【市長選特集】関西エアとの連携は十分か?神戸空港の舵取り②

運営スキームが異なる第1ターミナル(左側)と第2ターミナル(右側)
目次

関西エアへの忖度?協力?

関西エアポート神戸の設立で生まれたロゴ

神戸空港の国際化に際しては、航空会社20社程から就航オファーがあったとされている。しかし、4月の国際化時点で実際に受け入れたのは、わずか4社に留まった。

神戸市は4社に絞ったことについて「初めての国際線のオペレーションに万全を期すため、関西エアポート神戸とすり合わせた結果」と説明していた。だが、20社も就航オファーがあったにも関わらず、4社しか受け入れられなかったというのは何ともお粗末な話である。

現実問題として、チェックインカウンター・搭乗待合室・出入国審査場などハード面のキャパシティが計画段階から十分に確保されておらず、また税関・検疫・出入国管理などの各機関やグランドハンドリングに関連する人員確保にも限界があったのは確かである。しかし、その後の神戸市会の委員会答弁で、現状は受け入れ可能な容量の半分程度でしか運用されていないということが明らかとなっている。

現在も数社程度に受け入れを制限する状況は続いており、その背景には敢えて便数を増やさない「別の理由」「忖度」があるのではないかと勘ぐらざるを得ない状況なのだ。

国内線と国際線で異なる運営

神戸空港は2018年より民営化され、関西エアポート神戸がその運営を担っており、国内線が飛べば飛ぶだけ同社の収益が上がる仕組みとなっている。しかし、国際線に関しては、既存の民営化の枠組みからは外れており、飛べば飛ぶだけ神戸市の利益となる構造となっているのだ。

これは、第2ターミナルを神戸市が新たに建設し、運営は関西エアポート神戸に委託するという指定管理者制度を採ったためである。神戸市は一定の委託料を関西エアポート神戸に支払い、同社は第2ターミナルを運営。同ターミナルで上がった収益は神戸市の利益となるのだ。

そのため、関西エアポート神戸にとって国際線は極論「飛んでも飛ばなくても良い」状況となっている。ある意味で国際線を盛り上げようとする「熱意」に関して、神戸市と同社間で温度差が出来ている状況と言っても過言ではないのだ。(ちなみに、国際線の着陸料に関しては関西エアポート神戸と神戸市で折半されており、正確には国際線の便数が増えても同社の利益が全く増えないという訳では無い。)

「おんぶに抱っこ」のハード整備

第2ターミナル開業を機に、何故か第1ターミナル側に整備された第3駐車場

関西3空港懇談会で神戸空港の国際化が決まった時点で、本来は関西エアポート神戸が主体となって国際線用ターミナルの整備を行うべきであった。(空港のターミナル施設の新設・増築等に関しては民営化の枠組み内にある。)だが、当時は関西空港で大規模リニューアル工事が進む真っ只中であり、限られた時間で神戸空港のハード整備や民営化の枠組みを変更することは困難な状況であった。そのため、神戸市が手を差し伸べる(神戸市が建設費を支出する)形で現在の運営方法となってしまったのだ。

しかし、神戸空港におけるハード整備に着目すると、神戸市が手を差し伸べる状況は以前からも散見されている。一番身近な例は「駐車場」である。

実は、繁忙期に開設される臨時駐車場や第1駐車場の一部は、民営化の指定区域の外にあり、神戸市が関西エアポートに対して土地を特別に貸与する形となっている。本来は既存の駐車場のキャパシティ不足に対応し、関西エアポート神戸が立体駐車場を整備するなど対策を講じるべきであるが、これまでそのような対応は取られていないのだ。国際化を機に新たに整備された第3駐車場に関しても、第2ターミナルの隣接地ではなくわざわざ第1ターミナルの隣接地に神戸市が整備している。

第2ターミナルだけでなく、駐車場などの費用の掛かるハード整備に関しては、「おんぶに抱っこ」の状況が長年続いているのだ。

問われる関西エアとの「連携」

メインターミナルや歩行者デッキの整備検討が続いている(出典:神戸市)

神戸市にとって、関西エアポート神戸は今後も何十年にわたって神戸空港の運営を任せる重要なパートナーであり、両者の信頼関係が崩れることは誰も望んでいない。だが、傍から見ると「忖度ありき」とも取れる現在の状況は、今後何十年の付き合いとなるパートナー双方にとって好ましい状況ではない。神戸空港を盛り上げるために「腹を割って」話が出来る関係性を築いていくことが今後の市政に求められている。

今後、2030年前後の国際定期便の受け入れに向け、神戸空港ではメインターミナルの整備が予定されている。発着便数も大幅に増え、空港全体の収益構造が大きく変化することから、運営権対価を含めた民営化の枠組みにも変更が加えられる見込みである。

メインターミナル整備に係る事業スキームや今後の民営化の枠組み変更に関して、現時点では何も明らかとなっていない。だが、メインターミナルに関しては民営化の枠組みに組み込まれる可能性が高く、神戸市は関西エアポート神戸に対して相応の「投資」と適切な「運営権対価」を求めていかなければならない。

今後明らかとなるメインターミナルの整備に係る事業スキームや民営化の枠組み変更など、市民は関心を持って情報に接するべきだろう。神戸空港が今後更なる飛躍を遂げるためには、関西エアポートによる必要な投資が不可欠であり、市民・利用者による「目」も必要なのである。

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