
関西エアポートは30日、伊丹空港(大阪国際空港)の英語表記を”Osaka Itami Airport”に変更すると発表した。今後、同社のホームページをはじめ、外国人向けの媒体や空港のサイン等の英語表記は”international”を冠しない新名称へと改修されるが、「大阪国際空港」という正式名称に変更はない。
これまで伊丹空港の英語表記は、正式名称の「大阪国際空港」を訳し”Osaka Iternational Airport”と表記されてきた。そのため、訪日外国人が関西国際空港と大阪国際空港を同一空港と捉えてしまう事例が度々発生していたとみられ、今後はこのように誤認するケースが減少する事が期待される。
正式名称に「国際空港」が付くのは全国に5空港

今や日本全国の地方空港で国際線が発着し、「国際空港」という概念は曖昧になりつつある。加えて、地方空港の中には愛称として「国際空港」という名を冠しているケースもあり、仙台空港では「仙台国際空港」、佐賀空港では「九州佐賀国際空港」という愛称が使用されている。
だが、正式名称として「国際空港」を冠しているのは、成田国際空港・東京国際空港・中部国際空港・大阪国際空港・関西国際空港のみで全国に5空港しか存在しない。この中でも、大阪国際空港は異色で、国際線が飛ばない「国際空港」として今日現在も運用されている。
1994年に開港した関西国際空港への国際線全面移管に伴い、大阪国際空港は国内線専用空港へと姿を変えた。だが、地元からの強い要望などもあり「国際空港」という名は残されたまま現在に至っているのである。


国際線の飛ぶ神戸「空港」と国際線の飛ばない大阪「国際空港」
関西国際空港と大阪国際空港の間違いは日本人の利用者でも度々発生しており、日本語に馴染みのない訪日外国人が間違えるケースはこれ以上に相当数あったと見られる。だが、直近まで伊丹空港の英語表記は”international”を含んだ表記が用いられており、運営会社である関西エアポートは特にアクションを起こしてこなかった。
今回、伊丹空港の英語表記を変更する理由について、関西エアポートは「関西国際空港と混同されるケースが確認されており、訪日外国人旅客による空港間違いのリスクを減らすことを目的としている」とだけ説明しているが、今回表記変更に至った背景にはもう一つ大きな事情が存在する。それは神戸空港の国際化である。
今年4月から神戸空港は国際空港への第一歩を踏み出し、関西圏における国際線は関西空港と神戸空港で取り扱われることとなる。これまでの「国際線といえば関西空港」という常識が一変することになるのだ。
同月以降は関西国際空港に加えて、国際線の発着する神戸「空港」と国際線が発着しない大阪「国際空港」が併存することになり、訪日外国人にとって現状以上に複雑となる事は容易に想像がつくところである。そのため、関西エアポートは英語表記を工夫することで、空港の区別を容易にするよう図ったものとみられる。

“KANSAI”と”KOBE”の周知を

国際線が発着するという事を強調するため、国際化を機に神戸空港に「国際空港」という名を冠した愛称を付けることも一つの策として考えられる。しかし、全国の地方空港の例を見ても、愛称というのは広く浸透しているとは言い難く、わざわざ「国際空港」という愛称を付ける必要性はそこまで高くない。今回、伊丹空港の英語表記のみを見直した背景にはそのような事情もあるとみられる。(ちなみに、神戸空港には既に「マリンエア」という愛称が付けられているが、ほぼ浸透していないのが現状である。)
また、関西3空港にはマルチエアポート※制度が導入されており、関西空港・伊丹空港・神戸空港は大阪圏の同一空港と見做される。そのため、航空会社では「大阪(関西)」「大阪(伊丹)」「大阪(神戸)」という表記が広く使用されており、このマルチエアポート制度が3空港の誤認に拍車を掛けているという面もある。
※マルチエアポート…同一地域内にある複数の空港を一つの空港と見做す制度のこと。マルチエアポートとして指定された空港相互間では、追加料金無しで便の変更が可能となる等のメリットがある。
今後、神戸空港で国際線を運航する航空会社から”OSAKA(KOBE)” “OSAKA(KANSAI)”という表記で航空券が発売される可能性は十分にある。神戸空港の国際化を機に、関西では”KOBE”と”KANSAI”の2つの空港から国際線が発着しているという事を訪日外国人に対して広く周知していくことが必要だろう。