大韓航空、神戸ー仁川線就航へ!地方空港として最多の運航規模が意味する神戸空港のポテンシャルとは

目次

就航表明第一弾は大韓航空

大韓航空の就航発表に係る臨時記者会見

24日、大韓航空と神戸市は共同で記者会見を開き、来年春からの神戸ー仁川線の開設を発表した。運航開始は来年春の神戸空港国際化のタイミングを予定しており、A321型機(もしくは同規模の機材)で午前・午後の1日2往復を毎日運航するとしている。

今後、両国の航空当局からの許可が下り次第、正式なダイヤの発表・航空券の販売が開始される見込みだ。

大韓航空は昨年8月、神戸空港への就航を検討していると他社に先駆けて表明しており、実際の就航発表も一番乗りとなった。

実質定期便の「定期チャーター」

神戸空港国際化の流れ

今回発表のあった神戸ー仁川線は国際チャーター便として開設されることになる。だが、「チャーター便」にも関わらず「1日2往復で毎日運航」ということに違和感を抱いた方も多いかもしれない。これは「定期チャーター便」と呼ばれ、実質的には定期便のような運航形態を取るのだ。

一昔前まで、チャーター便は個札販売(航空券のバラ売り)や週あたりの運航回数が規制されており、旅行会社が募集したツアー客を不定期に運ぶものが中心となっていた。しかし、今では個札販売や運航回数にほぼ制限が無くなっており、チャーター便であっても毎日運航され、航空会社のサイトから個人で購入することが出来る「定期チャーター便」というものが存在しているのである。

特集ページでも解説しているが、神戸空港の国際化は段階を踏んで進められる。第一段階としては2025年の国際チャーター便の解禁、第二段階(最終段階)としては2030年前後の国際定期便の解禁である。

段階を踏んで国際化が進められることとなった背景には勿論「関西空港への配慮」があったからに他ならない。神戸空港を発着する国際線需要が相当見込まれるというのは言うまでもなく、国際化を一気に進めた場合には関西空港から神戸空港への路線流出が懸念されることから、段階的な国際化を進めることとなったのだ。

今回の就航表明の記者会見では、大韓航空の李常務日本地域本部長(以下、李本部長)が「定期便として運航することが一番良い」と話す場面もあり、神戸空港での国際線規制の枠内で運航するため、仕方なくこのような運航形態となっていることは言うまでもない。

国際チャーター便に次いで、国際定期便を解禁していくという流れは羽田空港の再国際化でも見られたプロセスである。今後、神戸空港は羽田空港と似たような過程を辿りながら国際化が進むこととなる。

地方空港路線として最多の1日2往復

今回、大韓航空の神戸ー仁川線は1日2往復で計画されているということが明らかとなった。「1日2往復」という数字だけを見ると、然程インパクトは感じられないが、実は国際線の運航規模としては比較的大きい部類に入る。

以下、主要国際空港(成田・羽田・中部・関西)を除いた空港の国際線(仁川・台北・上海・香港線)の運航便数をご覧頂きたい。1路線で1日1便(週7便)を超えて運航されている路線は極めて少ないのだ。

空港名仁川線台北線上海線香港線その他路線
神戸空港14
(大韓航空)
+他社未定
未定未定未定未定
旭川空港2
新千歳空港462868バンコク・北京・釜山など
函館空港5
青森空港2
花巻空港2
仙台空港417
新潟空港321
茨城空港2
富山空港2
小松空港9
静岡空港71
米子空港3
岡山空港371
広島空港742
高松空港7403
松山空港71
北九州空港7
福岡空港162421936シンガポール・バンコク・ハノイなど
佐賀空港422
長崎空港1
大分空港3
熊本空港792
宮崎空港3
鹿児島空港33
那覇空港3556520
主要な国際線の運航便数(週間往復便数)

※出典:国土交通省 国際線就航状況2023年 国際定期便データ
※2023年ウィンターダイヤ
※国際チャーター便は含まない
※神戸空港は2025年春から就航予定の仁川線を記載

また、日本の地方空港で大韓航空が運航する仁川線の一覧(以下)もご覧頂きたい。神戸線で計画されている運航便数は、国内地方空港での運航規模を大きく上回り、札幌線や名古屋線と同規模で計画されているのだ。

昨日の記者会見で、李本部長は将来的に神戸ー仁川線の便数を増やすことも示唆している。大韓航空が神戸空港のポテンシャルを如何に大きく評価しているかがお分かり頂けたのでは無いだろうか?

路線運航便数(往復便数/週)
神戸ー仁川線14
羽田ー仁川線7
成田ー仁川線28
関西ー仁川線28
名古屋ー仁川線14
福岡ー仁川線28
札幌ー仁川線14
青森ー仁川線3
新潟ー仁川線3
小松ー仁川線3
岡山ー仁川線4
長崎ー仁川線4
鹿児島ー仁川線7
沖縄ー仁川線7
大韓航空の運航計画便数

※2024年ウィンターダイヤ
※神戸ー仁川線は2025年春から就航予定の仁川線を記載

国内大手牽制のカギとなる可能性も

ANAの国際線路線図。羽田・成田に重点を置いた路線展開が続いている。

今回、大韓航空の李本部長は興味深い発言をしている。それは「羽田を経由する国際線利用者を取り込みたい」「インバウンド・アウトバウンド比率を5対5にしたい」との趣旨の発言である。

国際化特集ページ等でも解説しているように、神戸空港はその立地特性から、国際線利用の多い富裕層・ビジネス客・外国人居住者を後背地に多く抱えている。これらの国際線ユーザーは関西空港も勿論利用しているが、関西空港発着の国際線はアジア路線以外の選択肢が少なく、国内大手航空会社が国際線を張り巡らせている羽田空港経由で出国しているケースが意外と多いのだ。

今回、神戸空港から就航する先の仁川国際空港はアジア屈指の巨大ハブ空港であり、大韓航空自体が仁川国際空港をハブとして世界各地に路線を張っている。そのため、今後は神戸ー仁川線を利用し、仁川国際空港を経由して世界各国へ向かうことも可能となる。

伊丹空港や神戸空港から羽田空港経由で出国している国際線需要を、この神戸ー仁川線が取り込むことが出来れば、国内大手航空会社にとって多少なりと脅威になり得る。その対抗策として、国内大手航空会社が羽田空港や成田空港に偏重した国際線の路線計画を見直し、関西空港や神戸空港発着の国際線を充実させる方針に転換すれば、関西全体にとってプラスとなるのは言うまでもない。

大韓航空幹部が口にした「羽田を経由する国際線利用者を取り込みたい」「インバウンド・アウトバウンド比率を5対5にしたい」との意気込みは、神戸空港周辺のビジネス需要に期待が寄せられているということの何よりの証明である。神戸ー仁川線の就航は市場競争を活性化させ、国内大手航空会社の路線計画にも一石を投じる可能性も秘めていると言えるだろう。

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