来年4月18日からの国際化を控え、急ピッチで整備が進められている神戸空港第2ターミナル。しかし、同ターミナルは多くの課題を抱えていることも次々判明しており、残念ながらその課題の多くが解決されずに開業を迎えようとしている。
第2ターミナル開業まで半年を切り、これからの設計変更・方針転換は容易ではない。来年の開業に向けた準備は勿論、神戸市・関西エアポートは課題解決に向けた取り組みを並行して進めなければならない。
以下、第2ターミナルの具体的な課題と解決策について今後の改善提言としてまとめた。
課題① 空港駅から1階への動線
第2ターミナルは第1ターミナル(既存ターミナル)は勿論、ポートライナー神戸空港駅から孤立しているため、ポートライナーで空港へ訪れた利用者は連絡バスか徒歩で第2ターミナルまで向かわなければならない。いずれの場合も、神戸空港駅から1階に降りなければならないわけであるが、神戸空港駅には1階に降りる動線が階段しか存在しないのだ。
神戸空港駅に直結する第1ターミナル内には小さなエレベーター1基が整備されているが、このエレベーターは第1ターミナルの利用者が主に利用するものであり、加えてポートライナーで一度に利用者が押し寄せた場合に利用者を捌ききれないのは明らかである。また、2階テナント裏手にエスカレーター上下2基も整備されているが、そもそも第2ターミナルへのアクセスを想定したものではないため、動線が非常に悪いのが現状である。
国際線の利用者は、国内線に比べて荷物が大きくなる傾向にあるため、空港駅に階段しか整備されていないというのは致命的な欠陥である。後述する「空港駅と第2ターミナルを結ぶ連絡デッキ」の整備に時間を要するのであれば、せめてエレベーターの整備をしておかなければならなかったはずである。
課題② 空港駅からの連絡デッキ
神戸市は、第2ターミナルから神戸空港駅・第1ターミナルとの間はバスで接続するという方針に固執してきた。だが、利用者にとってはターミナルまでのアクセスがバスであるメリットはほぼ皆無である。この「バスでの接続」に関しては、市民はもちろん市会議員からも批判の声が寄せられており、神戸市は昨年「空港駅と第2ターミナルを結ぶ連絡デッキ」の整備について検討する方針を示した。
実際の設計図面にも連絡デッキに接続するコンコースが描かれており、将来的に連絡デッキの整備は進められるものと見られるが、開業には間に合わないこととなっている。過去の記事でも指摘しているが、第2ターミナルと空港駅間の直線距離はわずか300mである。この間にバスを走らせることに固執してきた市の姿勢は利用者視点からあまりにも乖離していると言わざるを得ない。たとえ暫定・仮設のような構造であったとしても、空港駅と第2ターミナルビルを結ぶ連絡デッキは可及的速やかな整備が必要である。
課題③ 駐車場の容量不足・動線
近年、神戸空港では繁忙期を中心に駐車場の飽和状態が続いており、その場しのぎの対応(臨時駐車場の開設)が続いている。当サイトでは、立体駐車場の整備を再三提案しているが、既存駐車場の立駐化は具体的な検討が進んでいないのが現状である。
そのような中、国際化によって利用者は更に増加することは明らかであり、既存の駐車場では対応できなくなるというのは言うまでもない。そのため、神戸市は第3駐車場の整備を進めているのだが、何とその整備位置は第1ターミナル東側のターミナルビル拡張用地が充てられているのだ。連絡デッキの整備が後手に回っていることからも推察できるが、神戸市としては自家用車の利用者は第3駐車場を利用し、第2ターミナルまでは連絡バスを利用してほしいというのが本音なのであろう。
また、第2ターミナルからは現在の第2駐車場が最も近い駐車場となるのだが、第2駐車場から第2ターミナル正面玄関までは横断歩道等の動線が整備されないことも判明している。これは、第2ターミナルの利用者が第2駐車場に殺到することを危惧した対策だと推察されるが、利用者の利便性を二の次とし、空港運営者の都合を優先した結果だと言わざるを得ない。
現在整備が進められている第3駐車場の収容台数は約400台程度であり、抜本的な駐車場の混雑解消には程遠い。そのため、当面はターミナルビルから大きく離れた臨時駐車場(収容台数約600台)の継続利用も前提としていると見られる。駐車場の抜本的な混雑解消と利用者の利便性向上を図るため、既存駐車場の立駐化と駐車場から第2ターミナルへの最適な動線整備は待ったなしの状況である。
課題④ バスハンドリング解消・商業施設の充実
第2ターミナルでは、空港駅からバスでの移動を強いられることに加えて、航空機への搭乗も全便がバスハンドリング※である。「神戸空港の国際線は全便がバスでの搭乗である」という事を知らずに利用する利用者も多いとみられ、開業後に利用者から多くの不満の声が寄せられることは容易に想像がつくところである。
※ターミナルビルから航空機までバスで移動し航空機へ搭乗する方式のこと
この「全便バスハンドリング」という問題点に関しても、市民・市会議員から多くの改善要望が上がっており、神戸市は将来的にボーディングブリッジ(以下、PBB)が整備できるよう第2ターミナルの設計を見直している。ただ、PBBの整備を含めたターミナルビルの拡張については、国際定期便就航に向けたメインターミナルの整備計画にも左右されるため、実際にPBBが整備されるかを含めて不確定な要素が大きいのが現状である。
そのため、当面は「全便バスハンドリング」という不便さを打ち消すような施策を矢継ぎ早に打っていかなければならない。ここまでに取り上げた「空港駅からの連絡デッキの整備」や「駐車場との動線改善」等もその一環であるが、特にターミナルビル内の商業・飲食施設の充実は不可欠である。過去の記事でも取り上げているが、第2ターミナルは飲食・商業施設が十分に計画されていない事が判明しており、現時点ではターミナルビル内の快適性への配慮も欠けていると言わざるを得ない。
もちろん、国際線の運航便数によってターミナルビルの利用者数は大きく変わってくることから、最初から大風呂敷を拡げて飲食・商業施設を充実させる事は難しいのも確かである。ただ闇雲に店舗数を追い求めるのではなく、伊丹空港・関西空港では巡り合えない魅力的なテナントを誘致するなど、「神戸空港から国際線を利用して良かった」と思えるような施設づくりが求められている。また、航空各社の就航便数の増加とともに、その旅客規模に見合った飲食・商業施設が確保されるよう、必要な改修も併せて進めていかなければならない。