【市長選特集】中途半端が招く悪循環から抜け出せ!神戸空港の舵取り③

中途半端な運用が続く神戸空港第2ターミナル
目次

FDA減便が暗示する国内線の不透明さ

神戸空港を拠点の一つとして位置づけているFDA

今月下旬の冬ダイヤよりFDAは神戸路線の運航規模を大幅に縮小。これにより、冬ダイヤ期間に同社が毎日運航するのは松本線1往復のみとなる。同社は来年の夏ダイヤ以降の復便も示唆しているが、先行きは見通せない状況となっている。

最近、本邦航空会社の国内線の収益が悪化しているというニュースが頻繁に報道されている。これは、コロナ禍明けのビジネス需要の減少に加え、ドル建て支払いが多いという航空業界の構造に円安が直撃しているという事情が背景にある。FDAの運航規模の縮小は、この現状を如実に表していると言えるだろう。今後もビジネス需要の低迷や円安が継続するようであれば、国内線の運航規模は全国的に先細っていく可能性すらあるのだ。

市の需要予測はなぜ外れるのか

国内線の動向は全国的に陰りが見えつつある状況であるが、神戸空港の国内線旅客数は直近まで右肩上がりを記録。開港前に公表された需要予測に対してはやや下回る状況であるが、概ね達成していると当サイトでは評価してきた。しかし、その根拠となっている想定就航路線に関しては、予測と現状で乖離が生じているのが実態である。以下は開港前に示された需要予測(想定就航路線)と2022年に示された需要予測(想定就航路線)の一覧である。示された想定就航路線の中には、運休となった路線や未就航の路線が数多くあり、現状の就航路線とは乖離した状況となっていることがお分かりいただけるだろう。

開港前の需要予測(単位は万人)
2022年に示された需要予測

なぜ、このような乖離が生まれるのか?その要因には地方路線を多く抱える伊丹空港の存在が挙げられる。神戸空港と伊丹空港では利用者の商圏(ターゲット)が被っているということは開港前から指摘されてきた。これにより、神戸空港は伊丹空港が抱える運用制限(発着枠・運用時間・国際線規制)を補完するという大きな役割を担えているのだが、一方では伊丹空港に路線・需要を取られているという側面もある。

神戸市が需要予測で示しているように、神戸空港周辺から全国各地への航空需要が存在していることは確かであろう。しかし、その就航先へは既に全日空や日本航空が伊丹空港から他頻度で運航便を出しており、神戸空港から1便2便を運航したところで、利便性の面で伊丹空港に太刀打ちできず、神戸空港への集客が非常に困難なのだ。特に自家用車ユーザーは、往復で同一空港を使わざるを得ず、往復ともに使い勝手の良いダイヤで運航されていない場合、選択肢からは外さざるを得ない状況となる。

需要に対して過剰な運航便数を運航することは採算面で不可能である。だが、一方で中途半端な運航規模に抑えてしまうと、利用者の選択肢に入らないケースが増え、路線の維持自体が困難な状況に陥ってしまうのだ。FDAが神戸空港発着路線の運航に苦戦している一因もここにあると言えるだろう。

中途半端が招く悪循環

2023年には大阪駅と神戸空港を結ぶリムジンバスの運行が開始された

先程、運航便数が限定的・中途半端であるということが需要予測の想定就航路線に乖離が生じる一因であるということを指摘した。だが、運航規模が中途半端であるという状況は、路線維持の観点以外でもあらゆる面でプラス方向には作用しない。その最たる例を2つ挙げる。

まず1つ目がアクセス交通である。神戸空港開港時には西宮やOCAT方面等にリムジンバス路線が開設されたものの、短命で運休となっている。これはバスの運行本数が極端に少なく、ポートライナーや自家用車利用に全く太刀打ち出来なかったということに他ならない。その他のリムジンバス路線に関しても、多くが長らく運休となっていたが、2020年に国内線発着枠が拡大され、コロナ禍後に航空便の運航便数が増えると状況は一変。大阪駅や淡路島方面へのリムジンバスが開設されるなど、アクセス交通にも一定の盛り上がりが見られたのである。

つまり、航空便がある程度の規模で運航されていない場合、リムジンバスなどのアクセス交通を維持することも出来なくなるのだ。加えて、空港へのアクセス交通が弱体化すると、空港の集客力低下にも繋がり、航空路線の維持にも支障を来たすという悪循環に陥ることとなる。

2つ目はターミナルビル内の商業機能である。現在、国際線が発着している神戸空港第2ターミナルには商業機能がほぼ存在しない状況となっている。この状況については特集①などで幾度となく問題提起しているが、この状況を引き起こしている一因は、国際線の運航規模が中途半端であることに他ならない。

第2ターミナルでは国際線の便数を「敢えて」制限した状況が続いている。これについて、神戸市は「オペレーションに万全を期すため」という説明に終始しているが、便数を絞るということは利用者が少なくなるということを意味する。利用者が少なくなれば、当然ターミナルビル内の商業施設も採算が合わなくなり、商業機能は限定的となる。加えて、ターミナルビル内の商業機能が不足すると、利用者の満足度・快適度が低下し、利用者離れに繋がるという悪循環に陥るのだ。

このように航空便の運航規模が「中途半端」であるということは、空港にとって悪循環しか生み出さないのである。

神戸空港の目指す立ち位置は?

中部国際空港第1ターミナル

神戸市が2022年に公表した最新の需要予測では、神戸空港の将来的な年間旅客数は702万人(国内線512万人、国際線190万人)に達するとされている。この年間702万人という旅客数は、実は地方空港トップの旅客数を誇る鹿児島空港(2024年度旅客数573万人)を大きく上回り、一大拠点空港である中部空港(2024年度旅客数1103万人)に次ぐ規模である。

先程も触れたように、国内線は需要が先細りしつつある状況にあるため、国内線512万人という需要予測はやや過大となっている可能性はある。しかしながら、国際線190万人という需要予測に関しては、国際線は1日20往復便しか飛ばないという前提となっており、将来的には国際線発着枠の拡大を経て年間旅客数は702万人から更に上振れする可能性は十分に考えられるのだ。

このような事情を勘案すれば、神戸空港は少なくとも「中部空港」並みの拠点空港らしい将来像を目指すべきであり、将来的には年間旅客数1000万人の大台も視野に入れた将来ビジョンを描くべきだろう。

また、今後の国際線の受け入れ拡大に合わせ、際内乗り継ぎ需要に関しても、積極的に取り込んでいかなければならない。日本全国の地方空港にも国際線は当たり前に飛んでいるということは特集②でも指摘したが、各地方空港に飛んでいる便数・路線数は限定的であり、国際空港から国内線で各地へ移動する需要は少なからず存在する。

関西においては、関西空港が国際線のメインの受け入れ空港となっているが、国内線の地方路線は限定的であり、国際線から国内線への乗り継ぎ需要に関しては神戸空港が担っていく余地は十二分にあるといえるのだ。際内乗り継ぎ需要を取り込むことが出来れば、国際線・国内線双方の需要底上げに繋がり、現在課題となっている国内線路線網の維持にも大きく資することになる。

神戸空港の第1ターミナルビルは全国でも有数のコンパクトさを誇っている。これにより、神戸空港の利便性が高く評価され、利用者を順調に増やしてきたのは確かである。だが一方で、余裕の無いターミナルビルが仇となり、保安検査場やラウンジの混雑が常態化したり、国内線発着枠の増枠が遅れたりするなど、臨機応変に本来の需要を受け入れられない状況が続いてきた。今後は神戸空港の「良さ」を残しつつも、需要を取り溢すことのないよう適切な将来ビジョンを描き、ハード整備を進めていかなければならない。

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