関西3空港一元管理の実現
2009年12月14日、関西3空港懇談会で神戸空港を含む関西3空港を一体運営する方針が合意された。
これを受け、国は関西国際空港会社が伊丹と神戸の両空港を管理・運営する方向で検討を開始。2011年度の実現を目指して準備が進められていたが、調整の難航により国は伊丹・関空の経営統合を先に進め、2012年7月1日に伊丹・関空は経営統合された。
それから遅れること約6年。2018年4月1日に神戸空港は民営化され、関西エアポートの運営の下、関西3空港の一元管理が実現することとなった。これに伴い、2018年12月の関西3空港懇談会で規制緩和の議論が再開。翌年2019年5月の同懇談会において、神戸空港の段階的な規制緩和が正式決定した。
依然として強い地域対立
神戸空港が民営化した理由、それは『利害関係の解消』が目的であった。
これまで関西3空港は運営主体が異なっており、関西3空港懇談会で神戸・伊丹に運用規制を掛けることで利害調整を行ってきた。そのため、2018年に神戸空港が関西エアポートの運営傘下に入ったことで、この利害関係は消失し3空港の有効活用が進むと思われた。
しかし、翌年の関西3空港懇談会では依然として議論は紛糾。堺市・和歌山県を中心とする関西空港の地元自治体が神戸空港の規制緩和に待ったをかけたのだ。最終的には、兵庫県が神戸空港の規制緩和案として掲げた「発着枠の倍増、3時間の運用時間延長」は叶わず、「1日10往復の発着枠増、1時間の運用時間延長」という小幅の合意に留まった。3空港の利害関係が解消した今も尚、足の引っ張り合いが続いているのだ。
「関西全体が発展するため、(世界的に膨らむ)航空需要をしっかりと受け止めたい。神戸空港は規制緩和すべきだ」。松本が切り出すと、万博とカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を進め、空港の大切さを感じていた松井も力強く応じた。
神戸空港、規制緩和の先に(1)- 神戸新聞 https://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/201907/0012495300.shtml
「南は任せてほしい」
南とは、関西空港のお膝元である大阪・泉州を指す。関空から航空需要を損ないかねない神戸の規制緩和を警戒する地元自治体。松本の主張に共感した松井は、説得に乗り出すことを約束した。万博の開催地を決める舞台裏で、積年の懸案である空港問題は動きだした、かに思われた。
避けて通れない3空港の飛行ルート見直し
2018年からようやく3空港の運営は一体となったが、航空管制上の一体運用は実は既に始まっている。
上に示した図1は、関西圏におけるターミナルレーダー管制業務が行われている覆域を表したものである。関西3空港が全てカバーされている事がお分かり頂けるだろう。
従来、このターミナルレーダー管制業務は、各空港ごとの管制官が受け持っていたが、関西では複数の空港が近接しているため、関空にこの業務を担う管制官を配置し、複数の空港を発着する航空機を効率的に管制しているのだ。このような広域的な管制業務は、羽田空港・成田空港を抱える関東でも行われており、全国的にも徐々に広がりを見せている。
次に、図2図3を見て頂きたい。こちらは、関西・大阪・神戸空港の主要な飛行ルートを表したものである。△MAIKO・△MAYAH・△SIOJI地点などで関西・神戸便が輻輳しているのがお分かり頂けるだろう。
神戸便の飛行ルートは関西便の飛行ルートを殆ど変えず、言うならば即席で飛行ルートを設定したことから、このような輻輳した飛行ルートが誕生している。そのため、管制上の一体運用は進んでいるにも関わらず、神戸便は全て明石海峡上空を通過する出発・到着経路となり、また関空便の下を飛ぶという広域管制のメリットを十分生かせていない非効率な状況が開港以来続いているのだ。
国は神戸空港の発着枠を規制している理由として、関西・神戸便の輻輳による管制上の都合を挙げることがある。しかし、発着枠が総量規制であるという矛盾点に加え、このような非効率な飛行ルートを再検討しようとする姿勢を見せない事から考えても、神戸空港に課せられている発着規制は恣意的な規制であると言わざるを得ないのだ。
関西で飛行ルートの再検討が話題に上らない一方、関東では羽田空港の拡張に伴って、度々飛行ルートの再設定がなされている。これは、関空の発着枠にまだ空きがあり、飛行ルートを再構築せずとも、まだまだ管制上の余裕があるということの裏返しでもある。
今後、関西3空港の発着能力を引き上げていくのであれば、飛行ルートの見直しは避けて通れないと言えるだろう。