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パイロットの知恵袋

羽田空港では特殊なPAPIも!安全な着陸を支えるPAPIの話

滑走路脇に設置されている進入角指示灯。地上から視認すると赤色4灯が確認できる。

滑走路周辺には、航空機の安全な離着陸のため様々な航空灯火が整備されています。ここでは、そのうち「進入角指示灯(PAPI)」について解説。羽田空港で運用が始まった特殊なPAPI運用についても触れています。

PAPIとは?

滑走路脇に設置されたPAPI
(出典:青森空港関連資料 青森県)

PAPIとは”Precision Approach Path Indicator”の略で、日本語で「進入角指示灯」と呼ばれる飛行場灯火の一種です。

滑走路脇に設置され、航空機が適切な進入角に居る場合には 〇〇●●白白赤赤 の灯光が、適切な進入角よりも低い場合には ●●●白赤赤赤 、更に低い場合には ●●●●赤赤赤赤 の灯光が確認できるようになっています。(逆に、適切な進入角よりも高い場合には 〇〇〇白白白赤 、更に高い場合には 〇〇〇〇白白白白 の灯光が確認できます。)

通常、飛行中に客室からこの灯火を見ることはありませんが、ビジュアルアプローチやサークリングアプローチを実施している際には、客室の窓からその灯光を確認することも可能です。

我々パイロットはこの灯火のみを頼りに滑走路に進入している訳ではありませんが、航空機の安全な進入を担保する大切な施設の一つとなっています。

簡易式やヘリコプター用のPAPIも

旅客機が発着する空港には、4灯で進入角を示すPAPIが整備されていますが、実はA-PAPI(Abbreviated-PAPI)という2灯で構成された簡易式のPAPIも存在し、セスナ機などが発着する一部の飛行場で運用されています。また、ヘリコプター用のPAPIにあたるHAPI(Helicopter Approach Path Indicator)と呼ばれるものも存在します。

PAPIの設計・設置基準は様々

成田空港のRWY34Rでは敷地の制約からPAPIは滑走路右側に設置
(出典:航空路誌)

民間機が発着する空港では、殆どの滑走路にPAPIが整備されています。しかし、各空港の滑走路によって、その設計や設置位置に多少の違いがあります。

上の図は、成田空港のRWY34R末端付近を示したものです。PAPIは滑走路右側に設置されている事がお分かり頂けると思います。

原則、PAPIは航空機の進入方向から見て滑走路左側に設置されますが、空港の敷地の制約等によっては滑走路左側に設置出来ないことがあります。そのため、羽田空港のRWY34Rや成田空港のRWY34Rなど一部の滑走路では、滑走路右側にPAPIが設置されているのです。(海外では、滑走路の両側にPAPIが設置されている空港も存在します。)

さらに、左右の設置位置だけでなく、前後の設置位置にも空港によって多少の違いがあります。PAPIは「当該滑走路を使用可能な航空機のうち、パイロットの目と航空機の車輪の高さの差が最大となる航空機が、MEHT※の条件を満たして、公称進入角で降下した時のパイロットの目の位置の延長線が滑走路面に接する位置の横」に設置する事とされています。そのため、滑走路に下り勾配が付いている場合には、MEHTを確保するため、通常よりも奥にPAPIが設置されることもあるのです。

※MEHT…”Minimum pilot’s Eye Height over the Threshold”の略で、航空機が滑走路進入端を通過する時に車輪と滑走路面の間隔が9mとなる状態でのパイロットの目の高さを意味する。

また、PAPIが適正角を示す幅も、実は滑走路にILSが整備されているか否かによって以下のような差があります。

図からもお分かり頂けると思いますが、ILSのグライドスロープアンテナとPAPIは異なった位置に整備されています。そのため、それぞれの進入角情報の整合性を取るために、ILSが整備された滑走路のPAPIは適正角を示す幅を広げているのです。

※グライドスロープ…垂直方向の偏移情報を示す電波。民間機が発着する殆どの空港は3°の角度となっている。

PAPIの設定角は3°とは限らない!?

民間機のみが発着する空港では、PAPIは3°の進入角に設定されています。しかし、自衛隊・米軍飛行場では、2.5°~2.75°に設定されたPAPIも存在します。(戦闘機・軍用機の滑走路への進入角は3°よりも浅い為)
また、反対に3°よりも深い進入角が設定されたPAPI(後述)も存在し、日本では羽田空港に唯一整備されています。

必ずしも白白赤赤が正しい進入角ではない!?

先ほど触れた通り、PAPIは「パイロットの目と航空機の車輪の高さの差が最大となる航空機」つまり大型機の進入を基準に設置されています。そのため、小型機が滑走路に進入する際、PAPIの情報を完全には利用することが出来ないのです。

下のイメージ図からお分かり頂けると思いますが、小型機が適切な接地点に接地(着陸)するためには、PAPIよりも手前に目標を定めなければなりません。そのため、小型機が滑走路末端付近を通過する際は、PAPIの視覚情報を完全には参考にすることが出来ず、〇〇●●白白赤赤 の表示からは外れる形で進入しているのです。

さらに、ILS進入(ILSのグライドスロープ上)でのPAPIの見え方は、ILSのグライドスロープアンテナの設置位置によっても左右されるため、必ずしも 〇〇●●白白赤赤 での進入が正しい進入角に乗っているとは言えないのです。

羽田空港ではPAPIが2つある滑走路も

羽田空港のRWY16R/16Lに新たなPAPIが設置された(出典:航空路誌サーキュラー)
理論上、新たなPAPIからはRNAV進入中(進入角3.45°)も適切な情報が得られる
(出典:航空路誌サーキュラー)

実は、羽田空港のRWY16L/16Rで新たなPAPIが整備され、2021年12月2日から特殊な運用が実施されています。設定角3度の従来のPAPIに加えて、3.25度という深い設定角のPAPIが整備されたのです。

羽田空港では、2020年3月29日から都心上空を飛行する新飛行経路の運用が始まり、騒音低減のために通常よりも深い角度の進入方法が設定されたという報道が話題となりました。この新飛行経路を使用したRNAV進入は、進入角が3.45度に設定されているため、既に設置されていた設定角3度のPAPIからは適正な進入角の情報が得られなかったのです。

今回、新たに整備された設定角3.25度のPAPIはこの問題の解消を狙ったもので、進入角3.45度のRNAV進入が実施されている場合にのみ点灯されます。(悪天候時などILS進入が実施される場合や、設定角3.25度のPAPIが故障によって使用不可となっている場合には、設定角3度のPAPIが点灯されます。)

これら2つのPAPIは同時に点灯するわけではありませんが、単一滑走路にPAPIが2つ設置されるケースは極めて珍しく、国内では羽田空港唯一の運用となっています。

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