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【神戸空港サブターミナル】歩行者デッキ新設に向けて検討か!?連絡バスから方針転換の可能性も

現在、神戸空港ではエプロンの拡張工事(写真左奥)が行われている。
詳細設計がまとまり次第、サブターミナルビルも着工を迎えることになる。(建設予定地は写真右奥)

今月下旬に開かれた神戸市会の中で、神戸市の久元市長は「新ターミナルと(既存ターミナルビル間)の歩行者デッキについて検討を進めたい」との考えを明らかにした。現在、神戸市は既存ターミナル・神戸空港駅と海上アクセスターミナル間を結ぶ歩行者デッキの整備に向けて検討を進めているが、これに加えてサブターミナルとを結ぶ歩行者デッキの整備についても検討が行われるとみられる。

これまで神戸市はサブターミナルと既存ターミナル間には歩行者デッキを整備する予定はなく、連絡バスを運行予定と説明してきたが、今後この方針が転換される可能性も出てきた。

批判が続出した「連絡バスの運行」方針

既存ターミナル・神戸空港駅と海上アクセスターミナル間には歩行者デッキの整備検討が進む(出典:神戸市資料)

神戸市はサブターミナル計画を公表した当初から、「サブターミナルと既存ターミナル間は連絡バスによって接続する」と説明。この方針に対しては、市民からの意見募集にも批判的な声が寄せられたほか、市議会議員からも見直しの必要性が指摘されてきた。特に、サブターミナルを発着する飛行機は全てバスハンドリングとなることから、神戸空港駅から飛行機に搭乗するまで2回もバスに乗る必要があるという点に関して多くの懸念が寄せられていた。

※バスハンドリング…乗客はターミナルビルと飛行機の間をバスで移動し、タラップ(階段)を利用して飛行機に搭乗する方法のこと

しかし、その方針は転換されることなくサブターミナル整備事業者の公募が行われ、落札した事業者からも連絡バスによる接続を前提としたサブターミナルの絵姿が示されている。

大規模な国際空港においては、分散したターミナル間を連絡バスによって接続するということは珍しい話ではない。しかし、現在進められているサブターミナル計画の内容を鑑みると、その必要性は相当低く、なぜここまで「連絡バスによる接続」に固執してきたのか、未だに不可解である。

わずか300mの距離に連絡バスは必要か?

関西空港において運行されている連絡バス(エアロプラザ⇔第2ターミナル)

神戸市はターミナル間に連絡バスを運行する理由として「お年寄りや子供連れの利用者の負担軽減」等を挙げている。しかし、バスの運行が果たして利用者の負担軽減に繋がると言えるだろうか?

バスを利用する場合、バス停での待ち時間は利用者にとって大きなストレスとなる。この待ち時間を減らすためには、バスの運行頻度を上げれば良いのだが、連絡バスを多頻度で運行するには採算面でも限界がある。また、お年寄りや大きな荷物を持った利用者にとっては、バスへの乗り降り自体が負担である。バリアフリーの観点でも問題があると言わざるを得ないのだ。

ちなみに、現在計画されているサブターミナルと既存ターミナル・神戸空港駅との直線距離は約300mである。既存のターミナルビルと神戸空港駅を結ぶ10m程度の連絡通路と比較すれば、300mという距離が長いというのは確かである。しかし、ここが空港であるという前提で考えれば、特段遠い訳ではなく、バスを運行するほどの距離でもない。ムービングウォークを備えた歩行者デッキ等を整備した方が、遥かに利便性が高いはずである。

以下、成田空港・関西空港におけるターミナル間の距離・バスの所要時間の一覧である。神戸空港におけるターミナル間の距離は、両空港の半分〜1/6以下であり、バスを運行するほどの距離ではないということは直感的にもお分かり頂けるだろう。

空港ターミナル間の距離連絡バスの所要時間
神戸空港直線距離 約300m(サブターミナル⇔既存ターミナル)約2-5分(想定)
関西空港約2km(エアロプラザ⇔第2ターミナル)約7-9分
成田空港約700m(第3ターミナル⇔第2ターミナル)
約2km(第3ターミナル⇔第1ターミナル)
約4-12分
約12-28分

空港島外へのバス運行に注力を

昨今、バス運転手の不足が全国的な問題となっており、多くのバス会社は運転手の確保に苦戦している。さらに、2025年の大阪関西万博では、各地を結ぶシャトルバスの運行が多数予定されており、バスの運転手不足に拍車が掛かることは想像に難くない。このような中、空港島内の交通をバスに依存するのは大きなリスクを伴う。

先程も触れたように、サブターミナルはバスハンドリングを前提としていることから、ただでさえランプバスの運転手を相当数確保する必要がある。これに加えて、ターミナル間を結ぶ連絡バスを運行しようとするのであれば、更にバスの運転手が必要であり、その確保には相当の苦労を伴うことになる。万が一、運転手を確保できない事態ともなれば、サブターミナル自体が機能しない可能性すら考えられるのだ。

サブターミナル計画にバスの運行が大きく盛り込まれている一方、ポートライナーの輸送力を補完するシャトルバスの増便は利用の伸び悩みを受けて遅々として進んでいない。この背景には、ポートライナーに比べてシャトルバスの運行本数が少なすぎるという現状がある。このような現状を打開するためにも、バスの運行に係るリソースは三宮へのシャトルバスや各地を結ぶリムジンバスに振り向けるべきで、島内交通にリソースを割くのは得策とは言えないだろう。

そもそもサブターミナルの存在意義は?

サブターミナルビルの外観イメージ。今後修正が加わる可能性もある。(出典:神戸市資料)

神戸空港の現在のターミナルビルは「国内線1日30往復」の運用を前提に整備されており、2025年から運用予定の「国際チャーター便」と「国内線の増枠分(1日20往復)」を施設の拡張無しに受け入れることは不可能である。そのため、これらの便を受け入れるためにサブターミナルビルが計画された訳であるが、ターミナルビルを新設する必要があったかについては疑問が残る。

過去の記事でも解説しているが、サブターミナルビルにはボーディングブリッジは設置されず、言わば巨大な「バスラウンジ」となる予定である。バスハンドリングを前提とするのであれば、既存ターミナルに接続する形でバスラウンジを新設すれば済む話であり、利便性を犠牲にしてまで小規模なターミナルを新設する必要性は低いと言わざるを得ない。

ただ、サブターミナルの整備に全く意義が無い訳では無い。サブターミナルに続いて、メインターミナルの整備が控えているという事情も考慮する必要があるためだ。

2030年前後の国際定期便の受け入れにあたっては、現在のターミナルビルの位置にメインターミナルが新たに整備される事になっている。そのため、既存ターミナルを増築する形での施設拡張は、今後のメインターミナルの整備計画を阻害する可能性があり、これを回避するという点では止むを得ない一面もあったと言えるのだ。

いずれにせよ、サブターミナルビル計画は既に整備事業者との契約を終えており、今から計画を撤回・大幅に変更することは現実的ではない。今後、ターミナル間の接続については、利用者の視点に立った見直しがなされることを期待したい。

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