2012年7月、存続・廃止の議論が重ねられてきた大阪国際空港(以下、伊丹)は国の管理を離れ、新関空会社に引き継がれた。
関空開港以来、長距離便の運航規制などを受けて路線・旅客は減り続け、2011年度の旅客数は約1291万人まで落ち込んだ。今後、新関空会社が伊丹・関空を一体的に運営することで、両空港の活性化が図られることに地元からは喜びの声が上がっている。
廃港検討から一転、利用拡大へ
伊丹を巡っては前大阪府知事が「廃止を検討する」と発言し世間を騒がせたが、反対の声が根強く、廃港について具体的な検討に入ることはなかった。
代わりに、地元関西の総意として「3空港の一元管理」という結論に至り、国は運営者が違う神戸こそ統合に加えなかったものの、関空と伊丹を経営統合させた。今後、2014年をめどに伊丹・関空の運営権を売却するべく、収益力の強化を図る。
今後考えられる収益強化策は、長距離便運航規制の緩和・プロペラ機枠のジェット機枠への転換である。特に、長距離便運用規制の緩和は、今後大手2社に伊丹回帰の動きを加速させると言ってほぼ間違いなく、伊丹空港の収益基盤の強化にも繋がると言えるだろう。
見えない将来像
経営統合の効果で伊丹は利用拡大に向けて動き出したが、その舞台裏では様々な議論が繰り広げられていた。新関空会社と大阪国際空港周辺都市対策協議会との協議である。
以前から、伊丹では増便に関して慎重な意見が多く、地元住民と政財界との意見が食い違うことは珍しくない。今回のプロペラ機枠のジェット機枠への転換も例外ではなく、慎重意見がある中で転換が決まった。地元との調整の必要性、これは新関空会社の運営権売却にも暗雲を漂わせかねない懸念事項として付きまとう。
経営統合後の基本方針素案には「廃港を検討する」との文言が盛り込まれた。今後も環境対策が重荷となり、新関空会社・自治体・政財界との意見が一致しないようでは、このままの姿で存続していくことは難しいと言わざるを得ない。伊丹の将来は今後新関空会社の運営権を握る者に託されようとしている。
将来像の見えぬまま、運営権売却に向けカウントダウンは始まった。