関西・伊丹・神戸の3空港を運営する関西エアポートは2020年度の期末連結決算を発表した。
決算概要
関西エアポート全体の連結決算は画像の通り。
営業収益は前年度から大きく減少し、キャッシュフローの指標であるEBITDAも約11億円の赤字、純損益は345億円の大幅な赤字を計上することとなった。(前年度である2019年度の純損益は約335億円の黒字であった。)
新型コロナウイルスによる航空需要の落ち込みを受けて、中間決算は178億円の純損失を計上していたが、年度を通しての赤字額は上期とほぼ同程度の赤字額が積み上がったことになる。
2020年度期末連結決算 新型コロナウイルスの影響により、大幅な減収・減益
関西エアポート株式会社は、2020年4月から2021年3月までの第6期会計年度連結決算において、営業収益は572億円、営業損益は428億円の損失、経常損益は520億円の損失、当期純損益は345億円の損失を計上しました。
関西エアポート プレスリリース(2021.6.3)
関西エアポート神戸はEBITDA黒字
連結決算に含まれる関西エアポート神戸の概況も明らかとなった。
決算資料から読み解くと、関西エアポート神戸の営業収益は約18億円、キャッシュフローの判断指標であるEBITDAは約4億円の黒字となったが、最終的な純損益は約2億円の赤字となっている。
関西エアポート全体の営業収益は、前年度の約2,158億円から約572億円と約73%の大幅な落ち込みとなった一方で、関西エアポート神戸に限ってみれば前年度から約36%の落ち込みに留まった。
伊丹空港に関しても神戸空港同様に収支の落ち込みは限定的であるとみられるが、関西空港の赤字分を穴埋めするには至らず、依然としてグループ全体の資金流出が続いている。
関空T1の改修工事は始まるが…
着工が延期されていた関西空港第1ターミナルの改修工事は、約半年遅れて2021年5月に着工を迎えた。
航空需要の先行きが見通せないことから、テナント区画の設計が難航している模様だが、保安検査場などの整備などは2025年に開催予定の大阪関西万博に間に合うように工事が進められている。
事業費は700億円規模。新型コロナの影響で着工が半年ほど遅れたが、国際線の保安検査場の整備などは、万博開催に間に合う見込みとしている。一部商業施設のオープンは26年秋ごろになるという。
朝日新聞デジタル(2021.5.29)
コロナ禍で、関空では20年度の国際線旅客が前年度比99・1%減の約20万人に落ち込んだ。関西エアの山谷佳之社長は「新型コロナが収束すれば、航空需要は回復する。その時期に備えて必要な投資を続けたい」と話した。
新型コロナウイルスは、関西空港第1ターミナルへの投資計画にも影響を与えかねないと懸念されていたが、国からの改修費用支援や銀行などからの新たな融資枠設定をこぎつけ、関西エアポートは無事に改修工事をスタートさせた。
だが、前回までの関西3空港懇談会で議題となっている「関西空港の発着能力の拡充」や「神戸空港への国際定期便の就航検討」など、更に大きな課題に対しての動きは依然として見られない。足下の経営がおぼつかない現状は理解できるものの、関西エアポートには更に大きな将来像を示すことが求められている。
政府は15日、2021年に着工する関西国際空港の第1ターミナルの改修費を支援することを決めた。約700億円とみられる事業費のうち、最大で半分を賄う。新型コロナウイルス感染拡大による旅客の激減で関空を運営する関西エアポートは経営が厳しくなっており、工事の進捗に影響が出かねないと判断した。
日本経済新聞(2020.12.15)
関西、大阪(伊丹)、神戸の3空港を運営する関西エアポートは14日、取引銀行などから最大530億円の融資枠の設定を受けたことを明らかにした。2025年大阪・関西万博を見据えた大規模改修工事に備えて、手元資金を厚くするのが狙い。新型コロナウイルス禍で利用客が激減するなど厳しい経営が続く中、収束後をにらんだ投資を続ける。
産経新聞(2021.5.17)