製作・架設工事 |
工事場所 | 神戸市中央区港島9丁目、神戸空港 |
総工費 | 約25億円 |
完成期限 | 令和5年8月31日 |
工事延長 | 鋼橋延長 約1,180m、幅20.1m(うち3.4mを拡幅) |
工事概要は上記の通り。今回の工事では、連絡橋東側に新たな橋桁を接合し、連絡橋の幅を約3.4m拡幅する。その上で、歩道部分を東側に移設し、車道部分を片側1車線から片側2車線に変更する計画である。
神戸空港はターミナルビルをはじめ、空港連絡橋も拡張可能な設計で建設された。そのため、今回の拡幅工事でも橋脚等は改良工事が不要で、工事内容は主に橋桁の製作・接合作業に留まる見込みである。
将来的なBRT運行も視野に
神戸市は神戸空港と新神戸・三宮などを結ぶバスアクセスの延長線として、BRTの運行も視野に入れている。
BRTは信号システムの改修や専用レーンの整備などが必要となるものの、現在運行されているシャトルバスよりも速達性・定時性の向上が見込まれる。そのため、現在運行されているシャトルバスに比べ、ポートライナーからの分散利用を促進できる可能性が高い。
将来的に神戸空港へのBRTが実現するかどうか現時点では未知数であるが、拡幅工事の進む空港連絡橋と新神戸トンネルの南伸事業は、BRTを実現させる上でも重要なインフラとなるだろう。
Bus Rapid Transitの略。連節バス・バス専用道・バス専用レーンなどを組み合わせることで、速達性・定時性を向上させ、同時に輸送力の増強を実現するバスの運行システムのこと。