神戸市は10日、神戸空港で整備を予定している新しいターミナルビルの完成イメージを一部公開した。示された完成イメージは2階建て(旅客動線は1階のみ、2階には展望デッキが整備される)となっており、ターミナルビル前面には緑地空間が整備されるとのことである。また、建設予定地についても当初の想定から大きく変更されている。
サブターミナル(仮称)は2025年に予定される国際チャーター便の受け入れと国内線の増便に利用される予定で、2月には神戸市が事業者を公募。先日、入札の審査結果が発表され、竹中工務店を代表とする企業グループが事業者として選ばれていた。
今後、神戸空港では国際化第一段階である2025年に向け、本格的な基盤整備がスタートすることになる。
示されたサブターミナルの完成イメージ
神戸市はサブターミナルの公募にあたり、「海に浮かび、森を感じる」というコンセプトを掲げていた。今回発表された完成イメージにおいては、ターミナルビル前面への緑地空間の整備が示されるなど、自然との調和を意識した設計となっている。
完成予定 | 2025年2月 |
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供用開始予定 | 2025年3月(サマーダイヤから供用開始) |
延床面積 | 約14,600㎡ |
建築面積 | 約12,900㎡ |
建物階数 | 地上2階 |
建物構造 | 鉄骨造 |
事業費 | 約90億円 |
事業者 | <代表企業>株式会社竹中工務店 神戸支店 <構成企業>湊建設工業株式会社 <構成企業>TC神鋼不動産建設株式会社 <構成企業>株式会社梓設計 関西支社 |
出発・到着ロビー
展望デッキ
コンセプト
施設配置は当初想定から大きく変更
当初、サブターミナルビルは既存ターミナルの西側に建設される予定であったが、最終的には既存ターミナルビルの北西位置に配置され、サブターミナルビル東側には緑地空間が整備されることとなった。当初、この位置には新たな駐車場を整備するとしていた。
新しい配置では、サブターミナル西側に余裕が生まれることになる。この用地について、将来的な駐機場拡張を想定しているのか、貨物ターミナル等その他の施設整備に充てられるのかは現時点では示されていない。
言わば巨大なバスラウンジ!?
サブターミナルの大きな特徴は、PBB(ターミナルビルから飛行機を繋ぐ搭乗橋)が設置されておらず、「バスハンドリングに特化している」という点である。そのため、乗客はターミナルビルから飛行機までバスで移動して搭乗することになり、いわばターミナル全体が巨大なバスラウンジ・バスゲートのようなイメージで運用されるのだ。
搭乗口(バスへの案内口)は国内線4箇所・国際線2箇所が用意され、うち国際線の1箇所は国内線と共用できる設計となる見込みである。そのため、国内線については出発便の輻輳にも比較的対応しやすい設計となる。
ちなみに、「サブターミナル」はあくまで仮称である。現時点では「サブターミナル」が正式名称として採用されるのか、はたまた「第2ターミナル」といった名称となるのかは未定であるが、開業までに正式名称が発表される見込みである。
「バス」の不便さを打ち消せるか
現在のターミナルビル・神戸空港駅からサブターミナルまでのアクセスは、巡回バスによる連絡が予定されており、LCCターミナルのような「少し不便な」感は否めない。(多少の距離はあるものの、徒歩でも移動することは可能である。)
特に、先程紹介したようにサブターミナルではバスでの搭乗が必須となる。このことから、ポートライナーの利用者は、神戸空港駅~サブターミナルとサブターミナル~飛行機の計2回バスに乗車することになるため、余計に煩わしさを感じる可能性がある。
サブターミナルの整備にあたってはファストトラベル※の推進が掲げられており、保安検査場にはスマートレーン※、受託手荷物検査にはインラインスクリーニング※が導入される予定である。そのため、従来のターミナルに比べると利用者のストレスを軽減させるポイントも多く、利用者が総合的にどのような評価を下すのか気になるところだ。
※ファストトラベル…IATA(国際航空運送協会)が掲げている「旅客手続き自動化プログラム」のことで、旅客手続の各段階に最先端の技術・システムを導入し、旅客負担を軽減することを目的としている。神戸空港のサブターミナルでは、出発ロビーから搭乗待合エリアまで搭乗に係る⼿続きに要する時間を約10〜15分、降機から到着ロビーまでに要する時間を30分以内とすることを目標としている。
※スマートレーン…手荷物検査用トレイの搬送自動化や複数旅客の検査レーン同時使用によって、待ち時間の短縮を実現する保安検査のこと。
※インラインスクリーニング…受託手荷物の検査をチェックインカウンターで行うのではなく、飛行機への搬送途中に行う検査方式のこと。
メインターミナルにも期待が高まる
サブターミナルの絵姿が示され、早期竣工が待たれるところであるが、今後はメインターミナルの整備方針にも更に期待が高まる。
今回、完成予想図が示されたサブターミナルは「国内線の増便」「国際チャーター便」の受け入れのみを想定している。そのため、2030年前後に予定されている「国際定期便」の受け入れに向けて、新たにメインターミナルが整備されることになっており、こちらがあくまでも「メイン」のターミナルとなる予定なのだ。
現在、メインターミナルの整備については神戸市と関西エアポートとの協議が続いており、その規模・内容等については示されていない。しかし、現在のターミナルビルは、既存の国内線で処理能力がパンクしているため、大幅な改修もしくは建て替えは避けられないとみられる。
今後、サブターミナルに続いて整備されるメインターミナルについても、この度示されたサブターミナルに引けを取らない完成度となることを期待したい。