神戸空港は失敗か?反対運動を振り返る

神戸空港開港前の反対運動では、近隣に2つも空港があるなか、就航する航空会社が現れるのか?空の安全は担保されるのか?などと言われてきたが、蓋を開けてみると開港当初から3社の航空会社が参入し、今では5社が発着枠のほぼ上限便数を運航。また神戸空港の開港以来、関西地域で航空事故なども発生していない。

神戸空港の開港までには、空港反対派によって多数の書籍が出版され、様々な主張が展開されてきた。無事に開港を迎えた今となっては、その内容を振り返る機会は殆どない。

空港反対派はどのような主張を展開し、またその主張は正しかったのか?ここでは主に空港反対派の主張を振り返ると共に、その内容を検証する。

前例のない市主導の空港計画

2000年代に開港した地方空港の中で、神戸空港ほど反対運動が大きく盛り上がった空港は無いといっても良い。なぜ、そこまで反対運動が大きくなったのか。それは、神戸空港が国や県ではなく、神戸市主導で進められた計画であった事が大きい。

第6次空港整備計画に盛り込まれた神戸空港計画は、地方管理空港として位置付けられていた。地方管理空港とは、名前の通り地方自治体が建設から管理・運営までを手掛ける空港で、全国に50以上存在している。しかし、そのほとんどは県によって建設が手掛けられており、市町村レベルの自治体が空港建設を手掛けるというのは前代未聞であった。

政令指定都市である神戸市は、県と同じような財政力・決定力を持つ自治体であった事から、神戸市単独での空港整備が可能と判断し、市主導で空港建設を推進。しかし、市町村レベルでは負担が大きいこともまた確かであり、空港建設による財政悪化を懸念した市民団体を中心に、反対運動は異様な盛り上がりを見せることとなったのだ。

2009年に神戸空港と同じく地方管理空港として開港した静岡空港。同空港は静岡県によって建設された。

大きく波及した経済効果

空港反対派は、約3,000億円の建設費による財政悪化を指摘する一方、経済効果は限定的だとしていた。しかし蓋を開けてみると、神戸空港が開港した2006年から様々な開港効果があった。

中でも、開港後に大きな経済効果が表れているのは、ポートアイランドへの企業進出である。

医療産業都市構想が進むポートアイランド2期では、陸海空のアクセスの良さが評価され、スーパーコンピュータ京(後に「京」は運用を終了し、現在「富岳」が運用されている。)の誘致に成功。2020年8月末時点で、医療関連企業の進出は369社・団体にのぼっている。進出する企業担当者の多くも、陸・海・空のアクセスの良さを神戸進出の理由としており、神戸空港の開港無しには考えられなかったといえるのだ。

また、競合交通機関への波及という点では、山陽新幹線の新神戸駅における「のぞみ停車」の実現が挙げられる。

JRは2003年に、新神戸駅にのぞみを停車させるダイヤ改正を実施。神戸空港開港による利用客の飛行機へのシフトに先手を打っている。JRはこのダイヤ改正について、神戸空港への対抗策であるという事を表向きには否定しているが、神戸空港の開港が新神戸駅における「のぞみ停車」の実現を後押ししたことは間違いないだろう。これにより、東京方面は勿論のこと中国・九州方面へもアクセスが飛躍的に向上し、飛行機を利用しない市民も開港による大きな恩恵を享受出来たのである。

他にも、開港効果による観光客の増加で市内のホテル稼働率が上昇、その後ホテルの建設ラッシュも起きるなど、神戸空港が生み出す経済効果は多岐分野にわたり、空港開港による経済効果は多岐にわたっているのだ。

スーパーコンピュータは、神戸医療産業都市における重要施設として機能している。

欠陥空港という議論

神戸空港は地形上・施設面で、欠陥空港であるという議論もされていた。ここでは欠陥空港とされた4点について取り上げる。

神戸港の航路を阻害する

神戸空港では、標準進入灯が西側に設置されており、神戸港の旧第2航路を完全に塞ぐ形となっているのは確かである。しかし現在、ポートアイランド西側のコンテナバースは廃止・再開発され、同時に旧第2航路は廃止されているのが現状である。大型貨物船はポートアイランドの東側(神戸中央航路経由)を通行しており、現在空港の西側を通る大型船は神戸西航路(旧第1航路)を利用する旅客船のみとなっており、船舶への影響は限定的なのだ。

また、神戸中央航路(旧第3航路)を通る貨物船の航行が危険になるとの指摘もある。しかし、神戸中央航路自体に制限表面は設定されていない上、航空機の進入表面も余裕を持って設定されており、安全は十分に確保されていると言えるのだ。

ちなみに、神戸空港島と神戸中央航路の距離は約2700mであるが、羽田空港においては新滑走路と東京第1航路の距離が約1700mで、神戸よりさらに厳しい条件に設計されている。

神戸空港の制限表面と神戸港の航路(出典:入港マニュアル 神戸市)

騒音問題が懸念される

都市型でアクセスが良い空港になればなるほど騒音というものは付き物で、関西においては伊丹空港が良い例である。大阪都心から最も近い伊丹空港は、住宅地のど真ん中にあるがゆえ騒音被害が深刻で、裁判にまで発展。現在までに環境対策費として7000億円以上が投じられている。

それに比べて神戸空港はどうであろうか。都心から約15分という大変便利な立地であるが、海上空港がゆえ深刻な騒音地帯はすべて海上に存在している。

反対派は主に、神戸発着便が淡路島や播磨地域上空を飛行することによる騒音問題を指摘していた。しかし、淡路島上空は基本的に神戸発着便が飛行しない上、播磨地域上空を飛行する便も十分な高度が確保されており、大きな騒音問題とはなっていないのが現状である。

また、航空機の騒音監視については開港から現在に至るまで引き続き行われており、海上空港とはいえ航空機騒音については十分な配慮がなされている。

騒音監視地点
騒音監視地点(出典:航空機騒音監視 神戸市)

ILSが西側にしか設置されていない

ILSとは計器着陸装置のことで、グライドスロープとローカライザーという2種類の電波によって、航空機を接地まで誘導する設備の事である。

神戸空港においては、ILSは西側にしか設置されていない。しかし、現在に至るまで神戸空港にILSが片側にしか設置されていないため、大量に欠航便が発生したという実績は殆どない。立地が海上であるために、内陸部の空港に比べて霧や雲が発生しにくく、厳しい気象条件となる事が少ないからである。

また、関西においてILSが滑走路両側に設置されているのは関空だけで、伊丹空港もB滑走路の片側にしかILSは設置されていない。これらから分かるように、ILSが滑走路片側にしか設置されていないのは、小規模な地方空港では当たり前であり、ILSが両側に設置されていなければ航空機の運航に大きな支障をきたすという事はないのである。

六甲おろしが吹くため、横風に弱い

北側に位置する六甲山から吹き降ろす風「六甲おろし」が強い横風となり、航空機の運航に支障をきたすとの議論もあったが、横風による欠航は年間数件しか発生しておらず、大きな問題とはなっていない。データとして、2008年度の就航率は99.0%を超えている。

そもそも一般的に、空港の開港前の実地調査では、年間を通した風向調査が行われている。神戸空港においても例外ではなく、滑走路は東西方向で大きな支障が無いと事前に実証されているのだ。

反対派の予測を大きく上回った需要予測

反対派の出版した書籍の中で、神戸空港の需要予測として以下のような記述があった。

「神戸空港は50万人しか利用しない」

筆者は様々な計算式を立てて導き出した需要予測だとしていたが、実際はどうだっただろうか。初年度は50万人どころか約270万人もの人が神戸空港を利用したのである。270万人という数字は、神戸市の試算した需要予測には届いていないものの、地方管理空港の中ではダントツ1位の実績であり、神戸空港のニーズの高さが証明されている。

また、開港2年目には約297万人が利用し、国内線の旅客数では全国第10位を記録。神戸市の試算した需要予測の約93%に達している。

地方管理空港・特定地方管理空港の国内線旅客数一覧(2018年)

後戻りできない反対運動

神戸空港が開港した今でも、度あるごとに神戸市役所前・神戸空港島などで反対集会が開かれている。

だが、未だに行われているこの反対運動は果たして市民の声を反映していると言えるだろうか?神戸空港が開港して10年以上が経過し、神戸・関西の玄関口として定着した今となっては、もはや市民からは積極活用を望む声の方が大きいだろう。

反対運動を扇動している市民団体は、もはや本来の目的を忘れ、廃港という単なる目標に向けて突き進んではいないだろうか。このサイトでは繰り返し解説しているが、神戸空港を廃港にするメリットは市民にとって何一つなく、未だに廃港を唱え続けるというのは市民運動の暴走と表現せざるを得ない。

神戸空港は反対運動が巻き起こる中、やや強引に開港にこぎつけたことは否めないかもしれない。しかし、前向きに捉えると空港が開港したことで神戸には様々な可能性が開けたのである。本当に神戸の未来を考えるのであれば、空港の開港を悲観的に捉えるのではなく、未来への投資・新たな可能性と捉えて積極的に利用を図るのはもちろん、市民一丸となって規制緩和の声を上げていかなければならない。

開港記念日に神戸市役所前で開催される反対集会(※肖像権の保護のため、一部モザイクを掛けています)

神戸空港は失敗か?

関西3空港を巡って、元大阪府知事の橋下氏は神戸空港を「失策」と発言するなど、神戸空港は失敗だと語られることがある。

関西国際空港計画が、都市部に近接した神戸沖で進められなかったという事は、神戸市のみならず関西全体にとって「失策」であったと言えるかもしれない。しかし、現在の神戸空港を推進した事自体が「失策」であったかについては疑問符が付く。

神戸空港が開港したことにより、神戸市には陸・海・空の玄関口が揃った。全国を探しても、このような都市は極めて珍しく、神戸市は都市間競争に打ち勝つための礎を築いたと言えるだろう。また、神戸空港はスカイマークをはじめとする新興航空会社の拠点としての色を強めており、関西における第3空港としての役割を十二分に発揮している。そのため、経済効果は神戸市のみに留まらず、航空需要の拡大という形で関西全体にも波及しているのだ。

財源が無限にあるのであれば、今からでも最適な立地を再検証し、関西空港を作り直すという事も可能だろう。しかし、そんな財源は有るはずもなく、既に何兆もの建設費を注ぎ込んだ今となっては、後戻りは出来ない。関西空港の立地を変えられない以上は、都心部から離れたハンディを、神戸・伊丹の2空港がカバーしていかなければならないのだ。にもかかわらず、運用規制を伊丹・神戸に掛けている様では、何のために関西に3空港が存在するのか、“宝の持ち腐れ”と言う他ない。

関西経済同友会の山中元幹事(南海電鉄会長)は一時期、神戸空港の廃港論を展開した。我田引“鉄”とも言える横暴な主張は、関西における地域対立を体現していると言えよう。神戸空港が関西エアポートの傘下に入ったことで、関西3空港の利害関係が無くなった今、足の引っ張り合いをしている場合ではなく、3空港それぞれの最大活用を図っていかなければならない。

現状の規制に縛られた3空港の運用こそが「失策」なのである。

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