
任期満了に伴う神戸市長選挙が先日告示され、現職を含む4人が選挙戦に挑んでいる。今回の選挙では、大きな争点は存在していないが、都心部のタワマン規制の是非や都心の再開発、神戸空港の国際化の取り組み等に有権者の関心が集まっている。
この中でも、神戸空港の国際化に関しては、今後も神戸市だけでなく関西全体に大きなインパクトをもたらす非常に重要な施策である。長年、神戸空港の将来像について提言を続けてきた当サイトとして、今回の市長選に際し、市の空港施策について以下改めて批評・提言を行いたい。
行き当たりばったりの国際化
今年4月より神戸空港は国際化という「第2の開港」を迎えたが、ハード整備を中心に「行き当たりばったり」感が拭えない状況となっている。この先に控える2030年前後の国際定期便の受け入れが非常に不安な状況と言わざるを得ないのだ。
特に、今年2月に久元市長が定例会見で発した「定期チャーター便は予想外であった」という趣旨の発言はこれまでの神戸市の「行き当たりばったり」感を如実に表している。神戸市は今年4月の国際化に向けて「単発」「不定期」の国際線のみを想定していたというのだ。同月から神戸空港で解禁されたのは「国際チャーター便」であるが、「国際チャーター便」と聞いて「不定期」「単発」のチャーター便のみを想像するのは、航空業界について無知にも程があると言わざるを得ない。「国際チャーター便」には、「定期チャーター便」という運航形態があることは航空業界の常識であり、神戸空港も当然その運航を想定するべきであるという事は当サイトでも長らく指摘していたことである。
過日、第2ターミナルの問題点について改めて取り上げたが、同ターミナルをはじめとするハード整備にも利用者や航空会社の視点が完全に欠落しているのが現状である。今後、2030年前後の国際定期便の受け入れに向け、メインターミナルの整備やエプロンの拡張工事が行われる予定となっているが、今のままでは同じ轍を踏みかねない状況といっても過言ではないのだ。


ターゲットは誰か?神戸空港の特徴を活かせ

神戸空港の国際化が正式合意されたのは2022年9月に開催された関西3空港懇談会であり、国際化を迎えたのは約2年半後の2025年4月である。そのため、このタイトなスケジュールを考慮すると第2ターミナルなどのハード整備に関して「よく頑張った」と評価する声もあるが、現在取り上げられている問題点についてはその殆どが開業前から容易に想像がつくものであった。
第2ターミナルの問題点については、別の記事で取り上げているためここでは個別に取り上げないが、共通しているのは「ターゲットが誰か」を見失っている点である。インバウンドにターゲットを置いているのであれば、インバウンドに向けた免税店や飲食店を充実させるべきであるし、アウトバウンド(日本人客)をターゲットとしているのであれば、日本人が利用する価格帯の飲食店・コンビニ等を配置し、空港駅や駐車場からの利便性も極限まで高めるべきである。もちろん、現実問題としてどちらかのみをターゲットとする訳にはいかないが、現在の設計・コンセプトはそのどちらでもない。アウトバウンド・インバウンド双方から不評となっているのが現状である。
神戸空港は国土軸・都市部に位置し、ビジネス需要や富裕層の需要を取り込みやすい立地であるという事は国際化特集ページでも取り上げている。現在、神戸空港ではフルサービスキャリアの国際線のみを受け入れており、神戸市もその立地特性や利用者の属性は何となく意識していると考えられる。だが、第2ターミナルビルにはラウンジや飲食店などの旅客が快適に時間を過ごすための施設は用意されておらず、フルサービスキャリアを受け入れるにはあまりにも貧相な設計である。また、シャワールームなどの施設が用意されていないという点からも、仁川・台北・上海等を経由した長距離客が利用するという想定も全くされていないのだろう。
神戸空港がターゲットとする旅客は誰なのか、また旅客や航空会社が求めているものは何なのか、市が想像力を膨らませることが出来ないのであれば、航空会社から直接提言を受けるべきではないだろうか?

商業・飲食施設にも「神戸らしさ」を

神戸市は第2ターミナルを整備するにあたり、「神戸らしさ」を標榜してきたが同ターミナルで「神戸らしさ」は殆ど感じられない。利用者が感じているのは「神戸らしさ」ではなく、バスハンドリングや空港駅までの動線などの「不便さ」ではないだろうか?
国際化特集ページでも提案しているが、「神戸らしさ」を押し出すのであれば、商業・飲食施設にも特色を出すことが不可欠である。例えば、殺風景な展望デッキには「有馬温泉」をアピールする足湯を、飲食施設として神戸が世界に誇る「神戸ビーフ」や「灘の酒」を味わえる鉄板焼レストランを整備するなど、「神戸空港にしかない」「神戸空港でしか体験できない」を形にするべきである。
また、例えば空港島のエアバス社と協力して、日本初となるエアバスのミュージアムをオープンさせれば、空港を目的地として訪れる利用者も一定数見込まれるであろう。(中部空港にはボーイング社とタッグを組んだフライトオブドリームスという商業施設があり、一定の集客効果を発揮している。)
現在、第2ターミナルの商業・飲食施設は免税店とソフトクリーム店の計2店舗のみに留まっており、とても「神戸らしさ」を感じられるような状況ではない。商業・飲食施設の充実には、利用者の増加つまり発着便数の充実は欠かせず、その関係性は表裏一体でもある。だが、このような「神戸空港にしかない」商業・飲食施設を整備すれば、その存在自体が大きな集客効果を発揮して利用客の増加にも寄与する訳であり、ターミナルビルの賃料を大幅に減免してでも積極的に誘致・整備を目指すべきだろう。

地方空港の「焼き増し」を脱却せよ
近年は全国の地方空港でも国際線の受け入れが進んでおり、中国・韓国・台湾・香港などの便は今やどの地方空港でも当たり前に飛んでいる状況である。そのような中、中途半端な商業機能を持つターミナルビルを構え、アジア地域に偏重した路線構成のみで満足しているようでは、胸を張って「国際化」を語ることは出来ない。どこの地方空港でもその程度の「国際化」は当たり前なのだ。
神戸空港の空港法上の位置付け上は「地方管理空港」いわゆる「地方空港」である。だが、旅客実績や空港の立地を鑑みれば、神戸空港が「拠点空港」に準じた地位を確立しているのは確かであり、今後は「関西」ひいては「西日本」の一つの玄関口を目指していかなければならない。THE 地方空港の「焼き増し」であってはならないのだ。


