
今月18日に迫る国際化に向け、神戸空港では第2ターミナルの整備工事が佳境を迎えている。この第2ターミナルは、主に国際チャーター便の受け入れに備えて整備されたことから、各報道では「国際線」の情報にのみ焦点が当たっているが、実は第2ターミナルには国内線エリアが整備されているのだ。
この国内線エリアの存在は何を意味するのか、また一度撤退したJALが神戸に戻ってくる可能性を考える。


国際線特化ではないT2

現在整備が進められている神戸空港第2ターミナルは、国際チャーター便の受け入れだけでなく、国内線の発着枠を増枠するため、手狭となっている第1ターミナルを補完する施設として位置づけられてきた。そのため、同ターミナルには実は国内線の受け入れ機能も盛り込まれている。
だが、当サイトでは既存の航空会社が利用ターミナルを分散して増便することは考えにくいと指摘してきた。実際に、これまで第2ターミナルの利用を表明した国内航空会社はおらず、スカイマークのカウンター諸施設を間借りしているフジドリームエアラインズや、先日新規参入したトキエアですら第2ターミナルへの移転を予定していないのが現状である。
4月18日の第2ターミナルの開業時点では、国内線エリアは稼働しない可能性が濃厚となっているのだ。
「JAL」のサインの目撃情報も

第2ターミナルの国内線エリアは、度重なる設計変更の際にも整備方針自体が見直されることは無く、当初よりも規模を縮小させながらも整備が進められてきた。また、同エリアの搭乗待合室内のベンチ等の備品も調達が進められ、いつでも稼働できるような状態に準備が進められている。第2ターミナルでの国内線の運航を公言している航空会社がいない中、如何にも不思議な状況と言えるのだ。
このような状況から、現在1つの可能性が浮上している。それは、2010年に撤退したJALの再就航である。実は、第2ターミナルチェックインカウンターのデジタルサイネージに「JAL」のロゴが映されていたという目撃情報も寄せられており、2010年に撤退したJALが神戸空港へと再び戻ってくる可能性が噂されているのだ。
ただ、JALは今年1月に発表したサマーダイヤ(2025年3月〜10月)においても神戸空港への就航は明言していない。そのため、神戸空港への就航に向けた具体的計画が存在するかは定かではないが、総合的な状況を勘案すると第2ターミナルの国内線エリアはJALの再就航に向けて準備されている可能性は十分あると言えるだろう。

異例だったJALの神戸撤退
JALが完全撤退してから約15年が経過し、神戸空港ではJALが飛んでいない状況は見慣れた風景となっている。だが、神戸空港ほどの旅客数を誇る空港にJALが飛んでいないという状況は実は極めて異例である。以下、2023年度の国内線旅客数上位30空港のランキングをご覧頂きたい。
順位 | 空港名 | 旅客数 |
---|---|---|
1 | 東京国際(羽田) | 61,759,883 |
2 | 新千歳 | 20,030,965 |
3 | 福岡 | 17,872,155 |
4 | 那覇 | 17,457,101 |
5 | 大阪国際(伊丹) | 14,793,159 |
6 | 成田国際 | 7,811,382 |
7 | 関西国際 | 6,826,591 |
8 | 中部国際 | 5,957,303 |
9 | 鹿児島 | 5,474,879 |
10 | 神戸 | 3,443,779 |
11 | 仙台 | 3,176,308 |
12 | 熊本 | 3,102,166 |
13 | 宮崎 | 3,040,070 |
14 | 長崎 | 2,858,013 |
15 | 松山 | 2,695,176 |
16 | 石垣 | 2,609,110 |
17 | 広島 | 2,517,078 |
18 | 宮古 | 1,755,051 |
19 | 大分 | 1,705,134 |
20 | 高松 | 1,586,162 |
21 | 高知 | 1,578,783 |
22 | 函館 | 1,569,699 |
23 | 小松 | 1,289,624 |
24 | 秋田 | 1,197,360 |
25 | 青森 | 1,155,776 |
26 | 岡山 | 1,144,615 |
27 | 北九州 | 1,075,618 |
28 | 徳島 | 1,046,100 |
29 | 旭川 | 1,016,701 |
30 | 出雲 | 1,014,527 |
この30空港でJALが就航していないのは神戸空港だけである。JALが就航していない現状は勿論、JAL以外の航空会社だけで全国10位の旅客数を叩き出しているという状況が如何に異例であるかお分かり頂けたのではないだろうか。
当サイトでは、2010年のJAL撤退に際し「神戸路線が採算割れではなかった」可能性について予てより指摘してきた。JALが神戸から撤退した当時、神戸空港におけるJAL便の年間旅客数は100万人前後、年間搭乗率も約70%(2009年度実績)で推移しており、拠点費用※を回収できないような採算割れに至っていたとは考えにくい状況であったのだ。
※各空港に運航便を飛ばすにあたって必要となる人件費や空港施設の利用料等
そのため、神戸路線が整理対象として選ばれたのは、不採算路線の廃止というよりも、近隣空港(伊丹・関西)への経営資源集中(経営効率化・スリム化)という意味合いが大きかったと考えるのが自然であろう。早期の経営立て直しが求められていた当時は、経営スリム化・経営資源集中も致し方なかったと言えるが、関西におけるJALのシェアを大きく落としたのもまた確かであり、今後方針転換を図る可能性は十分考えられる。
存在感を増す神戸空港

神戸空港からJALが撤退した当時、日本を代表する大手航空会社の撤退という出来事に、マスコミを中心として空港の将来を危ぶむ声も聞かれた。だが、今や神戸空港はJALが就航していた当時以上の盛況ぶりを呈している。今や神戸空港は全国でも指折りの旅客数を誇る空港へと成長しており、もはや細々と運営されている地方空港の域を脱しているのだ。
加えて、今月18日より神戸空港は国際化という「第2の開港」を迎える。神戸空港発着の国際線利用者が国内線に乗り継ぐケースは当然出てくる訳で、神戸空港発着の国内線需要も今後益々増加することとなる。特に、乗り継ぎ需要を取り込む上では、外資系航空会社とコードシェアを実施しているANA・JALの国内線の存在意義は非常に大きく、神戸空港にとってJALの再就航は悲願である。
また、JALにとっても新たな局面を迎える神戸空港を見て見ぬふりは出来ないはずである。関西3空港に路線を張るANAとは対照的に、現状ではJALは神戸空港での国際線需要(国内線への乗継需要を含め)をほぼ取り込めず、また伊丹空港でもこれ以上の成長余地が残されていないためだ。
長年、神戸空港の発着枠は飽和状態が続いていたが、今春より1日20往復分が拡大され、各社の新規就航・増便を柔軟に受け入れられる環境がようやく整うこととなった。仮に、今回取り上げたJALの再就航に向けた具体的な動きが現時点では無かったとしても、「国際化」を新たな武器として神戸市・関西エアポートはJALに対して改めて神戸への再就航に向けた働きかけをしていくべきだろう。

