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特集

【関西3空港の行方 第4部】一元管理とその後の独立採算 

関西空港の国際線到着ロビー

2012年12月、ソラシドエア・エアドゥが相次いで神戸空港への就航を表明した。天草エアラインの撤退以来、2社運航が続いてきた神戸空港にとって大きなニュースとなった。

一方、関空を拠点とするピーチなどのLCCが好調と報道される中、格安運賃を武器に成長を続けてきたスカイマークは、再就航した関空路線から2013年3月をもって再撤退することを同月発表した。

進む棲み分け、路線再編

ソラシドエアとエアドゥが神戸空港への就航を表明した背景には、2013年6月に行われる伊丹空港の長距離便運航の規制緩和がある。

ソラシドエアとエアドゥは共に全日空との提携関係にあり、全路線で全日空との共同運航が行われている。今回の神戸空港への就航表明の裏には、全日空が神戸路線の運航から手を引き、提携関係である両社に同路線の運航を委ね、その一方で長距離便の運航規制が緩和される伊丹空港では、自社運航の新千歳・那覇便を増便するという全日空の戦略が垣間見える。

神戸空港としては2社の新規就航を手放しでは喜べない状況であると言えよう。もちろんデメリットだけではなく、九州路線が強いソラシドエア、北海道・東北路線が強いエアドゥが就航するということで両社による新規路線の開設も期待できる。実際、ソラシドエアは鹿児島線の開設も検討するとしており、今後の動きが注目される。

LCCの就航ラッシュで活気に沸く関空も例外ではない。LCCの参入によって供給過剰になった新千歳・福岡・那覇線では、既に全日空・日本航空が減便・機材小型化を進めており、前述の伊丹空港の長距離便の運航規制緩和で更にこの動きが加速すると予想される。加えて、スカイマークが再撤退を決めており、関空はますますLCCの比率が高まることになるだろう。

2空港とは対照的に、伊丹では規制緩和が進み、大手2社が長距離路線を中心に増便を計画。伊丹は大手2社、神戸は新興3社(スカイマーク・ソラシドエア・エアドゥ)、関空はLCC中心の運用となっていく様相を呈しており、3空港の棲み分けは着実に進んでいるといえる。

関空浮上のカギ、LCCは好調か?赤字運賃の実情

報道を賑わせているLCCであるが、エアアジアジャパンは目標搭乗率を達成できなかったとして、就航わずか4ヶ月で社長が交代する事態となっている。一方、唯一関空を拠点としているLCCのピーチは比較的好調であるとの報道が多い。LCCは本当に好調なのか、ピーチを例にとって見てみよう。

航空各社のコスト体質・採算ラインを測るものとしてユニットコストという指標がある。この指標は、座席1席を1キロ輸送するのに掛かるコストを表しており、この指標が安ければ安いほど低コスト体質の航空会社という事になる。

現在、業界で一番ユニットコストが安いとされているのはスカイマークであり、7.69円(2012年9月時点)とされている。ピーチも同じユニットコストであると仮定すると、関空ー新千歳線(約1,100km)の採算ラインとなる平均客単価は満席で約8,800円、同社の就航半年の平均搭乗率79%を基にすると約11,000円との試算になる。(ちなみに、ピーチはユニットコストの目標を6円に設定しているが、現時点では8~9円程度とされている。)

そのため、1万円を超えるような高値運賃が売れ残り、セール運賃を乱発している現状では黒字化への道のりはまだまだ遠いと言えるのだ。もちろん、同社は就航後3年後を目途に黒字化を目指すとしているため、初年度の赤字は想定内とも言えるが、今後平均客単価の引き上げが成功しなければ、ピーチに限らずLCCの行く末は言うまでもない。

◆参考◆ピーチ 関空-新千歳線の運賃(2013年1月時点)

【ハッピーピーチ】4,790円~19,990円
【ハッピーピーチ プラス】6,490円~24,990円
【2012年12月6日~2013年1月31日 セール運賃】3,370円(金~月曜:4,770円)
【2013年1月16日~3月30日 セール運賃】2,970円(月・金・土・日曜:4,370円)
【2013年1月8日~1月10日 セール運賃】1,000円

今後目指すべき姿とは

LCCターミナルを有し長距離国際線にも対応できる関空、都市部に近くビジネス需要が旺盛な伊丹、都市部に近く実質24時間運用が可能な神戸。3空港の棲み分けが進んだ今こそ、3空港の一元管理が望まれる絶好の機会である。

3空港のそれぞれの強みを生かし、効率的に運用することで、3空港の収入を最大化することができる。そのためには、3空港が同じ経営母体の傘下であることは不可欠である。現在、国は神戸を脇に置いたまま伊丹・関空の経営統合を進めているが、神戸と伊丹・関空で利害関係が有ってはならず、3空港の経営統合は避けては通れない。

また、関空の負債が解消した後は、再び独立採算で運営していくことも考慮しなければならない。それがまた市場原理の本来の姿であり、各空港が切磋琢磨することで利用者の利便性向上に繋がってくるのである。

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