現状・課題

目次

就航路線

国内線

開港当初はANA・JAL・SKYの3社が就航

開港当初は、日本航空(JAL)・全日本空輸(ANA)・スカイマーク(SKY)の3社で7路線27往復便が運航されていた。

しかし、地方路線の搭乗率が伸び悩んだことから、JAL・ANAは神戸発着の地方路線を徐々に縮小。2010年頃までは、新千歳・羽田・那覇線などの幹線が中心の路線網となっていた。

2010年には日本航空が経営再建を理由に神戸空港から撤退。2008年から神戸ー熊本線を運航していた天草エアライン(AMX)も搭乗率の伸び悩みを受け、同じく2010年に神戸空港から撤退している。

一方、日本航空の撤退を機にスカイマークが神戸発着の路線網を拡大し、その後はソラシドエアとエアドゥの就航も続いたことから発着枠は飽和状態で推移。その後、2019年には発着枠が拡大(1日30往復→40往復)されたものの、フジドリームエアラインズの新規参入やスカイマークの増便などで発着枠は飽和状態が続いてきた。このような状況を受け、2025年には再び発着枠が拡大され(1日40往復→60往復)、現在は各社の新規就航・増便に対してある程度柔軟に対応できる体制となっている。

2025年サマーダイヤ (新潟線以外は1日往復数)
 ANASNJADOSKYFDATOK
羽田26
新千歳124
那覇34-5
下地島1
仙台2
茨城3
長崎3
鹿児島3
松本2
花巻1
青森1-2
新潟週4
38-41
開港当初 (1日往復数)
 JALANASKY
羽田227
新千歳22
那覇21
仙台11
新潟2
熊本1
鹿児島22
27
かつて就航していた航空会社

JAL・JEX・JTA(日本航空グループ) 
AMX(天草エアライン)

かつて就航していた路線

成田・米子・出雲・高知・福岡・熊本・石垣・新石垣

国際線

運用実績

開港当初から神戸市が試算した需要予測を下回っているが、2007年度には297万人の利用があり、需要予測の約93%を達成している。

2008年度はスカイマークの乗組員不足による大幅欠航の影響、2009年度は景気の落ち込みや新型インフルエンザなどの影響、2010年度は神戸空港から日本航空が撤退した影響で、旅客数は2008年度から3年連続で減少傾向にあった。

しかし、2011年度はスカイマークの新規路線の開設などで旅客数は250万人台まで回復。2012・2013年度は関空に格安航空会社が就航した影響で旅客数は一時的に落ち込んだものの、2014年度以降は旅客数は再び回復傾向となり、2017年度から2019年度までの旅客数は3年連続で過去最高を記録した。

2020年度は新型コロナウイルスの影響で開港以来最悪の落ち込みを記録したが、その後は着実な回復を見せており、2022年度後半の単月(月次利用実績はコチラ)ではコロナ禍前の実績にほぼ回復。2023年度と2024年度は過去最多の実績を更新しており、2025年度以降も国際化と国内線発着枠の増枠によって更なる旅客数の増加が見込まれている。

航空貨物に関しては、2014年3月末で全日空が取り扱いを終了したため、2014年度から貨物取扱量がゼロとなっている。

旅客数(万人)航空貨物量(万トン)
年度旅客数需要予測貨物量需要予測
2005353190.244.13
20062742.6
20072971.95
20082582.06
20092341.68
20102224030.975.05
20112570.85
20122410.76
20132350.39
20142440
201525343405.09
20162720
20173070
2018319 (313)319 (434)0-(5.09)
2019329 (323)348 (434)0-(5.09)
2020121 (119)376 (455)0-(5.27)
2021175 (172)289 394 (455)0-(5.27)
2022311 (305)376 394 (455)0-(5.27)
2023344 (338)354 3770
2024361 (355)341 3760
2025国内線 377 395
国際線 47

※数値は四捨五入
※2005年度は2月16日~3月31日
※2018年度以降の実績・需要予測は関西エアポート神戸(株)の発表値を記載。カッコ内は神戸市発表の実績値と従来からの需要予測。(実績値に相違があるのは、実績の集計方法が神戸市と関西エアポートで異なるため。)

航空各社の動き

外資系航空会社の就航

神戸空港に到着した大韓航空とスターラックス航空

神戸空港では、開港から長らく国際線の就航が規制されてきたが、2025年4月18日から国際チャーター便の就航が解禁となり、国際化が実現することとなった。神戸空港の国際化を巡っては、新規就航に名乗りを上げた航空会社が20社程に上ったものの、ターミナルビルやCIQの処理能力の観点から大半のオファーが断られ、国際化初日に就航に漕ぎつけたのは、大韓航空(仁川線)・スターラックス航空(台北線・台中線)・エバー航空(台北線)・吉祥航空(上海線・南京線)の4社に留まった。

今後、ターミナルビルや駐機場などの拡張を経て、2030年前後を目途に国際定期便の就航が予定されており、更なる外資系航空会社の受け入れが予定されている。

トキエア新規就航

トキエア

2025年3月30日、新潟空港を拠点とする地域航空会社「トキエア」が神戸ー新潟線を週4往復で新規就航させた。同路線は、かつて全日空やフジドリームエアラインズが運航していたが、利用の伸び悩みから運休となっていた。関西地方と新潟県の往来需要は決して少ないわけではないが、多頻度で運航されている伊丹ー新潟線の存在に加え、週4便という便数の少なさからどこまで需要を取り込むことが出来るのか注目される。

フジドリームエアラインズ新規就航

神戸空港を関西の拠点に選んだFDA
神戸空港のFDAカウンター

2019年7月、富士山静岡空港・名古屋小牧空港を拠点に運航するフジドリームエアラインズが、神戸空港への新規就航を発表。2019年10月から松本・出雲線、同年12月から高知線、2020年3月から青森線を次々に就航させた。いずれの路線もJALとコードシェアを実施するため、間接的にではあるがJAL便名の神戸発着路線が復活することとなった。

また、スカイマーク同様に神戸を「西日本の拠点(ハブ)として育てたい」としており、今後の路線展開として札幌丘珠空港や東北地方への新規就航を示唆している。

同社は、2015年7月~8月にかけて神戸と丘珠空港(5往復)・稚内空港(5往復)・中標津空港(1往復)・青森空港(1往復)とを結ぶ団体向けチャーター便(計7往復)を運航するなど、関西圏への定期便就航の布石を打っていた。しかしながら、関西圏において伊丹・神戸は発着枠が満杯であったために、定期便は長らく実現せず、神戸空港の規制緩和を機に関西圏への進出が実現することとなった。

フジドリームエアラインズは関西空港にも参入余地があったものの、敢えて神戸空港の規制緩和を待って、スカイマーク同様に神戸を関西圏の拠点に選んだ。この事実は、神戸の利便性・将来性を高く評価した結果であり、今後の規制緩和の議論にも大きな影響を与えると言えるだろう。

スカイマーク経営破綻

神戸空港を西日本の拠点と位置付けるスカイマーク
神戸空港のスカイマーク格納庫

2015年1月28日、航空3位のスカイマークは民事再生法の適用を申請し、経営破綻した。

経営再建に伴うスポンサー争いは米デルタとANAの一騎打ちとなり、最終的にANAに決定することとなった。経営立て直しの一環として、神戸発着路線を中心にANAとの共同運航が行われる見込みであったが、経営独立性維持の観点や搭乗率が比較的高水準で推移していることから交渉は難航。結果的に共同運航には至らず、2016年3月をもってスカイマークの民事再生手続きは終了した。

エアドゥ・ソラシドエア新規就航

新千歳線を運航するエアドゥ
那覇線を運航するソラシドエア

2013年6月1日からソラシドエアの神戸-那覇線、同月21日からエアドゥの神戸-新千歳線が就航した。

ソラシドエアは神戸-那覇線の需要動向を見極めた上で、九州各地との路線開設を目指すことを表明しており、今後はソラシドエアによる九州路線、エアドゥによる北海道・東北路線の新規開設が期待される。

両社の新規就航で、ANAの新千歳線は減便、那覇線は休止となり、両社との共同運航が開始された。

日本航空撤退

かつて神戸空港にあったJALカウンター
JAL最終便の見送り

2010年5月31日をもって経営再建中の日本航空が神戸空港から姿を消した。

日本航空の神戸発着路線は、全国的に見ると搭乗率も高く、年間旅客数も約90万人にのぼる比較的大きな拠点であった。そのため、神戸発着路線が実際に採算割れとなっていたかは疑問であるが、経営効率化という建前のもと、神戸空港から同社は完全撤退することとなった。

その後、神戸市はたびたび日本航空に再就航を働きかけているが、発着枠に空きが無いことから難色を示されている。運用規制の緩和は、日本航空再就航への最低限の条件だと言えるだろう。

また、一方で日本航空の撤退で空いた発着枠を利用し、スカイマークは神戸発着路線を大幅に拡大。西日本の拠点空港としての地位を確立する契機にもなった。

土地利用計画

神戸市航空機動隊・兵庫県航空防災隊 格納庫
エアバスヘリコプターズジャパン 神戸空港事業所

空港島の造成は当初予定の2007年から約6年遅れて、2013年12月に竣工。空港島の空港施設用地以外は民間への分譲地として整備されたものの、計画通りには売却が進んでいない。

しかし、未売却の土地は、神戸空港の国際化に伴う空港機能の拡張用地として利用されるなど、国際化を機に土地利用の方針は変わりつつある。今後、神戸空港が国際化を迎えるにあたって、神戸市は空港島のビジョンを見直すとしており、商業施設・宿泊施設などの誘致も視野に入れる方針である。

現時点で売却済の用地(一部賃貸も含む)は以下の通り。

企業名用地名面積備考
ワールドブライダル緑地約0.5ha結婚式場「ラヴィマーナ神戸」
2014年、隣接地約0.15haを取得。同年10月、拡張部開業。
上組物流関連用地約1.6ha保税倉庫「上組神戸空港島ロジスティックセンター」
上組物流関連用地約2.7ha保税・定温倉庫「上組神戸空港島第2ロジスティックセンター」
2014年11月竣工。
トヨタレンタリース兵庫
トヨタレンタリース神戸
Fレンタカー兵庫
業務施設用地約0.4haレンタカー店舗として開港当初から3社が進出。
2012年、Fレンタカー兵庫が隣接地約0.05haを取得・拡張。
学校法人ヒラタ学園空港島関連用地約2ha操縦士や整備士の育成などを行う「神戸エアセンター」
2009年7月完成、2018年4月運用開始。
神戸市航空機動隊
兵庫県航空防災隊
空港島関連用地約1.7haポートアイランドから神戸ヘリポートを移転し、格納庫を整備。
2017年度着工、2018年4月運用開始。
エアバスヘリコプターズジャパン空港島関連用地約2ha伊丹空港から移転し「神戸空港事業所」として開業。
ヘリコプターなどの機体整備やパイロットのSIM訓練を行う。
2018年、隣接地約0.05haを取得。2020年1月竣工。
スカイマーク空港施設用地約0.5ha整備士の居室も備えた格納庫を新設。
制限区域内に新設されたため、土地は分譲ではなく賃借の形をとる。
2011年11月竣工、2012年1月供用開始。
カツヤマキカイ物流関連用地約2.5ha西側区画(約0.4ha)に本社棟、東側区画(約1.35ha)に産業棟を新設。
2020年、本社棟隣接地約1.1haを取得し工場を新設。2021年1月竣工。
川崎重工物流関連用地約1.0ha水素サプライチェーンの実証実験のため、液化水素を積み下ろす装置や貯蔵タンクを建設。
神戸市が隣接する岸壁を整備、用地は賃貸の形をとる。2020年6月運転開始。
神戸空港島進出企業一覧
神戸空港島区画図(出典:神戸市)

管理収支

神戸空港は「市税を一切投入しない」という公約を掲げ開港を迎えたため、「空港運営によって生まれた黒字額を空港建設費の償還に充てる」という全国でも異例となる収支計画が立てられている。実際に基本的収支は開港以来黒字が続いており、この黒字額によって空港建設費の返済(市債の償還)が行われてきた。

しかし、この収支計画は「各航空会社が機材を段階的に大型化していく」との前提で立てられていたため、全国的・世界的に主流となりつつあった「小型機・多頻度運航」の流れを受け、当初の計画通りには市債償還は進んでいない。そのため、開港4年以降は黒字の積立金を切り崩し、2011年度から2017年度かけては約27億8千万円の資金を新都市整備事業会計から借り入れている。

2018年度には神戸空港は民営化を迎え、関西エアポート神戸による運営が開始された。同社は42年間にわたり空港施設・旅客ターミナル等を一体的に運営。その対価として191億円4千万円(アップフロントフィー4億5000万円、アニュアルフィー4億4500万円×42年)と収益連動負担金(毎年度営業収益のうち20億円を超えた部分の3%)を神戸市に支払う契約となっており、神戸市はこの運営権収入を柱に市債の償還を続けている。

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管理収支 見通し (単位:百万円)
 2006年度2007年度2008年度2009年度2010年度2011年度2012年度2013年度2014年度2015年度
着陸料 779  1,220  1,305  1,592  1,667  1,667  1,701  1,721  1,735  1,754 
停留料 8  11  12  26  26  26  26  26  26  26 
土地使用料 37  37  37  37  41  41  41  41  41  44 
地方交付税 120  196  240  328  410  484  546  598  625  623 
県補助金 158  209  227  251  299  199  266  332  386  417 
航空機燃料譲渡税 84  187  199  213  222  222  226  228  230  232 
雑入等 1  1  1  1  1  1  1  1  1  1 
収入合計 1,187  1,861  2,021  2,448  2,666  2,640  2,807  2,947  3,044  3,097 
 
管理経費等 739  739  739  739  739  739  739  739  739  739 
消費税 –  24  48  52  67  72  70  72  73  74 
市債償還金 323  547  795  1,148  1,411  1,654  1,847  1,989  2,054  1,977 
予備費 10  10  10  10  10  10  10  10  10  10 
支出合計 1,072  1,320  1,592  1,949  2,227  2  2,666  2,810  2,876  2,800 
 
管理収支 115  541  429  499  439  165  141  137  168  297
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管理収支 決算値 (2017年度は予算値、単位:百万円)
 2006年度2007年度2008年度2009年度2010年度2011年度2012年度2013年度2014年度2015年度2016年度2017年度
着陸料 (a) 899  899  738  675  606  732  736  698  647  928  738  755 
停留料 (b) 10  12  9  10  8  8  9  8  8  11  8  8 
土地使用料 45  45  45  44  44  75  84  84  83  83  84  83 
地方交付税 110  193  22  316  414  480  546  583  583  581  565  509 
県補助金 158  195  244  262  266  229  301  376  410  411  407  388 
航空機燃料譲渡税 197  195  182  187  184  164  178  171  337  454  475  350 
雑入等 74  15  149  233  442  495  529  579  454  304  415  515 
収入合計 1,493  1,554  1,599  1,727  1,964  2,183  2,383  2,499  2,522  2,772  2,692  2,608 
 
管理経費等 (c)  727  754  650  630  573  595  600  606  651  728  897  1,066 
消費税 –  –  44  25  22  21  24  32  27  27  63  50 
市債償還金 288  501  732  1,072  1,369  1,567  1,759  1,861  1,844  1,811  1,732  1,482 
予備費 –  –  –  –  –  –  –  –  –  –  –  10 
支出合計 1,015  1,255  1,426  1,727  1,964  2,183  2,383  2,499  2,522  2,581  2,692  2,608 
 
基本収支(a)+(b)-(c) 182  157  97  55  41  145  145  100  4  211  △151  △303 
管理収支 478  299  173  –  –  –  –  –  –  191  –  – 
新都市会計借入金 –  –  –  –  –  186  526  577  452  302  221  513 
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関西エアポート神戸(株)による収支計画・決算 (単位:百万円)
 2018年度2019年度2020年度2021年度2022年度2023年度2024年度
 実績計画実績計画実績計画実績計画実績計画見込み計画実績計画
営業収益2,663 2,588 2,796 2,803 1,7642,981 2,0562,7252,8422,9692,9402,9463,002
営業費用2,158 2,380 2,423 2,318 1,9012,528 1,7652,3472,3592,4302,4792,4932,610
営業利益504 208 373 485 △137453 291378483539461454393
経常利益372 71 250 354 △258321 237247358495461327267
当期純利益322 49 172 245 △186223 159171189344319227186
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