
神戸ー関空ベイシャトルで実施されてきた駐車場無料サービスが2月28日を以て終了した。3月1日からは駐車場は有料化されたものの、1日あたりの駐車料金は500円に設定するなど、駐車料金のお手軽さを武器に引き続き集客を図る方針だ。
駐車場の有料化により、一定の顧客離れも予想されるが、駐車料金収益の上積みにより事業の収支改善に繋がるかも注目される。
新しい駐車料金体系
新しい料金体系では、7日までの駐車料金は1日あたりの500円に抑えるものの、8日以降の駐車料金に関しては1日あたり1,500円に設定されており、短期利用者を優遇する料金設定となっている。
ベイシャトルを利用して関西空港へ向かう利用者のうち、国際線の利用者は比較的多いと考えられる。そのため、長期間駐車場に車を停める利用者は比較的多く、今回の料金設定は駐車場の混雑緩和も意図しているとみられる。2月までの駐車料金と3月以降の新しい駐車料金は以下の通り。
通常料金 | 1時間150円 1日最大1,500円 |
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割引料金 (ベイシャトル利用者) | 無料 |
7日目まで | 8日目以降 | |
通常料金 | 1時間150円 1日最大1,500円 | |
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割引料金 (ベイシャトル利用者) | 1時間150円 1日最大500円 | 1時間150円 1日最大1,500円 |
大盤振る舞いだった無料サービス
神戸ー関空ベイシャトルの駐車場無料サービスは就航当初から実施され、長年好評を博していた。特に、兵庫県以西の自家用車ユーザーにとってはこの恩恵は非常に大きい。関西空港までの高速料金・連絡橋通行料金・関西空港の駐車料金等を勘案すると、神戸ー関空ベイシャトルの優位性が際立っていたのだ。
この駐車場無料サービスの存在を背景とし、同船の利用者は徐々に増加。2018年度には年間乗船客数が約38万人に達するなど、長年赤字であった事業収支は徐々に改善しつつあった。残念ながらコロナ禍によって乗船客数は大きく落ち込み、まだコロナ禍以前の実績までは回復していないとみられるが、関西空港のインバウンド客などの取り込みによって乗船客数は回復傾向にある。
このような中、駐車場の有料化に踏み切ったのは、事業収支の抜本的な改善を図るために他ならない。ベイシャトル(海上アクセス事業)単体では、年間数億円程度の赤字が続いており、神戸市の外郭団体(株式会社こうべ未来都市機構)が抱える他の事業収益で穴埋めする形が続いているのだ。事業収支が赤字であるにも関わらず、本来は収益を生み出すはずの駐車場を無料としていたこれまでが異例の大盤振る舞いであり、遅かれ早かれ駐車場の有料化には踏み切らざるを得なかったと言えるだろう。(最初にも触れたように、駐車料金の有料化によって一定の利用者離れは予想される。しかしその反面、駐車料金収入の上積みによる収支改善や、駐車場の混雑緩和には一定の効果があると言える。)
また、近年は人件費や燃油の高騰も続いており、各種交通機関でも運賃の値上げが相次いでいる。今回、ベイシャトルの乗船運賃は据え置かれたが、事業収支の改善には乗船運賃の見直しも今後必要となる可能性はある。
歩行者デッキも早期具体化を

近年、ベイシャトルの利用者が増えつつある背景には、関西空港から入国するインバウンド旅行客を取り込みに奏功しているという事情がある。実は、ベイシャトルではインバウンド旅行客向けに特別割引を用意しており、片道500円という破格の運賃となっているのだ。(通常は大人片道1,800円)そのため、関西空港から電車やリムジンバスを利用せずベイシャトルで神戸空港に渡り、各地に移動するというインバウンド旅行客が近年大幅に増加。ベイシャトルの乗船客の増加に大きく寄与しているのだ。
その一方、日本人旅行者向けには破格の割引は無く、ベイシャトルはリムジンバスの運賃よりも若干安い(リムジンバス三宮ー関空線 2,200円、ベイシャトル・ポートライナーセット券 1,880円)というメリットしかない。また、関西空港・神戸空港ともに空港駅からベイシャトル乗り場までは連絡バスの利用を余儀なくされるため(神戸空港側では徒歩でのアクセスも可能)、乗り換えの不便さから自家用車ユーザー以外にはベイシャトルはあまり浸透していないのが現状である。
今回の駐車場有料化により、これまで自家用車を利用していた利用者が自家用車での利用を控え、ポートライナーを利用してベイシャトルに乗船するというケースは少ないと考えられる。だが、今回の駐車場有料化を機に、自家用車以外の利用者を増やすべく、神戸空港駅とベイシャトルのターミナルを結ぶ連絡デッキの整備についても早期に具体化を進めなければならない。


神戸空港国際化で利用動向も変化か
今年4月から神戸空港は国際化を迎え、これまで関西空港を利用していた国際線の利用者が神戸空港に一定数シフトすると考えられる。そのため、関西空港へと利用者を送り出しているベイシャトルの存在価値は相対的に低下する可能性はある。
しかし、逆にベイシャトルの存在価値が高まるケースも考えられる。それは、出発を神戸空港・到着を関西空港のように出発空港と到着空港を別々に組むケースである。神戸空港発着の国際線は、関西空港への影響を鑑みて「2030年前後に国際定期便1日40便」という発着枠が設けられることが決まっており、現状の規制では各路線ともに便数を充実させることが出来ない。そのため、神戸空港発着で利用したい時間帯に便が無い場合、往路もしくは復路を関西空港発着として旅程を組むケースが十分考えられるのだ。
実際、4月からの国際線ダイヤをみても、アウトバウンド(日本から出国する利用者)が往復で利用しやすいのは、朝と夕方に1日2便の運航が予定されている大韓航空の仁川線のみである。それ以外の路線では、例えば台北線であれば週5便と便数が限られることに加え、台北の出発時刻が現地時刻6時25分と極めて早い時間帯に設定されており、日本人の利用者にとっては非常に使いづらいダイヤとなっている。このような神戸空港側の国際線ダイヤの使い勝手の悪さを補完する意味では、ベイシャトルの存在意義は今後益々高まることが予想されるのだ。
神戸空港の国際化により、神戸空港・関西空港を結ぶ唯一の交通機関として重要さを増すベイシャトル。神戸空港の国際化によって生じる利用動向の変化・利用者数の推移にも今後注目したい。

