【神戸国際化特集②】関西空港神戸沖案の断念は神戸市の反対が理由ではない!?転換期を迎えた関空集約政策

徐々に人が戻り始めた関西空港国際線出発ロビー

関西では国際線の就航が関西空港に限定され、関空集約政策が長年続けられてきた。だが、第12回関西3空港懇談会では神戸空港への国際線就航が正式に合意され、これまでの関空集約政策から大きな転換点を迎えることとなった。関西空港誘致の歴史を振り返り、神戸空港の今後の活用について考える。

目次

神戸を縛り続けた「切り取られた歴史」

「神戸市は関空建設に反対したではないか!」

こういった批判を耳にした方も多いだろう。関西新空港計画が浮上した際、神戸沖も候補地となっていたものの、世論の反対によって神戸市は空港誘致を断念している。しかし、同時期に空港反対を掲げていたのは神戸市だけではない。実は泉州周辺自治体・大阪府も反対姿勢を示していたのだ。

では、なぜ関西空港は泉州沖に建設されたのか?それは「地域振興」を優先したからであった。国は大都市としてのインフラが既に整っていた神戸地域よりも、開発余地の大きい泉州地域の「町興し」を狙ったのだ。だが、都心から離れた立地とバブル崩壊が災いし、関西空港の利用は低迷。空港による経済効果を期待した泉州地域の自治体からは不満が噴出し、国の航空政策にも批判の目が向けられることとなった。

マスコミはこれらの経緯のうち「神戸市は一度関西空港を蹴った」という一部分のみを報道。その結果、「神戸市が関西空港建設に反対した結果、泉州沖に関西空港が誕生した」という誤った歴史が独り歩きし、その後神戸空港を建設した神戸市に対する批判的な世論が形成されることとなったのだ。

この世論も盾に、関西空港低迷の批判を交わしたい国交省は神戸空港への運用規制をかけ続けることになる。

「神戸沖」と「泉州沖」の違い

「神戸沖」の神戸空港と「泉州沖」の関西空港の決定的な違い、それは日本の国土軸に位置しているかどうかである。地図を見れば一目瞭然であるが、神戸空港は新幹線駅に近接し、広域からの集客も容易な立地となっている。

西日本という広い視野で利便性を考えた場合、広域集客が期待できる新幹線駅に近接しているかという事は重要な要素となる。特に、関西以西からの需要を取り込むには神戸の積極活用は欠かせない。

現在、関西における国際線は関西空港に限定されているため、関西空港へのアクセスに大きく時間が掛かる関西以西の国際線需要は取り込めていない可能性が高いのだ。この需要は岡山・広島・高松・徳島といった瀬戸内海エリアの空港、もしくは国内線を経由して羽田空港が受け皿として機能しているのが現状である。これらの需要を関西で受け持つという意味でも神戸の「立地」を生かさない手は無い。

神戸空港は大阪・関西万博の開催予定地やIRの整備予定地に最も近接した空港であり、今後は万博やIRへの送客にも大きな役割を果たしていく事が期待されている。「関西」における利便性という近視眼的な発想に囚われることなく、「西日本」という広域の利便性を念頭に積極活用を図っていかなければならないのだ。

関空・伊丹の「補完」が意味する事とは?

関西3空港から大阪駅までの最終電車比較(2022年9月時点の平日ダイヤ)

神戸空港は「神戸市周辺の航空需要に対応する地方空港」として整備され、関西3空港懇談会においては「関西・伊丹を補完する空港」として位置づけられている。特に、厳しい発着枠と門限がある伊丹空港の国内線の補完という面での期待は大きい。だが、現状は「補完」とは名ばかりな運用が続いているのだ。

上のイラストを見て頂きたい。関西3空港から大阪駅までの最終電車は、実は神戸空港が最も遅い。ちなみに、京都駅までの最終電車を比較したとしても、神戸空港は伊丹空港に次いで遅いのだ。(内陸に位置する伊丹空港は21時までの門限があるため、実際はここまで遅い時間帯に運航ダイヤを設定することは出来ない。)

そのため、伊丹空港の運用時間外となる深夜(早朝)時間帯で神戸空港が発揮できる役割は大きいと言えるのだが、未だに運用時間には制限が課せられ、利用者・航空会社不在の議論が続いている。

神戸空港は本来24時間運用が可能な海上空港である。今後就航が予定されている国際線の運用も含めて、「名ばかりの補完」から「真の補完」を目指していかなければならない。

真の「ハブ空港」とは?

成田空港の国際線出発ロビー

2009年頃、当時の民主党政権が羽田空港のハブ化方針を打ち出し、ハブ空港に関する議論が巻き起こった。また同じ頃、関西では大阪府の橋下知事(当時)が伊丹空港の廃止と関空ハブ化を掲げ、大きな論争となったのは記憶に新しい。

ここで登場した「ハブ空港」というワード。この定義や必要性を説明できる人はどれだけ居るだろうか?

「ハブ」とは車輪などの中心部を指し、「中心」「拠点」を意味する。すなわち「ハブ空港」とは「多くの路線が集まる拠点空港」の事である。ハブ空港では多くの路線が集積することから、路線間の乗継需要も大きいのが特徴で、日本の国際空港(成田・関空・中部など)も国際線・国内線双方の乗継基地となる「ハブ空港」となることを期待して整備された。

だが、いずれの空港も都心部から離れた立地が集客力を弱め、結果的に国内線は集積せず、国際線・国内線双方の乗継機能を持つハブ空港としては残念ながら機能していない。このような状況を受け、首都圏では羽田空港の再国際化・ハブ化政策が進む。日本で最大の国内線路線網を有する同空港はハブ空港としての下地が整っていることから、ハブ空港として白羽の矢が立ったのである。

また、東の国際拠点空港である成田空港は、JAL・ANAなどのフルサービスキャリアが拠点を置き、北米路線等が比較的充実していることから、コロナ禍においても日本を経由した国際線の乗継需要を上手く取り込み、国際線の乗継機能を持つハブ空港としては立派に機能している。

関空集約の意義とは?崩れていた大前提

リニューアル工事に伴い国内線専用スポットは移転・縮小される(出典:関西エアポート)

コロナ禍前、関西空港は急増するインバウンド需要を受けて過去最高の旅客数・発着回数を記録。「ハブ空港」として息を吹き返したかに見えたが、その路線構成の大部分が近距離アジア路線と乗継需要の小さいLCCを中心とした路線であった。そのため、現在のコロナ禍では関西空港は国際線の乗継需要を殆ど獲得できず、成田空港とは対照的に苦戦を強いられているのが現状である。

見かけ上は路線が集積し「ハブ空港」のように見えるものの、本来の「ハブ空港」としては機能していない関西空港。この現状については、関西エアポートの山谷社長も認めており、関西空港はインバウンドを街へ人を送り出す空港として機能させるとマスコミのインタビューで述べている。これを裏付けるように、現在関西空港第1ターミナルでは国内線エリアの移転・縮小、国際線エリアの大幅拡充が進む。

乗継需要を生み出すという観点では、空港・路線を集約することに一定の意義がある。だが、関西空港の路線構成や運営方針、関西3空港の運営会社が同一であることを考慮すると、関西で推し進められてきた関西空港への国際線集約政策が果たしてどれだけの意義があったのか。関西空港の「ハブ化」を語るのは簡単だが、果たしてその「ハブ化」は何を意味するのか、今一度立ち止まって考えなければならない。

2018年の台風21号では関西空港が水没し、関西における国際線の玄関口が消滅するという異常事態が発生した。災害時のバックアップという点でも、関西空港に国際線を集約し続けるデメリットは大きいのである。

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