【関西3空港の行方 第3部】恐れることはない – 神戸空港、独立への道

神戸空港

将来、A380が神戸の空を飛ぶ可能性は?

 「国際化されればあるだろう。2500メートル滑走路でも離着陸できる。」

神戸新聞が実施した開港5年インタビューの質問に、スカイマーク有森正和常務(当時)はこう述べた。

神戸空港の利便性を高く評価し、スカイマークは神戸空港を西日本の拠点として位置づけてきた。国内線LCCの先駆けとして徐々に事業を拡大し、昨年日本の航空会社としては初めてエアバスの超大型旅客機A380の導入を決定、2014年度から長距離国際線に打って出る。

また、神戸空港発着枠が限界を迎えていることから、新規参入の国内線LCCへの対抗も兼ねて2012年度には関西第2の拠点として関空路線も復活させる(2013年3月撤退)。

目次

開港5年を振り返る

開港から5年で目まぐるしい変化があった。特筆すべきは、日本航空の撤退である。

神戸空港で年間約100万人もの旅客数を占めていた日本航空が全面撤退したことは、まさに寝耳に水であった。しかし、日本航空が全面撤退した後、スカイマークが九州路線を相次いで開設し、今や神戸空港から18往復便を運航するまでに路線網を拡大。全日本空輸の機材大型化等も奏功し、2010年度に約222万人まで落ち込んだ旅客数は2011年度は250万人程度まで回復する見込みである。

このように、誰もが予測しなかった日本航空の全面撤退などがあった激動の5年間であったにもかかわらず、再び旅客数増加の傾向が表れているのは、神戸空港は着実に関西の玄関口として定着しつつあるからに他ならない。

一方、空港島の用地売却は計画通りに進んでおらず、借換え債を発行して景気回復を待っている状況である。今年度になってユーロコプター・スカイマークの格納庫建設が決定したものの、スカイマークの格納庫は制限区域内に建設中のため、分譲ではなく使用許可という形をとっている。空港島の用地売却計画については今後も引き続き企業誘致が急がれる。

需要予測の再検証

開港から5年が経過した今、当初の需要予測との乖離が目立つようになってきた。当初の需要予測と現状を比較し、これからの先行きについて検証する。

東京路線

2010年度から需要予測と実績に乖離が生じ始めており、2011年度では約80万人もの乖離が生じている。これは当初の「機材が段階的に大型化する」という予測が裏目に出ていると言えるだろう。

近年、国内線は小型機による多頻度運航が主流である。神戸発着の羽田線の大半を占めるスカイマークも、かつては中型機のB767を用いて1日8往復で運航していた時期もあったが、事業拡大に伴う羽田枠の不足から、現在の運航便数は1日5往復に減らしている。

全日本空輸も6月から羽田線を3往復に増便しているが、羽田空港国際線の発着枠の兼ね合いで今後も3往復が維持されるかは不透明だ。

那覇・札幌路線

札幌・那覇の両路線では、開港以来需要予測を上回り続けている。

最盛期には那覇線は約60万人・札幌線は約70万人を記録しており、関西一円から旅客を取り込めている可能性が高い。スカイマークの沖縄・札幌線は年間を通して高搭乗率を維持しており、格安運賃もまた旅客にとっての魅力になっていると言えよう。

地方路線

開港当初から需要予測と実績に約110万人もの乖離が生じている。2011年度から90万人程度まで乖離は縮まったが、未だに開設すらされていない路線も存在するのが現状だ。

また、福岡線は約40万人もの需要予測を立てていたにもかかわらず、実際にスカイマークが路線を開設した結果、搭乗率は約20%と低迷し路線廃止となった。福岡線に関しては日本航空が関空発着の福岡線を廃止、伊丹発着の福岡線も殆どがプロペラ機であることを考えると、新幹線との競合で航空路線としては成り立たなくなっていると言えるだろう。

需要予測には存在しない熊本線にも同じことが言え、九州新幹線の開通や熊本空港の立地条件などで航空機の優位性は薄れ、神戸発着だけでなく伊丹発着の熊本線でも苦戦を強いられているのが現状である。今後、熊本線には更なるテコ入れ・PRが求められる。

宮崎・函館線に関しては、スカイマーク・全日本空輸ともに開設する予定は無いが、両空港とも比較的旅客数は多い空港のため、新たに参入するソラシドエア・エアドゥが開設する可能性はある。但馬に関しては地元が神戸線開設に及び腰である点、また就航している航空会社が日本航空のみであるということから開設の見込みは皆無に近い。

今後、スカイマークが仙台線の就航を予定し、松山線の開設も検討するとしていることから、今後も地方路線の旅客数増加は見込まれる。しかし、約90万人もの乖離を大幅に縮めることは困難と言わざるを得ない。

経済効果の再検証と積極的な情報開示、収支見通しの見直しを

「神戸空港は失敗か」の章でも解説しているように、神戸空港の収支については様々な誤解が飛び交っている。

基本収支が黒字である事だけでも十分立派なことではあるが、市債償還などを合わせた管理収支の赤字報道が先行してしまい、空港運営が財政を圧迫していると誤解されがちである。専門家からは企業会計方式での収支計算を求める声も上がっており、市民広報紙などで市民に様々な視点から見た収支状況を分かりやすく開示する必要が出てきていると言える。

開港5年という新たな段階を迎えた今、神戸空港がもたらした経済効果を算出・公表し、改めて市民に周知するべきではないだろうか。

また、今年度から黒字を積み立てていた財政調整基金が底を尽きる見込みのため、新都市整備事業会計からの資金の借り入れを決めている。市債償還が終わるまで今後も新都市整備会計から借り入れるのか、それとも新都市整備事業会計から資金を借り入れることなく、毎年度償還可能な額まで引き下げた長期的な返済計画を立て直すのか、収支計画の見直しも必要だろう。

空港島の用地売却計画については、航空関係の業種以外が空港島に拠点を構えることが出来るよう、土地の用途変更などを国と引き続き協議していくことが求められる。

規制緩和の更なる訴えを

今後の課題であるが、やはり「規制緩和」これ一点に尽きる。

関西3空港懇談会で3空港を一元管理するという案でまとまったにもかかわらず、国は伊丹・関空の統合を進め、神戸空港は蚊帳の外に置かれた状況である。国交省が将来的に神戸を含めた一元管理に動くかどうか現時点で不透明である以上、神戸空港が目指すべき方向は伊丹・関空強いては関西3空港という枠組みからの独立だ。そのためには、やはり規制緩和は欠かせない。

開港以来、幾度と無く要望してきた運用規制の緩和は実現することが無かった。今後は関西3空港懇談会で神戸空港の規制緩和も積極的に議題に挙げ、同懇談会を通して国交省に要望を届けるなど、従来とは違った形で要望していく必要があると言える。

神戸空港の未来が更に開けたものとなるかは、神戸市・兵庫県・地元経済団体による今後の取り組みに掛かっている。

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