神戸空港、国際線の想定規模が拡大!最新図面にて判明したサブターミナルの設計

建設が進む神戸空港サブターミナルビル

記事の内容は、2024年8月時点で判明している最新情報である。サブターミナルを巡っては、これまでも数多くの設計変更が行われており、施設・設備の配置や規模については、来春の開業までに更に変更となる可能性もある。

来年の国際化に向けて整備が進められている神戸空港サブターミナルで、国際線エリアの規模が当初の想定よりも拡大していることが分かった。来年の国際化を前に、航空会社からの就航希望も徐々に寄せられており、ここに来て国際線エリアのキャパシティの引き上げが必要となっているものとみられる。

また、サブターミナルでは制限区域外にラウンジの整備が計画されているほか、国内線エリアにはウォークスルー型の商業施設の導入が想定されているとみられ、既存のターミナルとは異なる絵姿が徐々に明らかとなってきている。

目次

サブターミナル館内概略図

神戸市の入札公告で明らかとなった最新のサブターミナルビル館内の概略図は以下のとおりである。大まかな施設配置・動線は神戸市が示している基本構想から大きな変化は無いが、最新図面からは商業施設等の配置が判明している。

サブターミナル1階館内図
サブターミナル2階館内図

サブターミナルの全体的な特徴としては、制限区域外に商業・飲食施設が少ないことである。1階ロビースペースの北東角にはカフェ等の飲食店舗の整備も想定されているが、最新図面ではその区画が描かれていない。同じく制限区域外である2階部分にも、商業施設や飲食施設は現時点で計画されておらず、「にぎわい空間」として大きなスペースが取られているのみである。ちなみに、ラウンジはこの2階部分の南側に整備される事が判明している。

また、国内線エリア(制限区域内)では、商業施設の配置と動線の位置関係等から、伊丹空港や関西空港で導入されているウォークスルー型の商業施設の整備を想定しているとみられる。また、飲食施設については配置が計画されていないため、国内線の利用者は飲食施設を利用することが事実上出来ないと考えられる。

近年、全国の空港では制限区域内に飲食・商業施設を多く配置し、搭乗前の利用者に購買を促す設計が目立っており、神戸空港もこのトレンドを採用したと推察される。だが、本来は制限区域の内・外ともに飲食・商業機能が充実している事が望ましい。特に国際線の利用者は空港へ早めに到着することが多いため、早々に出国しなければ飲食・商業施設にありつけず、時間を潰すことが出来ないというのは何ともお粗末な話である。

2階に無駄に広く取られた「にぎわい空間」や、飛行機が見えない「展望デッキ」に商業機能やカフェ等の飲食施設を盛り込むことは出来なかったのか、開業までに見直しが必要と言わざるを得ない。

大幅に拡大された国際線エリア

国際線エリアは当初の想定よりも規模が拡大している。以下、①サブターミナルの整備事業者公募時点で求められていた要求水準、②神戸市が現在公表している概要、③最新の計画図面から判明した設計の比較である。

【国際線】①整備事業者公募に係る要求水準
(2023年2月)
②神戸市が公表しているサブターミナルの概要
(2024年2月~)
③最新図面で判明している設計
(2024年8月)
保安検査場国内線とスイングで使用できる計画とする3レーン
(スイング運用の可否は不明)
搭乗待合室ピーク時旅客数を最大312人と想定したキャパシティ
(国内線ピーク旅客数は464人と想定)
国際チャーター便に対応国内線エリアの2倍強のキャパシティ
搭乗口2ゲート
(うち1ゲートはスイング)
2ゲート以上3ゲート
到着手荷物受取コンベア2台以上
(将来的な増設も提案)
2台
(増設可否は不明)
国際線エリアの設計

最も注目すべきは搭乗待合室のキャパシティと搭乗口(バスゲート)の数である。事業者公募が行われた段階では、国際線の搭乗口は2か所(うち1か所は国内線とスイング可)となるよう求めていた。しかし、最新の図面では搭乗口は3か所に増やされ、全て国際線専用としての運用を想定しているものとみられる。

搭乗待合室のキャパシティについても、当初の想定から大幅に拡大している。事業者公募が行われた段階では、想定されるピーク時間帯旅客数は、国際線が国内線を下回る設定となっていた。しかし、最新の図面では、国際線待合室の床面積は国内線の2倍強となっており、床面積の算定根拠となるピーク時間帯の旅客数が大きく引き上げられた可能性が高いのだ。

また、保安検査場はスマートレーン型のX線検査機器2基に加えて、スイング運用を想定した従来型のX線検査機1基の運用が計画されていた。しかし、最新図面ではスイング運用に必要な間仕切り壁が描かれておらず、これら計3機の検査機器は国際線専用としての運用を想定している可能性がある。

【スイングとは?】
一部のエリアを区切っているドア・シャッターを開放・閉鎖することにより、国内線と国際線のエリアを拡げたり狭めたりすることが出来る設計・運用のこと。これにより、搭乗待合室・保安検査場のスペースを無駄にすることなく、時間帯毎の需要に応じた柔軟な運用が可能となる。

必要性が疑問視される国内線エリア

国際線エリアが当初の想定よりも規模が拡大する一方、非常に心配されるのが国内線エリアの計画である。実は、当初の計画より大幅に規模が縮小されており、有効に活用されるか不透明な状況となっているのだ。

以下、①サブターミナルの整備事業者公募時点で求められていた要求水準、②神戸市が現在公表している概要、③最新の計画図面から判明した設計の比較である。

【国内線】①整備事業者公募に係る要求水準
(2023年2月)
②神戸市が公表しているサブターミナルの概要
(2024年2月~)
③最新図面で判明している設計
(2024年8月)
保安検査場国際線とスイングで使用できる計画とする2レーン
(スイング運用の可否は不明)
搭乗待合室ピーク時旅客数を464人と想定したキャパシティ
(国際線ピーク旅客数は最大312人と想定)
国内線(40回/日)に対応国際線エリアの半分以下のキャパシティ
搭乗口4ゲート2ゲート以上1ゲート
到着手荷物受取コンベア2台以上
(将来的な増設も提案)
1台
(増設スペースは無し)
国内線エリアの設計

神戸市は来年予定されている国内線発着枠の増枠分(1日40便)をサブターミナルで取り扱うとしていた。しかし、設計の変更内容を鑑みると、既存の航空会社からはサブターミナルの利用に難色を示され、既存ターミナルで増便ができるように調整が進められているのではないかと勘繰らざるを得ない。

そもそも、同一航空会社の国内線で利用するターミナルが分散しているケースは、現在日本では存在しない。(2020年頃までスターフライヤーが羽田空港の第1・第2ターミナルを分散して利用していたが、現在は第1ターミナルに集約している。)それもそのはず、ターミナルが分散すると利用者の混乱を招く上、航空会社も複数のターミナルへ人員・機材を配置する必要があるなどデメリットしかない為である。

ちなみに、2019年の運用規制緩和で神戸空港への参入を果たしたフジドリームエアラインズは、搭乗手続きカウンターのスペースをまともに確保できず、受託手荷物搬送設備についてもスカイマークに間借りするような形態をとっている。そのため、サブターミナルの開業を機に、同社がサブターミナルへ移転する可能性は十分考えられる。また、2024年に運航を開始したトキエアも神戸参入を表明していることから、サブターミナルに僅かに設けられる国内線エリアは、この両社や今後の新規参入に備えたものである可能性が高いと言えるだろう。

神戸市・関西エアポート神戸は、国内線の増枠に向けた対策として既存ターミナルの拡張という方策を取らず、サブターミナルに国内線エリアを整備しキャパシティを補うという方針に拘ってきた。この「サブターミナルへ国内線エリアを設ける」という方針は、既存ターミナルの建て替えの際(メインターミナルを整備する際)に、一時的な国内線の移転先として有効活用出来る可能性もあった。しかしながら、最新の計画図では既存ターミナルを代替することも出来ない規模となっている。

何のためにサブターミナルに国内線エリアを整備したのか、開業までにはその疑問が解消されていることを期待したい。

ラウンジはパブリックエリアに整備

既存ターミナルでは制限区域内にラウンジが設けられている

サブターミナルの事業者公募にあたっては、整備事業者に国内線・国際線の両エリアに有料ラウンジを計画するよう定めていた。しかし、最新の整備計画では制限区域内にラウンジは計画されておらず、サブターミナル2階の制限区域外(パブリックエリア)にラウンジを設置する計画であることが分かっている。

神戸空港の既存ターミナルには、制限区域内にラウンジが整備されている。そのため、搭乗時刻ギリギリまでラウンジで過ごすことが可能であるが、サブターミナルでは保安検査・出国前の利用が必要となり、事実上このような利用は不可能となる。だが、制限区域外にラウンジが整備されることで、到着後のラウンジ利用が可能となる可能性も高く、利用者にとっては一定のメリットもあると言えるだろう。(制限区域外にラウンジを設けている空港の殆どは、到着時にもラウンジの利用を可としているケースが多い。)

また、このラウンジは既存ターミナルと同様にクレジットカードの会員等を対象としたカードラウンジとして運用されるものとみられる。しかし、各エアラインの幅広い利用層の獲得のためには、各エアラインの上級顧客をターゲットとしたラウンジの整備も不可欠である。

今後、国際定期便の受け入れに向けてメインターミナルの計画・整備が進められることになるが、その際には航空会社ラウンジ(またはそれに準じたラウンジ)の整備検討も必要だろう。

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