動き出した延伸計画!
現在、阪神高速5号湾岸線は六甲アイランド北ICが神戸側の終点となっている。だが、この六甲アイランド北ICは本来の終点ではない。実は、阪神高速5号湾岸線は六甲アイランドから遥か西の垂水JCTまでを結ぶ事になっているのだ。
六甲アイランド北ICまでの区間は1994年に開通したものの、同IC以西の区間(正式には大阪湾岸道路西伸部と呼ばれる。)については長年整備計画が纏まらず、長年計画に留まった状態が続いてきた。
計画に動きが見られたのは、5号湾岸線開通から約15年後のことであった。2009年3月に駒栄ランプ~六甲アイランド間が都市計画決定を迎えたのである。その後、同区間は2016年4月に事業化。2018年12月には無事着工を迎え、約10年後(2028年頃)の開通を目指して現在工事が進められている。
多くの課題と震災を乗り越えて
湾岸線に並行して存在する阪神高速3号神戸線は、朝夕のラッシュ時間帯を中心に渋滞が常態化している。そのため、同線の渋滞解消を期待し、大阪湾岸道路西伸部の早期開通を求める声は昔から多く上がっていた。
しかし、大阪湾岸道路西伸部は物流の大動脈である神戸港を横断する形で計画されており、橋梁の設計等にも様々な制約があった。加えて、1995年には阪神淡路大震災が発生。既存インフラの復旧に時間と予算が費やされた事から、計画の具体化が遅れていたのである。
計画具体化にあたっては、神戸港に入港する大型客船の支障となる可能性があった。そのため、道路構造については海中トンネルも候補に様々な検討が行われたが、最終的には危険物積載車両の通行制限が無く、また建設費も抑えることができる高架道路(6車線)とすることに決定した。
ちなみに、高架道路を建設する場合、神戸空港が建設予定地のすぐ南に位置していることから、主塔の高さが航空法で制限される可能性があった。そのため、大型客船が航行できる橋桁高を確保できるか不安視されていたが、最終的に橋桁高は約66メートルと国内トップレベルの設計となっている。
大阪湾岸道路西伸部の概要
路線名 | 一般国道2号大阪湾岸道路西伸部 |
事業区間 | 神戸市東灘区向洋町東~神戸市長田区西尻池町 |
延長 | 14.5km |
道路規格 | 第2種第1級(31号神戸山手線接続部は第2種第2級) |
設計速度 | 80km/h(31号神戸山手線接続部は60km/h) |
車線数 | 6車線(31号神戸山手線接続部は4車線) |
総工費 | 約5,000億円 |
工期 | 約10年 |
渋滞損失ワースト1位を返上へ
実は、阪神高速3号神戸線の渋滞は都市高速の中で日本一深刻である。
図の渋滞損失ランキングを見て頂きたい。同線は首都高速などをおさえて、上下線で全国ワースト1位・2位を独占しているのだ。
大阪湾岸道路西伸部が開通すれば、この3号神戸線の渋滞による経済損失は大きく減少し、不名誉な記録も返上できる可能性が高い。そのため、物流業界などからの期待の声は非常に大きい。
また、その整備効果は3号神戸線の渋滞解消だけに留まらず、災害時には阪神高速3号神戸線の代替迂回路としても機能するほか、大阪方面とポートアイランド・神戸空港間の所要時間短縮も見込まれている。
非常に大きな経済効果が見込まれる大阪湾岸道路西伸部。その早期開通には各方面から大きな期待が寄せられているのだ。